「ケースで学ぶ犯罪心理学」越智啓太

 

ケースで学ぶ犯罪心理学

ケースで学ぶ犯罪心理学

  • 作者:越智 啓太
  • 発売日: 2013/09/20
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

一般に精神障害は安西を促進する方向に働くよりは抑制する方向に働くことが多い。それ故精神障害者だからわけのわからない犯罪を行うだろうと言う考えは誤りである。しかしながら、このようなタイプの殺人事件は比較的コンスタントに毎年一定数発生する。ページ4

 

一般に精神障害は犯罪を促進する方向に働くよりは抑制する方向に働くことが多い。それ故精神障害者だからわけのわからない犯罪を行うだろうと言う考えは誤りである。しかしながら、このようなタイプの殺人事件は比較的コンスタントに毎年一定数発生する。ページ4

 

性犯罪の防止効果が最も大きいのは「結婚と就職」なのだ
ページ61

 

^_^ そうなの?まぁ、結婚している性犯罪者もいるだろうけど、割合が少ないのだろう。データあるかな。

 

恋愛関係が存在しないストーキング行為は、その他の刑事法、条例等(軽犯罪法迷惑防止条例等)が適用される。
ページ78

 

^_^ なるほど。記者と政治家、芸能人、有名人のスクープ狙いは対象にならないんだね。無償のストーキングは犯罪で、お金もらってのストーキングはほぼ無罪と。

 

放火はしばしば「弱者」の犯罪といわれるが、その理由の1つはこのような社会的な「弱者」の鬱憤ばらしとして行われるからである。
ページ98 

 

 

真実の山羊
犯罪を暴露するシステムを犯人に見せ、それを実行するように容疑者に依頼する。その一方でシステムの穴を意図的に残し、その穴を利用した者を探す。なぜなら犯人だけがシステムを避ける動機があるからである。

「今こそ知りたいシェアリングエコノミー」長田英知

 

いまこそ知りたいシェアリングエコノミー

いまこそ知りたいシェアリングエコノミー

  • 作者:長田 英知
  • 発売日: 2019/09/27
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

【目次】

はじめに

第1章
シェアの歴史と今を知る

なぜ今、「シェア」が評価されるのか?
私たちの暮らしを支え、豊かにした3つの「シェア」
これからの時代に役立つシェアの形
新しいシェアを支えるもの①〜進化するテクノロジー
新しいシェアを支えるもの②〜安心・安全の仕組み

第二章
シェアの可能性を知る

新しいシェアを定義する
新しいシェアの種類①〜音楽・映像のシェア
新しいシェアの種類②〜不動産と移動手段のシェア
新しいシェアの種類③〜個人のスキルのシェア
新しいシェアが実現する新しい経済システム

第3章
過去の働き方とこれからの働き方

高度経済成長を支えたこれまでの働き方
これまでの働き方の崩壊
なぜ、新しい働き方が求められているのか?
「シェア」が働き方の理想と現実のギャップを埋める

第4章
シェアが可能にする幸せな働き方

「幸せ」を叶える働き方とは?
シェアなら「稼ぐ」と「幸せ」を両立できる
シェアでもっと自由に生きる
シェアが企業と社会に与える影響

第5章
「利用者」としても「提供者」としても、シェアを活用するために

シェアには想像以上の活用法がある
シェアサービスの「提供者」になるための戦略を立てる
Win-winになるサービスのルールを作る
トライ&エラーを繰り返す

第6章
シェアが与える日本企業へのインパク

シェアは日本に馴染むのか?
シアリングエコノミ市場の参入フレームワーク
企業間連携によるシェア

終わりに

 

【読書メモ】

 

これからの時代の新しいシェアは、「共有=ともに所有する」ではなく「共用=ともに利用する」と言うところに本質がある
ページ35

 

^_^ 共に持つのではなく、あくまで利用を共にするということね。

 

新しいシェアのサービスは、見知らぬ企業、個人間の双方向のやりとりを「低コスト・低リスク」で実現しているところに、大きなイノベーションがあるのです。
ページ46

 

誰かが所有し、普段利用しているものが、利用されず「余剰」状態にあるときに他の誰かがアクセスし、利用できる店が新しいシェアの大きな特徴です。
ページ47

 

所有権は常に提供者にありますが、所有権を超えて利用されることでリソースの最適化を図ることが新しいシェアの狙いなのです。
したがって新しいシェアは、新たな投資を行わなくても、既存のインフラやリソースの余剰で市場が成立し得るサービスであるといえます。
ページ48


ホストとゲストのレビューは同時公開を原則とすることで、相手のレビューに影響されたコメント(低い評価を受けたことに対する報復的な評価など)を回避できる仕組みを導入しています。
ページ73

 

^_^ なるほど賢い。ヤフオクなんかもそうすればいいのに。

 

定額住み放題アドレス
https://address.love/

address.love

 

一方、社会的教養サービスは、物の所有権を移転するのではなく、自分が余剰としているものへのアクセス権を提供することを事業とします。
サービスの対象となるコンテンツ・リソース・スキルは、提供したからといってなくなる事は無いので、多くの人への反復・継続的なサービス提供が可能です。
このような事業の仕組みでは、継続的に仕入れをする必要がなく自分が使っているものをそのまま貸し出すことで価値を見出せるのです。
ページ127

 

共用とは、「自分が持っている余剰を他人に分け与えること」です。そしてその養生とは、提供者の「豊かな部分」であるともいえます。
ページ171

 

^_^ なるほど。では僕の豊かな部分とは何だろう?時間?

 

コンテンツの教養サービスでは評価の質を上げる「評価に対する評価」の仕組みが、今後の課題になっています。
ページ173

 

^_^ 評価に対する評価をできるようにし、一定のレベル以下の評価に関しては、削除するのではなく、合計評価に換算しないと言うシステムはどうだろう?

 

【感想】


シェアの利用を考える側、シェアの提供を考える側、両方に向けて書かれた本。
シェアという新しい選択肢を利用して、人生をより豊かにというコンセプトのもとに書かれている。
読みやすく、軽く読める。
マズローの欲求ピラミッドなど、既に否定的な見解が出されている学説を元に説明しているなど、やや古い知見が見受けられる。
また、この手の本の常套句なのだが、いちいち終身雇用の崩壊で読者を脅すような話や、業界がうなぎ上りなのをアピールするためか、売り上げがここ数年で何倍という話が目立ってしまって、出来の悪い営業マンのような印象も。
この手の本を書く人はそろそろサラリーマンは危ないぞって読者を脅してくるパターンもう辞めません?
どの本にも同じ内容が書かれていて無駄です。
その分、本筋の話を。

「無知」の技法 不確実な世界を生き抜くための思考変革 スティーブン・デスーザ ダイアナ・レナー 訳上原裕美子

 

「無知」の技法NotKnowing

「無知」の技法NotKnowing

 

 

【目次】

序文
はじめに

Part 1
「知識」の危険性

チャプター1
「知っている」は良いことか?

1 知のパワー
2 概知を疑い、自分の目で見て、考えた解剖学者
3 独りよがりのうぬぼれ
4 狐とハリネズミはどちらが賢いか?-専門化の限界
5 意図的に目をつぶる−アスベストに冒された街
6 見せかけの知-なぜ、リーマンショックは予測できなかったのか?

チャプター2
専門家とリーダーへの依存

1 知りすぎているリーダーと組織
2 確信とバイアスの問題
3 期待と言う重圧
4 知っているふり
5 権威に対する盲目的な服従

チャプター3
「未知のもの」の急成長

1「知っていること」は常に変化する
2 どんどん「複雑化」「曖昧化」する世界−猫を木からおろせるか?
3 煩雑−複合−混沌
4 複雑なものとどう向き合うか

Part2
境界

チャプター4
概知と未知の境界

1 フィニステレ岬に到着して
2.「未知のもの」を避ける
3 無能であることへの恐怖-王様は服などを着ていない
4 未知との境界線でのリアクション
5 境界線を越える必要性

チャプター5
暗闇が照らすもの

1「知らない」-無知を見直す
2 未知の国の住民から学べること-命を落とした探検家
3 芸術家-天使と悪魔の間の領域に挑む
4 探検家-山1つずつ
5 心理療法士-不可知の道
6 科学者-逸脱する自由
7 起業家-「次なる未来」を発見する

Part 3
「ない」を受容する能力

チャプター6
カップを空っぽにする

1 初心に立ち返る-ムハマド・ユヌスグラミン銀行を設立できたたった1つの理由
2 コントロールを捨てて信頼する
3 「手放す」と言うプロセス
4 「わかりません」と言ってみる
5 疑いを楽しむ
6 抵抗感と向き合う
7 身体で無心になる

チャプター7
見るために目を閉じる

1 目を閉じてみる-盲目の写真家が描き出す世界
2 観察の技法-ド・メーストルの「部屋を巡る旅」に学ぶ
3 沈黙のための場を作る
4 U理論の4つの「聞き方」
5 思い込みに逆らう
6 権威や専門知識に疑問符を投げかける
7 問いかける

チャプター8
1 闇に飛び込む
2 仮説を立てる-シャーロック・ホームズとゼブラ・ハンター
3 対話(ダイアログ)で多様な声を集める
「意味のあるリスク」を取る
4 冒険する-映画監督、ヒッチハイクで旅する
実験的なアプローチ-ドラッグ合法化と言う発想
5 失敗を受け入れる-偶然の自ら絶妙なソースは生まれる
6 早めに失敗する-ゴールドラッシュから引き継がれた起業家精神
7 やらない理由がどこにある?
8 責任を引き受ける

チャプター9
「未知のもの」を楽しむ

1 愚かさを楽しむ−タロットカードとジョブズのメッセージ
2 ユーモアと言うスキル
3 好奇心とクリエイティビティー
4 大胆さと脆さ
5 思いやりと共感
6 連帯感-未知の不安に共に備える
7 しなやかさ-予期せぬ大規模災害に際して
8 アンチ・フラジャイル-折れず、むしろ伸びやかに

終りに

appendix 歩くことによって作られる道

1「問い」と共に生きる
2 歩くことによって作られる道

1「問い」と共に生きる
2 実験

謝辞
引用文献

 

 【読書メモ】

未知に対する人間の一般的なアプローチには穴がある。本書の狙いは、その穴を考察し、「知らない」と言う事との関係をもっと実のあるものにする方法を探ることである。
ページ6

 

「知らない」と言うのは状態ではなく動作だ。無知と対峙するプロセスのことだ。
ページ6

 

現代の私たちからすれば、ガレノス信者の解剖学者たちは愚かに思えるかもしれない-だが、私たちも今、同じような過ちを犯し、既存の知識の確実性に頼っているのではなかろうか。
ページ28

 

^_^ 過去の過ちを知るところから、今の自分も、誤っているのではないか?と考えられるかどうか、それが大きな分かれ目だと思う。きっと現代人の我々も、当時の現代人と同様に愚かな間違いを犯している。間違いなく。

 

言葉とは、物事を共に認識するために必要なものだと言うのに、人間は、意味をなさぬ賢者の言葉をまるで知恵の塊であるかのように扱う
ヘラクレイトス(哲学者)

 

シンプルに説明できないのなら、きちんと理解していないと言うことだ。
アルバート・アインシュタイン

 

トンカチを持っていたら、何でもくぎに見えてくる
ページ36

 

何事も、師や先達の権威のみを根拠に信じてはならない。何世代も受け継がれてきたからと言う理由だけで、伝統を信じてはならない。仏陀
ページ73

 

知とは球体である。大きくなればなるほど、未知との接線も伸びる。ブレイズ・パスカル(17世紀の数学者、哲学者)
ページ78

 

世界がかくも急速に変化しているのだから、私たちの知っていること、知っていると思っている事は、どんどん無価値・不正確になっていく一方なのだ。
ページ80

 

知識が広がれば広がるほど、自分が知れば知るほど、知らない事は少なくなると私たちは考える。確かに理屈としてはそうだ。問題はこの発想が、「知り得ること」と言う宇宙の広さは固定だ、と言う想定に基づいている点にある。
ページ80

 

危機後の我々は「理由はわかっている」と自分に言い聞かせながら、世界は理解可能なものだと言う幻想を守っているのだ。ダニエル・カーネマン(心理学者)
ページ83

 

概知の概知と言うものがある。我々が知っていると我々が知っている物事だ。一方、概知の未知と言うものがある。我々が知らないと言うことを我々が知っている物事のことだ。だが、それ以外にも、未知の未知と言うものがある。我々が知らないことを我々が知らない物事だ。ドナルド・ラムズフェルド(アメリカ国防長官)
ページ84

 

複雑な問題には、必ず、明確で、単純で、間違った答えがある。ヘンリー・ルイス・メンケン(ジャーナリスト)
ページ90

 

^_^ 複雑な問題に対する、明確で単純で間違った答えの例として、禁酒法がある。飲酒の悪癖を一掃しようとある種の善意を持って制定された禁酒法があの無法と暗黒の時代を生み出したのだ。現代に翻って考えてみても、単純な解決法には劣らぬ人気がある。これをすれば痩せる、これをだけで健康に。国単位でも、少年犯罪にはとにかく厳罰化だ、老人が増えたから安楽死を認めろとか、大麻の問題まで厳罰化だ、とか解禁だとか。単純で結果が見えるような気がする解決法が支持されがちだが、答えは恐らくそんな単純でもなく、極端な解決法には無い。答えは恐らく中間にある。例としては大麻ならば医療用の大麻の解禁、医薬品として医師に処方される場合に限定しての解禁など、ややもやっとした解決法が、正しいだろう。しかし、それは大勢を占める、厳禁派にも、解禁派にも明確な支持は得られないだろう。人々はすっきりとした解決策を求めがちだからだ。

 

矛盾や曖昧さをも楽しめる開かれた心で、黒か白かを決めつけない中庸の生き方をしていけばいいのです。ペマ・チョドロン
ページ141

 

天使と悪魔の間の空間で生きる方法を学びなさい
ページ143

 

^_^ 人は天使にも悪魔にもなれない。だからその間で、白でも黒でもなく灰色で生きていくしか無いのだ。

 

未知の領域に乗り出すときは、その過程の小さな成功や目標到達を喜ぶことが大切だ-と、エドゥルネは信じている。たとえ、最終的なゴールには至らないとしても。
ページ148

 

事実があるはず、理屈があるはずと追求するのではなく、不確かなこと、不可解なこと、よくわからないことの中に、ただすっくと立っている力
ジョン・キーツ(4人、シェイクスピアを評して)

 

本当の発見の旅とは、新たな土地を探すことではなく、新たな目で見ることだ。マルセル・プルースト(作家)
ページ211

 

予想外の展開でいつものやり方が通用しなくなった時は、物事がつまずいた時、大慌てでその「スキマ」を埋めようとするのではなく、ただスローダウンして、沈黙し、動きを止めて待つ。
ページ216

 

^_^ 慌てることで傷口を大きく広げる事はよくあること。緊急事態にも一呼吸置くと言うのは大切なこと。

 

問題は失敗そのものではなく、失敗に対する姿勢だったのだ。
ページ274

 

レジリエンスは、衝撃に崩さず、そのままでいる力のことだ。アンチ・ フラジャイル(反脆弱性)は、むしろ痛手を受ける前よりも強くなることだ。
ページ322

 

【感想】
なんというか、良い本だとは思うのだが、焦点がボケているという感じが拭えない。無知であること、無知であると自覚すること、オープンマインドであること、謙虚であること、初心を忘れないこと。
どれも書かれているのだが、どれも同一の意味ではなくそれぞれニュアンスが違う。それが羅列されていて、焦点がボケているという印象。
しまいには危機に際して従業員を解雇しなかった航空会社が結果的に好業績を残したという「無知」とは関係ないようなエピソードもあって、エピソードとしては面白いんだけど、なんだこれという感じ。

.「居るのはつらいよ ケアとセラピーについての覚書」東畑開人

【目次】

 
プロローグ
 
それでいいのか?
 
第1章
ケアとセラピー
うさぎ穴に落っこちる
 
第二章
「いる」と「する」
とりあえず座っておいてくれ
 
第3章
心と体
「こらだ」に触る
 
第4章
専門家と素人
博士の異常な送迎
 
幕間口上
時間についての覚書
 
第5章
円と線
暇と退屈未満のデイケア
 
第6章
白熊とクジラ
恋に弱い男
 
第7章
治療者と患者
金曜日は内輪ネタで笑う
 
第8章
人と構造
2人の辞め方
 
幕間口上、再び
ケアとセラピーについての覚書
 
最終章
居るのは辛いよ
 
文献一覧
あとがき
 
 

【読書メモ】

中井久夫と言う精神科医は、心と体を分けておくのは、それが便利だからと言う理由にしか過ぎないと言っていた。
ページ81

 

^_^ これもまた管理のための便宜的なモノに過ぎないのにそれが真実だとおもいこんでしまっていることのひとつだね。
 
依存労働って、本当に損な仕事だ。すべてのお母さんたちは大変なのだ。仕事が成功している時ほど、誰からも感謝されないからだ。感謝されなければされないほど、その仕事はうまくなされている。依存労働の社会的評価が低いのには、きっとそういう事情もあるのだろう。依存は気がつかれない。
ページ115

 

^_^ うまく行っている時ほど、感謝されないというのはあるね。子供がグレたりしてお父さんが呼び出されて初めてお母さんの子育ての苦労にお父さんが気づいたりして。いや、時にはお前の教育が!とか、お母さんが叱られたりして。お父さんがアンタはそもそも参加してなかっただろうがよ。なんて事もあるらしい。
 
遊ぶためには、誰かが心の中にいないといけない。それが消え去ってしまうと不安になって、遊べなくなってしまう。少年は心の中で母親に抱かれているときに、遊ぶことができる。他者とうまく重なっているときに遊ぶことができる。
ページ154

 

^_^ 遊ぶというのは心に余裕というか、安全が必要という事なのだろう。
 
民俗学で言う「ハレとケ」と言うやつだ。終わることなく繰り返される「日常=ケ」は徐々に枯れていって、「ケガレ」になってしまう。するとケガレは暴走し、デイケアの平和を脅かす。だから、時々ハレの時間を挿入することで、枯れたものを生き返らせる。ページ166
 
ケアの基本は痛みを取り除いたり、和らげたりすることだと思うのだけれど、セラピーでは傷つきや困難に向き合うことが価値を持つ。痛みと向き合う。しっかり悩み、しっかり落ち込む。そういう一見ネガティブに見える体験が、人の心の成長や成熟につながるからだ。
ページ176

 

^_^ この本のテーマの一つでもあるケアとセラピーの違いがここに現れている。
 
我々は真剣に恋をしている時、まさに何かに取り付かれているのではあるまいか。愛とはいわば例外的状態が永遠に続くことではあるまいか。日常生活の適切な均衡が乱れ、すべての行為が心の奥にある「あのこと」に彩られる(「事件」ジジェクより)
 
^_^ こうしてデイケア施設で起きていることを見ていくと、あらゆるコミュニティが一続きの直線グラフの上に存在しているのではないかと思える。経済的には何も生んでいないように見えるデイケア施設とは、対極にある莫大な利益を生み出す例えば凄腕トレーダーの集団も、よく見ると何も生み出していないのは同じだし、メンバーは歳をとるし、人は出ていく。そして中で人は傷つき、時に癒される。とにかくそうして最後はコミュニティから離れ、やがて死にゆくのだ。
そう考えると、とにかくできることは自分を受け入れてくれたコミュニティを愛すること、それぐらいではないだろうか?
 
セラピーでは「ニーズを満たすこと」ではなく、その「ニーズを変更すること」が目指されます。
これは結構大事なことですよ。世の中のビジネスの大半は、ニーズを満たすことに全力を注いでいるんだけど、ある種のニーズを満たされることで逆に行きづらくなってしまうということがあるわけです。
ページ275

 

^_^ ビジネスをケア的とセラピー的に分けて考えてみると面白いかもしれない。
 
ケアでは変化するのは環境でしたが、セラピーでは個人が変化していくことが目指されます。ページ276
 
ケアと言う親密な「依存」を原理としている営みは、「自立」した個人の集合体である「市場」の外側にあるはずだ。
ページ322

 

 

「少ないもので気分爽快に生きるコツ必要十分生活」たっく

 

 

【目次】

 
プロローグ
私もかつては片付けられない人間だった
なぜ散らかるのか
必要10分である状態とは
まず机の上を確認
 
第1章
仕事編
 
机の上を運ぶ
机の上に不要なもの
書類は1年たったら捨てる
デスクに引き出しはいらない
単機能は多機能に勝る
ペンは二本だけ
資料は国会図書館を利用する
プリンターはいらない
出張のお供はトートバック
 
第二章
日常生活編
 
洗面所に置くものは1日1回ルール
浴室はホテルを目指す
バスタオルは不要
トイレは入浴前に洗う
靴は3足
下着は3枚
服は強制ローテーション
化粧品のボトルは顔を向ける
掃除機は不要
ストック品は極力おかない
飯は鍋で炊ける
固定電話、ファックスは不要
洗濯機はいらない
スプレー缶は買わない
ポイントカードは持たない
まとめ買いはしない
 
第3章
情報編
 
スマートフォンのホーム画面は1つだけ
メールの受信箱は常に空にする
情報は能動的に集める
SNSは嫌になったらやめる
テレビの録画はハードディスクいっぱいまでする
 
第4章
趣味嗜好編
 
車は何も立たずに乗る
音楽はデジタルで管理する
レンタル品を活用する
思い出は思い出して楽しむ
趣味のものは思う存分家に置く
 
第5章
必要10分生活の心得
 
私が必要十分生活に至るまで
必要十分な状態になると片付けが楽になる
選ばなくて良い事は一流の証である
知恵を絞ってルールを作る
収納はスーツケースに入る分だけ
自分と相手の領域を区別する
必要10分生活テスト
ついつい捨てられれないものの処分例
 
おわりに
 
 
 
「なんとなくこう決めている」ことと「ルール」は違います。曖昧な決まり事は、その隙間からたくさんのものが漏れていて、いつしか巨大な山になります。ページ13
 
ポイントカードがあるから行く店と言うのは、利害関係があるから付き合っている友達みたいなものです。ページ116
 
価値があると判断した情報には積極的に対価を払うような価値観が、無料で情報が手に入る時代には、逆に必要だと思います。ページ138
 
選ばなくて良い事は一流の証である
ページ176

 

 
選択肢がないと言うデメリットが、ここでは一流品を迷わず選択できると言うメリットに変わるのです。ページ176
 
考えないと入らない位であれば、それはものが多すぎると言うことです。ページ186
 
【感想】
著者の几帳面さにやや引いたが内容的には面白かった。革新的な部分は少なかったが。
 
 
 
 
 
 

「MMT現代貨幣理論入門」L・ランダル・レイ

 

MMT現代貨幣理論入門

MMT現代貨幣理論入門

 

 

【目次】

巻頭解説
「現実」対「虚構」MMTの歴史的意義
中野剛志

第二版序文
定義

序論
現代貨幣理論の基礎

第1章
マクロ会計の基礎
1つの部門の赤字は、別の部門の黒字に等しい

第二章
自国通貨の発行者による支出
租税が貨幣を動かす

第3章
国内の貨幣制度
銀行と中央銀行

第4章
自国通貨を発行する国における財政オペレーション
政府赤字が非政府部門の貯蓄を創造する

第5章
主権国家の租税政策
「悪」課税せよ、「善」ではなく

第6章
現代貨幣理論と為替相場制度の選択
失敗するように設計されたシステム「ユーロ」

第7章
主権通貨の金融政策と財政政策
政府は何をすべきか?

第8章
完全雇用と物価安定」のための政策
「就業保証プログラム」と言う土台

第9章
インフレと主権通貨
「紙幣印刷」がハイパーインフレを起こすわけではない

第10章
結論-主権通貨のための現代貨幣理論
MMTの文化的遺伝子

巻末解説
MMTの命題は「異端」ではなく、常識である
松尾

参考文献/注
索引

 

 

国債とは実は、準備預金よりも多くの利息を支払ってくれる、中央銀行における貯蓄預金口座に他ならない。
ページ41

 

^_^ そうなると政府は銀行を優遇するためのサービスとして国債を発行していることになる。つまり国債を廃止しても問題はない?

 

我々には根本的な改革−つまり、巨大銀行の規模縮小、監視の強化、透明性の強化、金融詐欺の訴追、「官民共同」の金融機関に「公的な役割」をより多く担わせることをーが必要である。
ページ49

 

^_^ 現代社会においては、巨大独占企業はインフラに近い。だからこそ、企業は巨大で市場を独占しているならば政府はより多くの規制をかけるべきである。規制を好まないならば分割して競争に戻るべきであり、独占的に市場を支配している以上はより多くの公共的な政府の介入を受けることを甘んじて受けるべきである。
例えばシェア25%を超えたら、別次元の規制を受ける。価格改正の場合に申請が必要など。

 

例としては、AmazonGoogle、携帯3社、トヨタ、他、水道部品などの小さな部門でも独占的であれば政府の介入を受けるようにしてほしい。
極論すれば時には政府は大企業の足を引っ張るべきである。
それによって資本主義の根幹である競争が維持される。

 

もっとも「不健全な」予算政策とは、「均衡予算」−一定期間(通常は一年間)における、租税収入と政府支出をぴったり一致させる予算 −を盲目的に追求することである。
均衡予算が意味するのは、政府の支出によって供給された政府の通貨がすべて納税により「返却されて」しまい、その結果非政府部門には何も残らない
ページ49

^_^ 面白くなってきた。

 

国内民間収支+国内政府収支+海外収支= 0
ページ59

 

言葉
ゴルディロックス
3匹のクマの童話より。ヒロインがちょうどいい温度のお粥を選んだことから。ちょうど良いこと。

 

最善の国内政策とは、完全雇用と物価安定を追求することである
ページ81

 

^_^ 完全雇用ね。働きたくねーなw

 

貨幣を裏付ける唯一のものが「間抜けを騙して渡せると思うから、私はドル紙幣を受け取っている」
ページ119

 

^_^ 笑える。

 

まとめ
貨幣が貨幣たりうるのはその通貨で納税できるからである。つまり円で納税できるから人々は円を受け取るのである。政府に対する借金も納税義務も円で返済できるから人々は円に価値を認め、円を受け取るのである。

 

政府が租税を必要とするのは、歳入を生み出すためではない。通貨の利用者である国民が、通貨を手に入れようと、労働力、資源、生産物を政府に売却するように仕向けるためなのだ。
ページ128

 

ビットコインは貨幣ではない。ビットコイン保有者は、租税を支払ったり、借金を返済したり、他の取引を行ったりするために、結局それを国家の計算単位−例えばドルやユーロマイナスに交換しなければならない。
ページ181

^_^ なるほど。この本の通り貨幣の定義が税金の支払いに利用できるだから、今のところビットコインは貨幣ではないということになるね。ちょっと納得。

 

本当の金持ちは、議会から課税免除を手に入れるので租税を支払わない。
ページ280

 

^_^ まぁ、あのトランプもほとんど税金払ってなかったらしいしね。

 

まとめ
政府の支出を租税によって賄うという考えを捨てるべきである。つまり政府がやるべきことを歳入不足を理由に放置すべきではない。租税は収入としてではなく、インフレ調整、飲酒、喫煙、環境破壊などの悪行を減らすために利用しすべし。
ただし、格差是正のための再分配よりも事前分配を支持する。取り上げる前に分配を是正するのだ。経営者の賃金を下げ、最低賃金を上げる。
歳入を当て込んでの悪しき素材の例として、
消費税=市民の購買力を取り上げてどうする?
法人税=経営者がタックスヘイブンを求めての本社移動や効果の疑問な宣伝広告費などでの経費計上など税回避のための経営上の不合理な行動を促す。
社会保障税=人々の働く意欲を削ぐ、また社会保障税を必要としないロボットの導入を促進させ、失業率を上げる可能性がある。

 

^_^ 租税を歳入とは考えず、別のものとして必要な歳出を行うというが、それでもインフレを避けるためには無尽蔵に歳出できるわけではないので、MMTで理想郷が現れるわけではないが、税の形はもう少し改良できるかもしれない。
しかし、いつになったら働く=幸せの押し付けから世界は自由になれるのだろうか。

 

ドルを「刑務所行き免除カード」とみなす考え方が、なぜこんなにも浸透しないのか、私にはわからない。
ページ302

 

^_^ たしかモノポリーでも刑務所から出るのにお金払って出られたはずw

 

変動相場制の主権通貨における財政赤字は、決して支払い能力のリスクを伴わない。主権を有する政府には常に、自国通貨で売られているものなら何でも購入できる「支出能力」がある。政府は、決して「市場原理」に支配されない。政府は銀行口座に振り込むことで支出し、このような振り込みが「枯渇する」事は決してありえない。
ページ330

 

^_^ あくまでこれは自国通貨に限ったもので、外国の通貨建ての債権は大きなリスクが伴う。

 

国家は、国民の1部を輸入品を消費する余裕がないほど貧しくしておくことによって、マクロ経済の安定を維持しようとすべきなのか?
一般的に、失業と貧困は、通貨の安定を維持するためなら容認できる政策手段なのか?
ページ414

 

通貨は、その発行者に対してその通貨で支払うように強制される義務があれば、受け取られるだろう
ページ497

 

「主権を有し、「不換」通貨を発行する政府は、その通貨において使用払い不能になる事は無い」とMMTは主張する
ページ511

 

【感想】


数式が出てくるところは正直お手上げでした。しかし、読み物としてはエキサイティングで面白い。
個人的なMMTに対する見解としては、まず赤字が許されるとして、次の歯止めは何か?ということ。
MMTといえども、国内の人的、物的な資源が増えるというわけではない。その中で、さらなる政府支出が許されるとして、それは政治家や権力者、またはポピュリストの無節操な出費を加速させ、無駄なものに国力を注ぎ込むという事態にならないかということ。
今でも無駄な橋、無駄な道路、無駄なイベント孫受け、ひ孫受けがまかり通っているのに。
もう一つは経済的にはハイパーインフレは政府が選択しない限り、起きないというが、実際にハイパーインフレを選択した政府がある以上、政治的にはありうるということで、経済学者が経済的にあり得ないと言ってもそれは現実には起こり得ないということにはならない。
その点では経済学者はやはり経済学からしか物を見れていないなぁと感じた。

「なめらかな社会とその敵」鈴木健

 

なめらかな社会とその敵

なめらかな社会とその敵

  • 作者:鈴木 健
  • 発売日: 2013/01/28
  • メディア: 単行本
 

 

 運動を開始するシグナルとなる準備電位は、その運動しようとする意志のタイミングよりも300ミリ秒ほど早く始まると言うことである。つまり、意志より前に運動が始まっていると言うことになる。リベットの解釈によれば、意思と言うのはいわば拒否権である。自由意志と言うのは、複数の並行して回避される運動プロセスの中から、適切でないプロセスを拒否する機能に過ぎないと言う。だから自由意志は運動の準備電位の前でなく300ミリ秒後に起きると言うことになる。
その適切さが「一貫性」を意味するときに、人は運動を後付けで合理化することになる。人間の脳の中には、こうした機能が最初から備わっている。
ここ50年ほどで明らかになりつつ神経科学の知見は「個人」の「主体」概念の同一性を否定しているように見える。
自由意志があるから責任を取るのではない。責任を追及することによって自由意志と言う幻想をお互いに強化しているのである。ページ31

 

^_^ 自由意志が幻想であるとすると我々は所詮、自己の状態と外部の環境によって反応するオセロに過ぎないことになる。黒ければさらに変わりうる。白ければ黒く変わりうる。その影響はうちと外の環境によると。

 

 

貨幣へのフェティシズムは、人間の持つプリミティブな身体性から生まれる価値観を押さえつけ、非人間的な行為へと走らせる要因であると批判されてきた。要するに、手段である所のお金が大事なものになりすぎてしまい、大切にしなければならない生き方や感じ方を犠牲にするようになってしまった。世の中の多くの問題は、お金のために強欲で非情になってしまった人々によってもたらされている。ページ52

 

^_^ 凄まじいまでのお金に対する批判。しかし同意する部分は多い。しかし、同時に名誉欲というものや仲間意識というものも同時に問題をもたらしているのも事実だが、それらもお金という価値観と深く関わっている。

 

 

全世界の全議題に対して、すべての人が政治的関心を持つことを要求するのは現実的ではない。人はすべての議題に対して政治的関心を持つ必要は無い。人は政治のために生きているわけではない。他のもっと素晴らしい体験のために生きているのであって、政治はそのための手段の1つに過ぎない。ページ154

 

^_^ 時々われわれはその現実を忘れ、政治に関心のない人を非難する。いつの間にか民主主義はすべての人に税制、国防、福利に至るまであらゆることについて考察を巡らせ、時間を使い投票することを要求している。
わからないときにどうするか?ということ、政治的無関心を否定するのではなく、それでも回る民主主義を考えだすのもアリなのかもしれない。

 

 

イタリアに囲まれた人口30,000人の小国サンマリノでは、外国人が裁判官をしていると言う。これは、裁判官をどう選んでも、どちらかの側の血縁関係があったりして、客観的な裁判ができなくなるからである。
ページ162

 

^_^ これは面白い。そして英断だろう。小さなナショナリズム固執していたらできることではない。そう考えると実はアメリカ軍に戦力を外注している日本は賢いのかも。実際、外国に本土を侵略されることも、侵略することもなかったわけだし。

 

アドホック=目的限定の

 

自由意志を持った一貫した自己と言うイメージは、他者から責任を追及されることによって強化される。マーシャル・マクルーハン(メディア論)は、印刷物を黙読することによって「個人」が形成されてきたと言う。
ジュリアン・ジェームズ(心理学)の二分心と言う考えによれば、およそ3000年前までは、人類は意識を持っておらず、右脳から響く「神々の声」に従っていた。心は基本的に2つに分かれていて、左脳は右脳の指令に従っていた。そして左脳が聞く右脳の声は、神々の言葉として受け入れられていたのが、3000年前に言語の発達によって意識として統合され、神は沈黙した。
ページ174

 

 

^_^ 一貫した自己と言うのは、それが管理しやすいがゆえに採用された一種の欺瞞で、実際の個々人のあり方とは異なるということか。その点でも、男女や年齢、偏差値なども管理しやすいというだけで、モノの本質からはずれていることが多い。
例えば僕は戸籍上は男だが、完全無欠の100%男ではないだろう。心の中に女性的な部分もゼロではないと思う。
今後はコンピューターの処理能力が上がることで、管理しやすい二元論から、モノのありようをそのまま管理できるようになるのかもしれない。
ゼロイチで考えるコンピューターが、ゼロイチで無理やり処理していた世界観を覆すかもしれないと思うと面白い。

 

ノーベル賞科学者であるジョシュア・レイダーバーグ(分子生物学)は、このことを「人は人ゲノムと人常在菌ごうゲノムから成り立つ超有機体である」と表現した。
ページ176

 

アイオワ大学はインフルエンザの流行の予測に予測市場を用い、62人の専門家による市場によって、米国質病予防管理センターのレポートよりも早く結果を予想することに成功している。ページ192

 

^_^ ただの予想やアンケートよりも、このやり方は有効だろう。専門家に限定しているのも素晴らしい。

 

著者が最も関心を持っているのは、複数のパラレルワールド同士で、人々はどのようにコミニュケーションをとっていけば良いのか、そこにおいて国家はどのような存在となり得るかと言う政治哲学上の問題にある。
ページ207

 

^_^ もうすでに我々はパラレルワールドに住んでいると言えるのかもしれない。トランプの陰謀論の世界に生きる人、もっと言えば、唯一絶対神のいる一神教に生きる人、信奉するブランドに生きる人など、生きる人の数だけ世界はあり、相互の完全な理解は不可能であり、それは古来から変わらない。その中で人々は衝突し、時には妥協して生きてきたのだ。誰もが思っている自分が見ている世界感が正しいと。

 

自由とは、与えられた選択肢の中から選択することが可能であると言うことでは決してなく、複雑なまま生きることが可能であることを言う。複雑なまま生きることができれば選択肢は自然に生成する。新たな選択肢を生み出すことができる可動領域の複雑性の広さ、それが自由なのである。ページ222

 

【感想】

正直言って数式には一切、ついていけなかった。しかし、エキサイティングな議論はとても面白く読むことができた。
自分の中の様々な要素をそのまま出すことができることの自由、便宜的な個人という単位からの自由など考えさせられることは多い。
そしてこの本を読み終えて感じることは、仏教の言う中道の凄みだ。
この本に度々登場するなめらかなというのは「中道」と一致する部分が多いと思われる。万物は白か黒かではなく、本当は白寄りの黒だったり、黒寄りの白だったりするのだ。人間も、人間のすることも。
人間がより人間らしく曖昧であるためにゼロイチのコンピューターやインターネットが役立つというのもなかなか面白い現象だ。