書評『サピエンス全史(上)文明の構造と人類の幸福』

 

 95点

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 しあわせってなんだっけ人類版というべき内容の一冊だった。

 子供のころは欲しいおもちゃを買ってもらえれば幸せだと思ってた。思春期は恋人ができれば幸せだと思っていた。青年期は結婚出来れば幸せだと思っていた。今は老後資金が用意できれば幸せだと思っている。

 でも本当に幸せ?

 人類も、農業革命で食料増産したけど、人口が増えるばかりで個々の摂取カロリーは減り、産業革命でモノを量産できるようになったけど、多くを占める労働者たちは働きづめでちっとも幸せじゃない。最近はIT革命でみんなネットに繋がったけど、先進国ではうつ病の人が増えるばかり。どうも幸せじゃない。

 人類は進歩してきたけど、進歩=イコールというわけではないという内容のお話。

 AIでシンギュラリティとかでまた革命的なことが起きるらしいけど、今度こそ、人類は幸せになれるのか、、、技術の使い方、人類の方向性、じっくり考えさせられる一冊。下巻が楽しみ。

【『サピエンス全史(上)文明の構造と人類の幸福』目次+読書メモ】

【目次】
 
歴史年表
 
第1部 認知革命
 
第1章 唯一生き延びた人類種
不面目な秘密/思考力の代償/調理をする動物/兄弟たちはどうなったか?
 
第2章 虚構が協力を可能にした
プジョー伝説/ゲノムを迂回する/歴史と生物学
 
第3章 狩猟採集民の豊かな暮らし
原初の豊かな社会/口を利く死者の霊/平和か戦争か?/沈黙の帳
 
第4章 史上最も危険な種
告発のとおり有罪/オオナマケモノの最期/ノアの方舟
 
第2部 農業革命
 
第5章 農耕がもたらした繁栄と悲劇
贅沢の罠/聖なる介入/革命の犠牲者たち
 
農耕の開始が人類を幸せにしたわけではない。ただ、人口が増えるという遺伝子的な数の繁栄をもたらしたに過ぎない。我々は今でも同じことを繰り返していないだろうか。人々が幸せになるはずのIT革命で人々はより忙しくなり、せわしなく暮らさざるを得なくなった。テクノロジーの進歩とどう向き合うか個々人が常に試されているのだろう。
 
 
第6章 神話による社会の拡大
未来に関する懸念/想像上の秩序/真の信奉者たち/脱出不能の監獄
 
大昔の狩猟採集民も現代に生きる我々も神話の中に生きている。それは神云々の神話だけではなく、資本主義、自由、平等、などの現代の価値観も含まれる。共通の神話を信じ、働き、消費し、生きている。
 
砂糖水を売りつけるコカコーラも、コカコーラを飲む⇨幸福という神話を繰り広げていると考えると、やはり我々は現代の神話の中に生きているのだと考えさせられる。
新車に乗る喜び、知らないことを体験する旅という喜び、どれもかならずしも本能に根ざしているとは言えない訳で、共通の幻想に過ぎないのだろう。
欲望を吟味することが社会を幸福に生きるコツなのかも知れない。
企業が生み出した幻想にとらわれて企業の思惑通りに日々をあくせく働いて企業の思惑通りに消費を繰り返す人々のなんとおおいことか。
 
 
第7章 書記体系の発明
「クシム」という署名/官僚制の驚異/数の言語
 
人の集団が多くなるにつれて書記という職業が必要になった。原初の文字はとても実用的なもので税の支払いを記したものだった
 
第8章 想像上のヒエラルキーと差別
悪循環/アメリカ大陸における清浄/男女間の格差/生物学的な性別と社会的・文化的性別/
男性のどこがそれほど優れているのか?/筋力/攻撃性/家父長制の遺伝子
 
生物学的作用は可能にし、文化は禁止する。同性愛も可能で、ある以上自然なことなのだ。
 
男女の差別、男女のヒエラルキーに関しては果たして男性よりも女性は虐げられてきたと言えるのだろうか?
男性が独占してきた権利や、権威、権力などは女性にとって本当にほしいものなのだろうか?
幸福に価値を置くと古来より女性の方が幸せだったのではないだろうか?
男がアホみたいに争ってきた戦場に本当に女性のは立ちたいとおもっているのだろうか?
女性の方が長命なのはそれを物語っていないだろうか?
 
 
第3部 人類の統一

第9章 統一へ向かう世界
歴史は統一に向かって進み続ける/グローバルなビジョン
 
世界は統一に向かっている。アメリカと敵対していたウサマビンラディンですらドルを愛していたし、同じくアメリカと敵対していたイランも国民国家であった。
 
これに関しては疑問がある。統一に向かいながらも人類はわずかな差異を見つけてことさらそれを大げさにし分裂して行くと思う。
仏教も基督教も分派し続けているし、敵を見失った西側諸国も見事に分裂、混乱、カオス化した。
これを統一への道でちょっとたちどまっただけと言えるだろうか。
 
第10章 最強の征服者、貨幣
物々交換の限界/貝殻とタバコ/貨幣はどのように機能するのか?/金の福音/貨幣の代償
 
貨幣は宗教、信条など、時には敵対しているもの同士すら、協力させる。時には貨幣に変えてはいけないものすら、侵食し、飲み込む。
 
貨幣ってすげえなぁ。
 
第11章 グローバル化を進める帝国のビジョン
帝国とは何か?/悪の帝国?/これはお前たちのためなのだ/「彼ら」が「私たち」になるとき/
歴史の中の善人と悪人/新しいグローバル帝国