『プルーストの記憶、セザンヌの眼―脳科学を先取りした芸術家たち』書評・目次・感想・評価

  • 出版社: 白揚社 (2010/6/1)
  • 言語: 日本語
  • ISBN-10: 4826901585
  • ISBN-13: 978-4826901581
  • 発売日: 2010/6/1

【『プルーストの記憶、セザンヌの眼―脳科学を先取りした芸術家たち』目次と読書メモ】


<<用例>>
太字 もくじの写し
要約 内容の要約(ただし恣意的です)
引用 気になった部分をメモとして引用しています(最後に引用ページを記載)
名言 気になった名言をピックアップしてメモ
小話 後で人に話したくなるような内容をメモ
^_^  一読者としての意見・感想(笑顔ですが読者の感情ではありません)

第一章 ウォルト・ホイットマンー感情の本質
 
引用
科学理論を自然の鏡(ジェームズに言わせれば「真理のコピー」)だと考えるのはやめるべきだ。そうではなく科学の事実を、「私たちが経験との間に満足の行く関係を打ち立てるのを助けてくれる」道具と考えるべきだ。ページ35
 
^_^ 科学を権威から引き摺り下ろす激しい言葉だと思うし、一方における真理でもある。権威に過ぎれば引き摺り下ろすべきだが、逆に今はそろばん勘定に偏りがちの部分があると思う。
 
名言
理性は感情の奴隷であり、奴隷でなければならない(デイビット・ ヒューム)ページ37
 
^_^ これもまた力強い言葉だ。感情があり、理性を操るということか。
 
引用
人間の感情は身体と脳の絶え間ない相互作用から生まれる ページ39
 
^_^ ネットワーク思考でもそう学んだなぁ。
 
まとめ
魂とそれに従属する体という考え方は誤りで、体のありようを表すことが魂を表すことであり、体と魂は分け難く繋がっている。
体は迫りくる危険や分の悪いギャンブルなどを理性より早く気づいて反応している。魂から身体、身体から魂へと絶え間ないフィードバックが続くことで自分自身という意識が魂が存在するのだ。
 
第2章 ジョージ・エリオットー自由の生物学
 
われわれは「愛さねばならない」人を選ぶのではなく、愛さずにはいられない人を選ぶのだ ページ57
 
「避けられない運命に逆らって自分の羽を傷つけたりしないこと」も重要であるが、「自分の魂の全力を、少しでも見込みのある、より良い事の達成のために導入する事は、いつでも可能だ」。ページ64
 
実験室の霊長類はほとんど神経新生を抑制するような環境で生活している。単調なおりは単調なのを作り出す。霊長類は恵まれておりの中に映されない限り、それらの生体脳は新しいニューロンをほとんど新生しない。典型的な実験室の環境は動物を衰弱させ、間違ったデータを生むと言う認識は、神経新生の分野での偶然の発見の1つだった。ページ70
 
^_^ これは人間にも言えるのだろう。余りにルーティンに陥ると人間の脳も新しいニューロンを生まないのだろう。そりゃ、そうか生体だって不要なことはやらないよな。
 
うつ病は、突き詰めれば、新しいニューロンの量が減ることが原因で起こるのであり、セロトニンの欠乏によって起こるのではないことを示唆している。ページ71
 
^_^ 環境要因による脳へのダメージということなのだろう。もちろん、その耐性に個人差があるとしても。
 
生きていると言う事は、常に始まっていると言うことなのだ。ページ72
 
^_^ どこかで使いたい名言ではある。
 
ショウジョウバエの体には、感覚器官の働きをする長い毛が生えている。この毛の位置と密度はハエの体側の左右で違っているが、意図的にそうなっているのではない。ハエの両側は同じ遺伝子で記号化され、同じ環境で発達したのである。ハエの変異は細胞内の無原則な原子の押し合いの結果であり、生物学者が「発達性ノイズ」と呼んでいるものである(左手と右手の指紋が違うのも同じ理由による)。ページ80
 
^_^ならば一卵性双生児の指紋も違うはずと思って調べたら、やはり違うらしい。やはりDNAの影響は大きくはあるが限定的であるということか。驚き!
 
^_^ 我々の中にはカオスに支えられた自由が存在している。
 
第三章 オーギュスト・エスコフィエー味の本質
 
名言
人々の健康にとって最大の脅威は、近代になって、食事が「楽しみの場から不必要な雑用」へと変わってしまったことである。ページ86
 
第四章 マルセル・プルーストー記憶の方法
 
記憶は、最後にそれを思い出したときのものだけが真実なのである。何かを思い出すたびに、その分だけ記憶は正確さを欠いていく。ページ129
 
^_^ 記憶は取り出され、弄り回されて、再び棚に戻される。そして、その度にこぼしたコーヒーや手垢で汚れたり、都合の良い改変が行われる。ほんとに記憶ってあてにならない。
 
嘘をつかずに過去を述べる方法は無いのだ。人間の記憶は虚構のようなものではない。人間の記憶は虚構そのものである。ページ132
 
^_^ 容疑者と被害者がいて、その双方に犯罪が記憶されていたとしたら、実際はその犯罪が行われていなかったとしても、罪は成立するのではないか?そんなことを考えた。
 
第5章 ポール・セザンヌー視覚のプロセス
 
紹介書籍「プリンキビア・マテマティカ(数学原理)」
 
紹介書籍「幻想のテーブル」
 
セザンヌの絵画
参考絵画
モネ 日の出
^_^ 写真の登場が絵画を写実主義から解放し、印象派を生んだと考えれば、写真の手柄はとても大きいのではないだろうか?
 
シャトー・ノワールの洞窟の岩
草上の昼食
セザンヌ自画像
 
名言
もしそれが芸術なら、それは全員のためのものではない。もしそれが全員のためのものなら、それは芸術ではない(シェーンベルク)ページ190
 
^_^ そういうものだとわかっていても凡人はついつい大衆に迎合したくなる。
 
紹介書籍「音楽における情動と意味」
 
第7章 ガートルード・スタインー言語の構造
 
^_^ 言語から意味を剥ぎ取ることはできなかったということか?あってる?
 
第8章 ヴァージニア・ウルフー立ち現れる自己
 
引用
砲弾ショックは真性の精神病であることが認知されつつあった。エレイン・ショーウォーターによれば、医者たちはこの新しい厄介な病気を、ウルフのような女性たちに対して20年以上使ってきたのと同じ、効果の乏しい方法で治療した。そうした治療法の中には、臭化カリウムを投薬する、ベッドに寝たきりにさせる、無理矢理ミルクを飲ませる、などがあり、患者の歯を抜くと言う物もあった。抜歯は体温を下げると信じられていたのである。熱療法を受けた不運な患者たちもいた。この治療法は精神病者マラリアや肺結核や腸チフスの金を注射した。この残虐な治療に対して、1927年にはノーベル賞が授与された。ページ256
 
^_^ この事実はノーベル賞といえども盲目的に信じてはいけないということを示唆している。ましてやノーベル賞受賞者になぜか人格的な期待をしがちな日本人が多いことも実は滑稽なことかも知れない。
 
左脳・右脳だけでなく、人はさまざまな要素が絡み合って意識を形成している。私は常に私たちなのだ。
 
おわりに
謝辞
訳者あとがき
原註
参考文献

【著者・ジョナ レーラーさんの気になる著書リスト】

 

一流のプロは「感情脳」で決断する

一流のプロは「感情脳」で決断する

 

 

『心の社会』書評・目次・感想・評価

【『心の社会』目次と読書メモ】


<<用例>>
太字 もくじの写し
要約 内容の要約(ただし恣意的です)
引用 気になった部分をメモとして引用しています(最後に引用ページを記載)
名言 気になった名言をピックアップしてメモ
小話 後で人に話したくなるような内容をメモ
^_^  一読者としての意見・感想(笑顔ですが読者の感情ではありません)

第1章 心の社会
1・1 心のエージェント
1・2 心と脳
1・3 心の社会
1・4 積み木の世界
1・5 エージェントとエージェンシー
 
要約
心はいくつものエージェントの階層で物事を行なっている
 
第2章 全体と部分
2・1 要素と接続
2・2 新説論者と還元論
2・3 部分と全体
2・4 穴と部分
2・5 やさしいことはむずかしい
2・6 人間は機械か?
 
要約
物をバラバラに要素還元しても全体を理解することにはならない。ネズミを捕まえておく箱をバラバラにしてもネズミを捕まえておくは各パーツからは見つからない。心も同様で細かく分けて言っても見つからない。全体として機能して始めて心が生まれる。
 
第3章 争いと妥協
3・1 争い
3・2 妥協せず
3・3 階層
3・4 非階層
3・5 破壊すること
3・6 痛みと喜びが単純にする
 
要約
各エージェントが争うこともある。すると、その上位のエージェントが力を失い、他のエージェントに優先順位を奪われることもある。各エージェントが共同作業することもある。
 
第4章 自己
4・1 自己
4・2 自己は1つかたくさんあるか
4・3 たましい
4・4 保守的な自己
4・5 利用
4・6 自分をコントロールする
4・7 長期的な計画
4・8 イデア
 
要約
人が何かを決める時には「これのかわりになにをあきらめなければならないのだろうか?」と問わなければならない。自己は絶えず争い、その結果で物事を選択する。
 
第5章 個性
5・1 因果はめぐる
5・2 答えられない質問
5・3 リモコン自己
5・5 ファッションとスタイル
5・6 性格的特徴
 
要約
過去の自分も今の自分も未来の自分も様々な面で違うのに人は同一の存在として扱う。文字を読めるようになってしまえば文字が読めなかった時のように文字を見ることはできない。人はどちらにしたらいいか迷ったらファッションのように好きだから好き、嫌いだから嫌いで良い。どうせ大した問題ではない。
 
^_^ 迷った時はどちらでもいい。なぜなら同じようなものだから迷っているのだから。迷う時間が無駄。と、いつも思うようにしている。
 
第6章 洞察と内省
6・1 意識
6・2 信号と符合
6・3 思考実験
6・4 B-脳
6・5 思考の凍結
6・6 現在ただいまの時間
6・7 因果的いま
6・8 思考なき思考
6・9 ぼんやりした頭
6・10 心から作られた世界
6・11 洞を観察する
6・12 心の中のコミニュケーション
6・13 自分についての知識は危険だ
6・14 混乱
 
要約 
意識が働き始めるのは私自身の中で問題が生じたとき。そうでない時はほぼ自動運転。
 
第7章 問題と目標
7・1 知能
7・2 非常識
7・3 パズル原理
7・4 問題解決
7・5 学習と記憶
7・6 強化と報酬
7・7 責任の局在
7・8 差分エンジン
7・9 意図
7・10 天才
 
用語
パズル原理
どんな問題でも、解けた時に解けたことがわかるような方法さえあれば、解き方が前もってわからなくても、試行錯誤によってコンピューターに解かせるようにプログラムすることができる。ページ95
 
^_^ コンピューターは何回でも試行錯誤ができるからと、いうことか。
 
用語
進歩の原理
進歩があった時進歩したことを見つける何らかの方法を持っていれば、しらみつぶし的な探索のプロセスを大幅に削ることができる。そして、暗闇の中でも周辺を探って一歩一歩勾配の1番急な方向を見つけながら知らない山に登ることができるのとちょうど同じように、解決に向かう道筋をたどることができる。ページ97
 
目標と副目標
難しい問題の解決法を見つけるための1番有効のやり方は、その問題をいくつかのもっと簡単な部分に分けて、各部分が別々に解決できるような方法を見つけることである。ページ97
 
知識を使うこと
問題を解くのに1番有効な方法は、その解き方を事前に知っていることである。この場合には探索を全くしなくて済む。ページ97
 
^_^ 当たり前のことだが問題に当たる時にはこれらのことを頭の片隅に置いておきたい。
 
子供がやるような積み木すらコンピュータにやらせるのは大変だが、大人が苦労する数学の問題をコンピュータにやらせるのは簡単。
 
天才とはよりよい学習法の学習法を求めた結果。
 
報酬は局所的成功に与えるパターンと、最終的な目標が成った時に与えるパターンがあり、局所的に与えたほうが学習が早い。
 
第8章 記憶の理論
8・1 K-ライン:記憶の理論
8・2 臆せず記そう
8・3 心の状態と性格的特徴
8・4 心の部分的状態
8・5 レベル帯
8・6 レベル
8・7 周縁
8・8 記憶たちの社会
8・9 知識の木
8・10 レベルと分類
8・11 社会たちの層
 
記憶はいくつかの繋がったまとまりを刺激して、その体験をした時の状態に近い状態を再現するが、全てではなく、ある程度選ばれたものである。それによって記憶と現実は区別され、記憶を利用して人は物事に当たる。
 
第9章 要約すること
9・1 歩することを好むこと
9・2 勝手な手直し
9・3 失敗からの学習
9・4 苦痛の喜び
 
喜びも苦痛も複雑な合議の結果であり100%の喜びも100%の苦痛もない。様々なエージェントが競争し、最終的に意識に好きとか嫌いとかが浮かび上がっているに過ぎない
 
第10章 パパートの原理
10・1 ピアジェの実験
10・2 量の推論
10・3 優先順位
10・4 パパートの原理
10・5 <<もっと>>の社会
10・6 ピアジェの実験について
10・7 概念の概念
10・8 教育と発達
10・9 階層の学習
 
パパートの原理
心の成長における最も重要なステップとして、単に新しい技能を身に付けるステップだけでなく、既に知っていることを使うための新しい管理方法を身に付けるステップがある。ページ147
 
第11章 空間の形
11・1 赤を見る
11・2 空間の形
11・3 近さたち
11・4 生得的地理
11・5 類似性の感知
11・6 集中化された自己
11・7 仕組まれた学習
11・8 二つに分かれた脳
11・9 鉄アレイの理論
 
右脳左脳で単純に分けるやり方には注意が必要。
 
第12章 意味の学習
12・1 積み木のアーチの話
12・2 意味の学習
12・3 ユニフレーム
12・4 構造と機能
12・5 構造の機能
12・6 蓄積
12・7 蓄積の方法
12・8 不統一性の問題
12・9 例外原理
12・10 塔の作り方
12・11 原因のはたらき
12・12 意味と定義
12・13 橋渡し的定義
 
引用
自分で発見した自然現象に対して、勝手な作り話をしてしまわないように気をつけなければならない。実際の生活に完全な法則があると主張すると、何の法則も見つけられないと言うリスクを負うことになる。そんなことをするのに意味があるのは、どんな例外も説明できるようにすべき、科学だけなのである。ページ190
 
^_^ 世の中、例外と矛盾だらけ。それを理解できるようになることが、大人になるってことなのかもしれない。
 
引用
椅子を定義するには、物理構造と心理的機能の両方が必要なのである。ページ195
 
引用
目的に基づく定義は、ゆる過ぎるのが普通である。意図しないものをたくさん含んでしまう。
構造的な定義は、きつすぎるのが普通である。含ませたいものをたくさん排除してしまう。ページ196
 
2つの違った世界の橋渡しをするような考え方が、往々にして1番良い考え方になる。ページ196
 
^_^ この章が言いたかったことがだんだん見えてきた
 
第13章 見ることと信じること
13・1 定型化のしなおし
13・2 境界
13・3 見ることと信じること
13・4 子供の描画フレーム
13・5 スクリプトの学習
13・6 フロンティア効果
13・7 コピーすること
 
引用
心によって境界を聞かないと、決して「モノ」を見ることができないのである。あるものをもう一度全く同じ物として見る事は、ほとんどないからである。
 
熟達者とは考える必要のない人のことである。熟達者はただ知っているのだ。(フランク・ロイド・ライト)ページ205
 
^_^ 運転をするときに運転のことを考えなくても良くなるのはある程度運転経験のある人だけ、そういうことかな。
 
第14章 定型化のしなおし
14・1 定型化のしなおしを利用する
14・2 胴体-支柱の概念
14・3 手段と目的
14・4 正方形を見る
14・6 投資原理
14・7 部分と穴
14・8 否定的思考の力
14・9 インタラクション正方形
 
引用
何かの働きを理解するには、その働きがどうすれば失敗するか知っていると良い。ページ214
 
ニッチモサッチもいかなくなった時は、より悪い状況考えてみると、そこまで悪くないのだから抜け道が見出せるということがある。頭で考えたより悪い状況ではないのだからその部分に抜け道があるのかも知れない。
 
第15章 意識と記憶
15・1 心の瞬間的な状態
15・2 自分を調べる
15・3 記憶
15・4 記憶の記憶
15・5 内在性の幻想
15・6 色々な種類の記憶
15・7 記憶の再構成
15・8 記憶の解剖学
15・9 割り込みと回復
15・10 道を外れる
15・11 再帰性の原理
 
記憶とは、エージェント達の1部に対して、過去に何度か働いたのと同じような方法で働くようにさせるプロセスのことである。ページ235
 
初めて出会ったような問題に対しては、一度に1つか2つだけ変えていくことから始めるのが1番良い。その後、熟達していく過程の中で、記憶の中身をいくつか同時に言うような方向に変化させられるような方を、発見していくのである。ページ240
 
第16章 感情
16・1 感情
16・2 心の成長
16・3 心のプロト-スペシャリスト
16・4 交差的排除
16・5 なだれ現象
16・6 動機
16・7 利用
16・8 刺激と似像
16・9 赤ちゃんの感情
16・10 おとなの感情
 
引用
空想は、どんな複雑な問題解決プロセスに対しても不可欠なものである。問題解決のプロセスで、実際にはない情景を扱わなければならないのは、いつものことである。なぜなら、心が物事のあり方を変える方法について本当に考え始められるのは、物事の見え方を変えられる時だけだからである。
いずれにしても私たちの文化においては、思考と感情はほとんど無関係の切り離された世界にあるものと、間違って教えられてきた。実際には、思考と感情は常に、お互い絡み合っている。ページ250
 
第17章 発達
17・1 自己教育の系列
17・2 愛情による学習
17・3 愛着による単純化
17・4 機能的自律性
17・5 発達段階
17・6 成長の前提条件
17・7 遺伝のタイムテーブル
17・8 愛着のイメージ
17・9 記憶のいろいろな長さ
17・10 知能のトラウマ
17・11 知能のイデア
 
引用 
子供が一環した価値体系を構成するには、既に存在しているモデルに基づくよりほかに、方法がないからである。ページ275
 
エディプスコンプレックスは学ぶべきモデルを一つにして混乱を避けるために片方の親を避けている?
 
世間は知能の不足に関しては寛容だが感情のコントロールに関する不足には厳しい。
 
第18章 推論
18・1 機械は論理的でなければならないか?
18・2 推論の鎖
18・3 鎖のようにつなぐ
18・4 論理の鎖
18・5 強い議論
18・6 数から量へ
18・7 数とは何か
18・8 数学が難しくした
18・9 頑丈さと回復
 
大切な脳が他の部位と違って自己修復
しないのはその部位が独立に元に戻っても大切なのは他の部位とのネットワークであるからで、だから脳は破損すると別のルートを開拓し、その機能を補おうとする。
 
第19章 言葉と考え
19・1 意図のルーツ
19・2 言葉のエージェンシー
19・3 単語と考え
19・4 対象と性質
19・5 ポリニーム
19・6 認識エージェント
19・7 証拠の重みづけ
19・8 一般化
19・9 思考の認識
19・10 輪を閉じる
 
人は完全な証拠がなくても一定の条件が揃えば、それがリンゴだとか椅子だとか認識する。
 
第20章 文脈とあいまいさ
20・1 あいまいさ
20・2 あいまいさについての交渉
20・3 視覚的あいまいさ
20・4 閉じ込めとお払い箱
20・5 ミクロニーム
20・6 ニームのらせん階段
20・7 結合
20・8 結合ライン
20・9 分散した記憶
 
第21章 トランスフレーム
21・1 心の代名詞
21・2 プロノーム
21・3 トランスフレーム
21・4 エージェント間のコミニュケーション
21・5 自動性
21・6 トランスフレームのプロノーム
21・7 プロノームによる一般化
21・8 注意
 
第22章 表現
22・1 プロノームとポリニーム
22・2 イソノーム
22・3 特殊性をなくす
22・4 学習と教育
22・5 推論
22・6 表現
22・7 原因と節
22・8 割り込み
22・9 代名詞と参照
22・10 言葉による表現
22・11 創造的表現
 
第23章 比較
23・1 違いの世界
23・2 違いとコピー
23・3 時間の瞬き
23・4 もっとの意味
23・5 外人のアクセント
 
思春期以降に新しい言語の発音を習得しにくい理由は、教わる側から教える側に社会的役割が切り替わるため、子供の発音に影響されないように遺伝子的に仕組まれている可能性がある。
 
第24章 フレーム
24・1 思考の速さ
24・2 心のフレーム
24・3 トランスフレームの働き
24・4 暗黙の仮定
24・5 言葉によらない推論
24・6 方向ニーム
24・7 絵フレーム
24・8 絵フレームの働き
24・9 認識エージェントと記憶エージェント
 
読者はそれぞれに自分自身を読んでいるので、……作家の著者は一種の光学器械に過ぎない、作家はそれを読者に提供し、その書物がなかったらおそらく自分自身の中から見えてこなかったであろうものを、読者にはっきりと見分けさせるのである。ページ400
 
第25章 フレームアレイ
25・1 一度に一つのフレーム?
25・2 フレームアレイ
25・3 静止した世界
25・4 連続性の感覚
25・5 期待
25・6 フレームの考え方
 
第26章 言語フレーム
26・1 言葉の理解
26・2 物語の理解
26・3 文フレーム
26・4 パーティフレーム
26・5 物語フレーム
26・6 文と無意味
26・7 名詞フレーム
26・8 動詞フレーム
26・9 言語と視覚
26・10 言語の学習
26・11 文法
26・12 一貫性のある話
 
第27章 検閲エージェントと冗談
27・1 デモン
27・2 抑制エージェント
27・3 検閲エージェント
27・4 論理における例外
27・5 冗談
27・6 ユーモアと検閲
27・7 笑い
27・8 優れたユーモア
 
ユーモアはタブーを破ることにある。
 
第28章 心と世界
28・1 心のエネルギーの作り話
28・2 量と市場
28・3 量と質
28・4 物質の上のほうにある心
28・5 心と世界
28・6 心と機械
28・7 個々のアイデンティティ
28・8 重なり合う心
 
第29章 思考の領域
29・1  思考の領域
29・2 一度にいくつもの思考
29・3 パラノーム
29・4 領域を越えた対応
29・5 統一性の問題
29・6 自閉症の子供たち
29・7 類似性と類推
29・8 比喩
 
第30章 心の中のモデル
30・1 知っている事
30・2 知っていることと信じている事
30・3 心の中のモデル
30・4 世界のモデル
30・5 自分自身を知る
30・6 意思の自由
30・7 第3の道の作り話
30・8 知能と豊かな資源
 
付録
1 遺伝と環境
2 心の領域の起源
3 身振りと経路
4 脳における結合
5 生存本能
6 進化と意図
7 絶縁とインタラクション
8 思考の進化
 
あとがきと謝辞
用語集と文献
訳者あとがき
索引
 

マービン・ミンスキーさんの気になる著書リスト】

 

ミンスキー博士の脳の探検 ―常識・感情・自己とは―

ミンスキー博士の脳の探検 ―常識・感情・自己とは―

 

 

『岩合光昭の世界ネコ歩き2 』書評・目次・感想・評価

【『岩合光昭の世界ネコ歩き2』目次と読書メモ】

 猫と人の関係にほっこりできる素敵な写真集。
 人が全く映っていない写真も多い中でも、猫の背景は人の生きる街であったり、村であったり、農場だっだり。

 僕は、猫の魅力はその野性的で美しい見た目もさることながら、人間との距離感にあると思うのです。
 岩合さんのこの写真集はそれを見事に表現していて、人の間に生きる猫と、その猫を愛する人間のやさしい気持ちが(たとえ人間が映っていない一枚でも)愛おしく収められています。

 それがネコ歩きの人気の秘密なんだなぁと、何度も繰り返して眺めてはニヤニヤしています。
 それにしても日本の島の猫がどことなく汚れているのは何故でしょうか?魚食が多いから?砂浴び場が無いから?その辺の研究を今後は学者さんにお願いしたいです。
 それでは世界中の猫とそれを愛する人々が幸せでありますように。

  

『世にも奇妙な人体実験の歴史』書評・目次・感想・評価

【『世にも奇妙な人体実験の歴史』目次と読書メモ】


<<用例>>
太字 もくじの写し
要約 内容の要約(ただし恣意的です)
引用 気になった部分をメモとして引用しています(最後に引用ページを記載)
名言 気になった名言をピックアップしてメモ
小話 後で人に話したくなるような内容をメモ
^_^  一読者としての意見・感想(笑顔ですが読者の感情ではありません)

はじめに マッド・サイエンティストの世界へようこそ
 
名言
生半可な知識が危険だと言うなら、危険でないほど大量の知識を持った人間がどこにいるのだ。(トーマス・ハクスリー)ページ10
 
第1章 淋病と梅毒の両方にかかってしまった医師ー性病
人体解剖の草分けである医師ジョン・ハンターは、性病研究にも辣腕を発揮。林業のメカニズム解明のため、患者の膿を自分の性器に付着させたところ……
 
^_^ 過去において医学は貧者を実験台にして、富者の治療に生かすという搾取構造があった。現在はないとは言えないが随分マシになったのだろう。他の本でも読んだがこのジョン・ハンター氏はマッドサイエンティストというより、偉大な科学者であり、医師であったと思う。何しろ、誰にとってもいちばん大切な自分を実験台にしている点で、貧民を実験台にするばかりの医師より、平等だし、新しい地平を切り開いた偉人だと思う。
 
第2章 実験学のつもりが中毒患者にー麻酔
毒にんじん、笑気ガス、エーテルクロロホルム、コカイン、モルヒネ……麻酔薬の開発者たちは、必ず自分で効果を試し、そして中毒者になっていった。
 
小話
コカ・コーラは鬱とヒステリーの治療薬として販売されていた。コカ・コーラがコカインのおかげで消費量伸ばした事は間違いない。ページ45
 
小話
第一次大戦中、ロンドンの高級百貨店ハロッズは、「海外の友人へのギフトボックス」を売り出した。その中には、注射器と一緒にモルヒネとヒロインの瓶が入っていた。ページ45
 
小話
イギリスで流通している紙幣のおよそ80%はコカインまたはヘロインに汚染されている。ロンドンでは、その割合は99%にまで及ぶ。ドラッグに手を染めていない善良な市民を守るため、毎年、1500万ポンド分の紙幣が廃棄処分となる。ページ47  
 
^_^ フロイトがヤク中であったことを思えば、未だにヤク中の医者の妄想をありがたがっている人が大勢いるのはどうかと思うが、一方で清原の打撃理論に聞く価値がないかと言えばあるわけで、ヤク中かどうかはともかく聞く側の冷静な判断が求められるのは間違いないだろう。
 
第3章 インチキ薬から夢の新薬まで-薬
どんな化学物質が薬になるかは、人体実験をしてみないとわからない。英国の医者フィールドは、ダイナマイトの原料をあえてなめてみた。すると……  
 
現在、インターネットの普及に伴って自己診断が再び流行し、多くの人が医師の診断を受けずに自己判断で、偽物の可能性すらある無認可の薬を購入している。インチキ薬業界は未だに大繁盛しているのである。イギリス人は45億ポンドを「大開企業」に費やしている。アメリカ人は、正規の医師の診断を受けるよりも、有効性の事象もなく何の規制も受けていない嵐月療法に頼ることの方が多い。糖尿病や顔を拭く万病に効くと信じて、大勢の人がいまだに尿を飲んでいる。この分だと、「小便預言者」にも復活のチャンスがあるかもしれない。ページ59
 
^_^ 今の医療にも問題がないわけではないがだからといってなんの規制もない怪しい治療法に大金をつぎ込む愚は後を絶たない。はっきりいってどちらがマシなのかという部分もある。とりあえず国民健康保険も効くし、通常の医療を受けるべきだろう。
 
第4章 メインディッシュは野獣の死骸ー食物
英国紳士フランク・バックグランドは動物好きだった。ただし、食べるために。氷、森ふくろう、ジャッカル、アナグマそのお味はいかに?
 
名言
窮乏と贅沢を代わる代わる味わうと言うのは、たいていの人間の性分に合っている。(フランシス・ゴルドン)ページ80
 
引用
有名な生物学者のジャック・ホールデンは生物学者として上をどう思われますかと尋ねられ、「神は法外に虫好きだったんだなと思う」と、答えた。
 
^_^ 確かに多様性や繁栄度を見ても人間より虫の愛され方は半端ない。
 
昆虫の中には70%もタンパク質が含まれているものもあり、グラムあたりのタンパク質の量は肉よりも多く、脂肪分は少ない。しかもビタミンやミネラルも豊富である。ただ栄養豊富なのは認めるが食べるとなると昆虫はどうしても見た目が悪い。これは神様の営業戦略の深刻な失敗である。ページ82
 
^_^ 笑った。でも昆虫食って病気を誘発しなかったっけ?
 
小話
ほとんどのピザやソーセージはポテトチップスにはシステインという添加物が含まれているが、このシステインの原料は人毛である。ページ84
 
穀類の多くには昆虫編が混入しており、年に1kgほどの昆虫を食べてしまっている。
 
第5章 サナダムシを飲まされた死刑囚ー寄生虫
ドイツの医師キュッヘンマイスターは、寄生虫の感染経路を解明した。その方法は、死刑囚に寄生虫を飲ませ、ひたすら解剖すると言うものだった。
 
小話
帰省中によって体重減少が帰国することが現在ではよく知られた事実だが、それは栄養分を寄生虫に取られるからではない。サイトカインなどの分泌物が脳に作用して食欲を抑えるのである。ページ91
 
第6章 伝染病患者の黒ゲロを飲んでみたらー病原菌
これらの研究でここに挑んだペッテンコーファーは、菌入りの水を飲みほした。また黄熱病の研究者たちは患者のゲロを集めて煮詰め、自ら飲んでみた。
 
^_^ 黄熱病はウイルスが病原なので、必死に研究した人々が報われなかったのは悲しい歴史だ。結局テクノロジーが追いつかなければ解明できなかったのだ。
一方で、胃潰瘍の原因がピロリ菌であることを学会が認めるまで長い年月が掛かったことは、学会の怠慢であったと言える。
医学会に限らず、古い権威がイノベーションを阻害するのだ。
今、権威に疎外されている科学的事実はなんだろうか?
 
第7章 炭疽菌をばら撒いた研究者ー未知の病気
生物兵器の研究は20世紀初頭から軍部でひそかにおこなわれていた。だが、細菌漏れによるアウトブレイクなど、事故や事件も多発している。
 
^_^ 政府は嘘をつく。以上。
 
第8章 人生は短く、放射能は長いー電磁波とX線
電磁気の発見は、怪しげな雲街を起こした。放射線もそうだった。だが犠牲者の数は電磁気とは比較にならないほど多かった。
 
^_^ キュリー一家の科学へ捧げる情熱には頭が下がるばかり。それにしても未だに電磁波治療椅子とか、ラドン温泉とか、ラジウム温泉とかがありがたがられていると思うと悲しい気持ちになる。
 
第9章 偏食は命取り-ビタミン
食物に含まれている「何か」。それが不足すると病気になってしまう「何か」。その正体を突き止めるため、孤児院の子供達が実験台として選ばれた。
 
ビタミンCを体内合成できない動物は人間やモルモットなど数種しかいない。実験動物であるモルモットがビタミンCを体内合成できないのは人類にとって幸運だった。
 
^_^ ビタミンCに葉酸などなど、とにかく多様な食べ物を食べろと医学はいっているのだろう。
 
第10章 ヒルの吸血量は戦争で流れた血よりも多いー血液
「悪い血」をヒルに吸わせるインチキ医術、羊の血を人体に輸血する無茶苦茶。血液型の判別と安全な輸血の確立まで、人類はかくも多くの血を流してきた。
 
最近、アメリカ麻酔医協会はこれと同じようなアドバイスを医師向けに発表した。手術に伴って輸血を受けた患者は1ヵ月以内に感染症や卒中や心臓発作や腎臓障害に見舞われる危険がはるかに高くなると言う研究結果が出ていると言う。ページ184
 
^_^ なるべくなら輸血なしで手術を受けられるのがベストってことですね。
 
^_^ 血液にあれを入れたりこれを入れたり、自分なら絶対やだと思うことを自分で実験するお医者さんは尊敬します。他人を騙して実行する奴は、、、外道ですね。
 
第11章 自分の心臓にカテーテルを通した医師ー心臓
犬の心臓にカテーテルを入れたら死んでしまったが、人間の場合はどうか?ドイツの外科医フォルスマンは、まず自分で試すと言う強心臓の持ち主だった。
 
^_^ 医学会というのはどこでも閉鎖的で、権威主義的なんだなぁ。
 
第12章 爆発に身をさらし続けた博士ー爆弾と疥癬
水中で爆弾が破裂した場合、なぜ空気中よりも死者が多いのか?こうした謎を解くため、キャメロン・ライト博士は半死半生になっても被爆し続けた。
 
第13章 ナチスドイツと戦った科学者たちー毒ガスと潜水艦
ドイツ軍の毒ガス攻撃から身を守るにはどうすればいいのか?科学者たちは自ら毒ガス中毒になりながら、ガスマスクを開発した。
 
第14章 プランクトンで命をつないだ漂流者ー漂流
海難者が生き延びるにはどうしたらいいのか?海水を飲んでもいいのか?医師ボンバールは「異端者号」と名付けた船に乗り込み、漂流実験を開始した。
 
^_^ プランクトンの摂取で壊血病が回避できるのかと、漂流したら少しづつ海水を飲むというのは正解なのだろうか?
 
第15章 ジョーズに魅せられた男たちーサメ
獰猛な人食い鮫を追い求め、世界各地の海を渡り歩いたハンス・ ハス。腕に食いつかれ、ズタズタにされてもなお、彼はサメの研究を止めなかった。
 
第16章 超高圧へ挑戦し続けた潜水夫ー深海
一瞬にしてものみな全てが潰される深海の世界。そこに挑戦して話しに行く冒険者たち……水圧を乗り越えた先には、深海生物のパラダイスがあった。
 
^_^ 条件が揃わないからと中止を宣言できなくするマスコミのプレッシャー、しかし大衆支持なくしては冒険に予算をつけるのは難しい。判断は難しく、ある意味大衆とマスコミが冒険家を死に追いやった例は数多いのだろうな。
 
第17章 鳥よりも高く、早く飛べー成層圏と超音速
超音速戦闘機の事故からパイロットを脱出させるには?数々の事件の末にたどりついた答えは、今日我々も馴染み深い「シートベルト」だった。
 
アメリカの自動車業界は変革に抵抗した。これらの優先事項は格好の良さであって安全性ではなかった。ゼネラルモーターズ社の会長は、我が社の経営は技術者ではなくセールスマンで持っているのだ、と胸を張った。シートベルトが初めて一般車に導入された時、「シートベルトがドライバーに与えるダメージは、衝突によるそれよりも大きい」と主張する人々がいた。
 
^_^ 自動車業界がいかに安全性を軽視しているかを表すエピソードですね。今も、100キロ以上出せない様にリミットされた車が一台も販売されたいないことに自動車会社はなんと弁明するのでしょうか?
 
あとがき 究極の自己犠牲精神を持った科学者たちに感謝
 
 

【著者・トレヴァー・ノートン さんの気になる著書リスト】

 

ダイバー列伝―海底の英雄たち

ダイバー列伝―海底の英雄たち

 

 

『完全な人間を目指さなくてもよい理由-遺伝子操作とエンハンスメントの倫理-』書評・目次・感想・評価

【『完全な人間を目指さなくてもよい理由-遺伝子操作とエンハンスメントの倫理-』目次と読書メモ】

序言
 
^_^ 序言とありますが謝辞です。基本、謝辞はつまらないんで、読まないんですが、最初にあったので読んじゃいました。やっぱりつまんない。知らんよ。そんなの本人に直接言えよっていつも思う。金払ってなんで私信を読まされるんだよって思う。
 
第一章 エンハンスメントの倫理
不安の明確化
遺伝子操作 
  筋肉/記憶/身長/性選択
 
エンハンスメントとは強化のこと。遺伝的な手法で運動能力や知力をあげるのは是が非か。
 
^_^ ルネッサンス以降では、結局、倫理は科学技術発展のちょっとした摩擦程度にしかなっていないのかも知れない。その傾向には拍車がかかっている気がする。
 
第ニ章 サイボーグ選手
スポーツの理想
  ー努力 対 天賦の才ー
パフォーマンスの向上
  ーハイテクとローテクー
ゲームの本質
 
 舞台上の緊張に悩む一部のクラシック音楽家たちは、その緊張を和らげるためにβ遮断剤を演奏前に服用している。ページ43
 
^_^ 知らなかった。これをドーピングとして嫌う人がいるらしい。でも外科医が使うのは良いんだよね。ショーではないし。
 
^_^ サンダルはスポーツは上、見世物は下と言う前提で話を進めている。そこにまず違和感がある。倫理は人それぞれ、尺度が違うので、それぞれルールを決めたリーグや団体を作るしかないのかも知れない。そしてその評価は経済的成功や、支持する人の数によって行われる淘汰されていくだろう。薬剤を使わないドーピングも認めず、ドーピング検査ばかりやっている競技を人々が支持し続けるだろうか?自転車競技でずっと賞賛してきたアームストロングのような選手が実はドーピングでとなると、もはや純粋に競技を楽しめなくなるだろう。このままドーピング検査を厳しくするのがいいのか、全く解放してしまうのがいいのか悩ましい。ドーピングを許可してしまえばあとから裏切られた気持ちにはならなくなる。
 
第3章 設計される子供、設計する親
型取りと見守り
子供のパフォーマンスへの圧力
 
子供に対しては授かりものという意識があったが、その感覚が希薄となり親がデザインして作り上げるものという思考が、広がりつつある。
その結果の過干渉であり、遺伝子操作であり、リタリンなど薬剤の仕様である。
子供というコントロールできない存在、招かざるものに対する寛容が失われつつある。
それは不穏な優生学への足音が聞こえてくる。
 
^_^ 少ない子供を手間をかけて育てるという発想が子供への過干渉などのコントロール願望を強化し、その願望がより子供を少なくするというスパイラルになっていると思う。
競争と他人との競争での卓越に荷重が置かれすぎているのではないだろうか?お花畑だと笑われるかも知れないが、みんな違ってみんな良しでいいのではないだろうか?運が良ければ人より上に行くこともあるだろうが、それぞれが競争ではなく、てんで好きなことをやって幸せを追求する世界、そんな人生を送れる世界があるべき姿なのではないだろうか?一方向にみんなで競争して走って行くより、その方が人類は発展し、環境の変化にも対応できるのではないだろうか?
 
第四章 新旧の優生学
旧来の優生学
自由市場優生学
リベラル優生学
 
大自然が無計画に、時間をかけて、しかも無慈悲に成し遂げてきたことを、人間は先見の目を持ちながら、素早く、しかも親切にやってのけられるだろう……我々の決闘の改善は、心見るに値する最高の目標の1つであるように、私には思われる(フランシス・ゴルトン卿 優生学の始祖)
 
^_^ 思わず納得してしまいそうな、内容ではある。われわれはその行った先を知っているから、うさん臭く思うが、当時の人が皆その話を支持したのもよくわかる。
 
暗黒名言
いつの日か、われわれは認識するようになるだろう。自分たちの血を後世へと受け継ぐのは、優れた部類に属する善良な市民にとって至高かつ不可避の義務であると言うことを。そして劣った部類に属する市民を長々とのさばらせておいてはならないと言うことを(セオドア・ルーズベルト)ページ69
 
暗黒名言
適当からより多くの子供、不適者からより少ない子供をーこれが産児制限の主たる目的である(マーガレット・サンガー フェミニズムの先駆者 産児制限運動家)ページ69
 
^_^ これを読むと優生学がいかに人々に受け入れられていたかがよくわかる。日頃名言としてリストアップすることの多い現在も偉大な人と言われている人たちが皆支持していたと言うことである。そして今その言葉を聞くととてもキナ臭い。として我々は偉人の言葉と言えど無批判に受け入れてはいけないのだ。
 
^_^ その昔、ウィザードリィというゲームをやるとき、ランダムで与えられるキャラクターのボーナス値の高い値を目指して、延々とキャラメイクしていた覚えがある。別に他人との競争するわけではないし、通常のボーナス値でもゲームを楽しめるのだが、何時間でもキャラクターを作っていた。ゲームのキャラクターですらこれであるから、おそらく親は出来るならあらゆる方法で、子供に有利な形質を、与えようとするだろう。何しろ、現実世界ではキャラメイクされた人間との競争というより一層の強い動機があるのだから。
 
第五章 支配と贈与
謙虚、責任、連帯
反論
支配のプロジェクト
 
要約
遺伝子操作が行われるようになると、例えば何らかの障害を持って生まれてきたときにそれは不運な偶然によって、損害を受けている救済すべき人ではなく、やるべき遺伝子操作をせずに不遇に陥っている愚かな存在となり社会的に救済する意義を失ってしまう。
そうなると、遺伝子操作をしないと言う選択自体が大きな責任をもたらす。そこに自己責任が生じるのだ。
さらに言えば、様々な人々が暮らせる世界を作ると言う人間の理想が失われ、社会に合わせた人間を作り上げると言う人類の一種の無力化とも言える状態になる。
 
^_^ さすがサンデル。納得。しかし、人類は手に入れた科学技術は使わずにはいられない。こうした倫理は科学技術の浸透に対する摩擦ぐらいにはなるだろうが、やがて遺伝子操作によるエンハンスメントは当然のように普及するだろう。そうなったとき人類は遺伝子操作をしていない人に対しての友愛の感情を持ち得るだろうか?
 
エピローグ 胚の倫理
  ー幹細胞論争ー
幹細胞の諸問題
クローン胚と予備胚
胚の道徳的地位
  論証の分析/含意の追求/尊重の担保
 
胚自体が人と同じ権利を持つか?という問いの答えはNOである。
産科クリニックが火事に会い、5歳の女の子と胚20個とどちらかしか助けられないとしてどちらを助けるかで、胚20個と答える人はまずいない。
かといって胚をぞんざいに扱っていいというわけではない。人間と同価値か、価値がないかの二元論ではない。
樹齢100年のセコイアは人間ではないが、それ相応に尊重される。胚にもそれなりの尊重が求められる。
したがって化粧品の開発などに人間の胚を使うとなれば問題になるだろう。
胚は人間でないとすると、どこから人間か?恣意的でない区別ができないのだから胚は人間というのは、麦が何粒から山か?と問うているのと同じで愚かなことである。
 
 
 
 


 

『Q&A形式でスッキリわかる 完全理解 自動運転』書評・目次・感想・評価

『完全な人間を目指さなくてもよい理由-遺伝子操作とエンハンスメントの倫理-』書評・目次・感想・評価