AIは全能の神?八百万の神?『人工知能と経済の未来 2030年雇用大崩壊 (文春新書)』書評・感想・評価

【Q1】どんな人にオススメ?

 AIに仕事を奪われて路頭に迷うしかないと考えているあなた。
 AIの普及で失業の増大が懸念される場合の政府や中央銀行がとるべき政策について考えたいあなた。 

【Q2】この本の弱みは?

 AIに対して政府や中央銀行がとるべき政策については書かれているが、個人がとるべき手段に関しては記載が少ない。ベーシックインカムが導入されるまで耐えるしかない?

【Q3】この本の強みは?

 タイトルは絶望を感じさせるが、AI時代も政策によっては希望が持てるという本。

人工知能と経済の未来 2030年雇用大崩壊 (文春新書) 個人的イメージ

人工知能と経済の未来 2030年雇用大崩壊 (文春新書) 個人的イメージ



【著者・井上智洋さんの気になる著書リスト】

 

 

【『人工知能と経済の未来 2030年雇用大崩壊 (文春新書)』極個人的読書メモ】

 著者はシンギュラリティは起こると考えている。ただそれは人間の知性をすべて超えるではなく、ほぼ超えるというレベルに止まるだろうと述べている。
 まぁ、根拠は見当たらないが。
 しかし、AIの発展で世界の様相が変わることだけは間違いないようである。 
 
2章
 
 汎用AIの開発には2つのアプローチが考えられ、一つは全部をエミュレートする全脳エミュレート。
 もう一つは、海馬、前頭葉など、モジュールに分けて、エミュレートする方式。
 著者はモジュールに分けた開発を支持しており、全脳エミュレートを、禁止すべきと言っている。 どうやら、全脳エミュレートに人類滅亡の可能性を感じているらしい。
 
!モジュールに分けた方が、認知症の対策など、研究過程で成果が出るので、研究を続けやすいかも知れない。俺も何百年も生きたいな!
 
3章
 AIによって生産性が向上するなら、それに合わせて、マネーサプライを増やすべき。 
 需要が伴わなければ不況と失業が増大する。
 日本のデフレはマネーサプライが足りないから。
 ヘリコプターマネーで庶民にお金を配るべき。
 消費は飽和であるという考えはお金持ちに限った話で、庶民にお金を渡せばやはりお金は使われる。
 もちろん、インフレには注意しながら。
 
!庶民にお金を配るというのは賛成。お金くれ、お金を撒いても消費が増えないなんて馬鹿な経済学者いるのか。というわけでこの点は著者に賛成、円高の原因も円の不足が原因なのか?なのに政府は消費税だ何だと消費側から金を巻き上げることばかり考えてんな!
 
4章
 
 汎用AIが開発されると、一部の名人級のホスピタリティを提供する人や、クリエイターのみが、仕事を持ちそれ以外の労働者は仕事を失う。
 一方、資本家は労働者を雇わないで生産活動ができるので、需要が十分にあると仮定すると、生産設備を増やし続け資本を増やし続けることができる。
 労働者は飢えて死ぬが、資本家は経済規模が小さくなるが同じ資本家が買ってくれるので儲けが減るだけで、たいして痛くない。
 
!一部のエリートだけが仕事を持ち、多くの人々が失業するというところまでは賛同できるが、労働者の購買力がなくなっても、資本家は困らないというのは疑問が残る。困るだろ買う人がほとんどいないんだから。まあ、これは次章のベーシックインカムへの布石だろうけれども。!
 
5章
 
 AIによる労働者を必要としない生産性の向上が実現すれば、ほとんどの労働者は失業する。その時は生活保護ではなく、ベーシックインカムを導入を導入するのが最適だと考える。
 現在の生活保護制度は問題が多く、事務など無駄なコストがかかり過ぎている。
 今からでも月額1万円でも、ベーシックインカムを導入してみるべきである。
 近代以降、人は資本主義に毒され、有用性ばかり追い求めてきた。
 ベーシックインカムが導入されば有用性ではなく、バタイユの言っていた至高性が重要視されるようになる。未来のために現在を従属させるような、やり方は終わりになる。
 
!汎用性の万能型のAIを全知全能の神、特化型のAIが分散して存在することを八百万の神という比喩は素晴らしい!