あえて今読む、16年前のドラッカー『ネクスト・ソサエティ ― 歴史が見たことのない未来がはじまる』書評・目次・感想・評価
【Q1】どんな人にオススメ?
2002年のドラッカーの予測がどれほど当たっているか知りたいあなた。
2002年当時の状況と現代の状況で何がよくなり、何が悪化し、何が解決し、何が積み残されているかを知り、その直線の先にある未来を知りたいと思うあなた。
【Q2】この本の弱みは?
つくづく、現代のこの世をドラッカーに見てもらい、語って欲しかったと思う。2005年にドラッカー氏がなくなったのが惜しまれる。最大の弱みは新刊が出ないということに尽きる。
【Q3】この本の強みは?
過去を知り、2002年当時を深く洞察していたドラッカーと現代の世界を知る読者との共同作業でこの先の未来を考えることができるという点。2002年から積み残した課題はこれからより大きく手を付けられないものになるだろう。その課題をはっきり認識できることは大きな意味がある。
【著者 P・F・ドラッカーの気になる著書リスト】
- 作者: ピーター・F・ドラッカー,上田惇生
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2001/12/14
- メディア: 単行本
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プロフェッショナルの条件――いかに成果をあげ、成長するか (はじめて読むドラッカー (自己実現編))
- 作者: P・F.ドラッカー,Peter F. Drucker,上田惇生
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2000/07/01
- メディア: 単行本
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ドラッカーの講義(1991-2003) ~マネジメント・経済・未来について話そう~
- 作者: P. F.ドラッカー,リックワルツマン,宮本喜一
- 出版社/メーカー: アチーブメント出版
- 発売日: 2010/09/29
- メディア: 単行本
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【『ネクスト・ソサエティ ― 歴史が見たことのない未来がはじまる』極個人的読書メモ】
!あえて今読む、2002年(今から16年前) に発行されたドラッカー!
第I部 迫り来るネクスト・ソサイエティ
かつて農業生産人口が減ったように、 製造業の生産性が上がると共に労働者人口は減り続ける。
日本は未だ製造業偏重である。
知識は相続できないし、 人から人に移動するのに時間がかかるので、平等とも言える。
!日本は未だに製造業が大きな力がを持っている。 その結果がこの低い経済成長なのかもしれない。 ネット企業や新しい金融を虚業と貶める風潮は続き、 東芝などの古い製造業の不祥事は見過ごされる。 日本に必要なのは製造業にある程度見切りをつけることではないだ ろうか?アップルのようにサービスと製品開発は残しても。 ソニーなどは今、 大きな利益を上げているがソニーは金融にかなりの力を注いでいる し、ゲームソフトは製造業ではない。 この本を書かれたのは15年以上前なのにいまだに指摘された問題 を日本は解決できずにウロウロしている。 やや絶望的な気持ちになってくる。また、 この本が書かれたのが約15年前、 この時代はまだAIの登場については考察されていない。 この本で主役に躍り出るとされる知識労働者の地位がまさにAIに よって脅かされているのだから、時間の流れの速さを痛感する。!
第2部 IT社会のゆくえ
第1章 IT革命の先に何があるか?
テクノロジストをお金ではなく(お金ももちろん大事だか) 社会的に高く遇さねばらならい。
そうしないと、イギリスの様に没落する。
第2章 爆発するインターネットの社会
産業構造そのものが変化しているのだ。
第3章 爆発するインターネットの世界
コンピュータを使えないトップは価値がない。 コンピュータは子供でも使えるものになっている。
!今の時代。 少なくとも大企業のトップでコンピュータを扱えない人はおそらく いない。だが中小企業にはまだいそうだ。 この辺は確かに15年前の話だなぁ。古い!
第4章 eコマースは企業活動をどう変えるか?
これからは販売する側が強くなる
!おっしゃる通りアマゾンはとても強くなりました!
第5章 ニューエコノミー、いまだ到来せず
一時的変化と本物の変化との差は、人の口に登るのは一時的変化、 人が行動するのが本物の変化だ。
第6章 明日のトップがはたすべき5つの課題
!たいへんだなこりゃ!
第三部 ビジネス・チャンス
第1章 起業家とイノベーション
第2章 人こそビジネスの源泉
労務管理の外注や人材派遣が伸びている。 労務管理にかかる書類などの手間やコストは減るどころか増え続け ていて、 2万ドルちょっとの給料なのに労務管理の手間に5000ドル掛か っているのだから外注化してコストをさげるのは仕方ないかもしれ ない。しかし、 それで浮いた時間はしっかりとマネジメントに費やさなければなら ない。
! 政府というのは何でも法律を作ることには躍起だが法律を減らすこ となど、全く考えていない。書類は増えるばかりだ。 この書類一枚の提出に国としてどれだけコストがかかるかなど考え もしないのだろうな!
第3章 金融サービス業の危機とチャンス
ロンドンのシティが再興した。それは国際金融に注力したからだ。 アメリカの銀行でさえ、 基本的には国内のことに注力しグローバルにビジネスを見ていない 。
自己勘定取引はギャンブルに過ぎない。 多くの証券会社がそれに手を出している。 うまくいっている間はトップは目をつぶり、 発覚してからトップは想定外の違反があったという。その結果、 山一証券やベアリングズ社は潰れた。
今金融は随分とイノベーションが起きていない。 手数料の値下げ競争になっている。
今、儲かりそうなのは中流を狙ったビジネスだろう。
第4章 資本主義を越えて
日本は官僚に支配された19世紀の資本主義国家である。 従って門戸を開放するたびに外国資本に産業を支配される。
NPOは収益以外の評価基準が必要である。
21世紀最大の不安定化要因は人口構造の変化、 とりわけ少子化である。
!日本も言われ放題だな。まぁ、事実だから仕方ないけど。 外国資本に持って行かれても日本に自治権がある限り、 一方的な搾取はできないのだから、構わないのかもしれないな。 トップで株主が外人というだけで。日産もまぁ、 うまくいってるみたいだし!
第1章 社会の一体性をいかにして回復するか?
現在の再び世界は多元世界になろうとしている。 企業は国家を飛び越える。 今日の我々の課題はそれぞれの組織の機能を絞り込み維持しつつ社 会全体の為に協働することである。
! 様々な組織はいつの間にかその組織のために活動するようになる。 国民国家の核となる中央政府の官僚機構も変わりはしない。 それは世界に蔓延する。 病院は患者のためよりも病院のためを優先し、 学校も生徒のためでなく学校のために問題児を校外に放り出す。!
第2章 対峙するグローバル経済と国家
国民国家の財政を縛るのは今や実需より遥かに巨大化した為替相場 である。為替相場はパニックにより国民国家の財政に打撃を与え、 国民国家は為替相場の動向を見ながら財政を運営しなくてはならな い状態になっている。 そしてパニックに対抗して当局は為替介入をするがことごとく敗れ ている。
輸出の強化には自国通貨安が優位とされているが、 それはどうもあやしい。自国通貨安になると海外に工場、 拠点を設置しづらくなる。 一方で自国通貨が高ければ海外に拠点を起き、 そこに部品を供給するなど一部を現地生産にしつつも輸出を伸ばし 続けることができる。 それが通貨安でも日本が輸出を伸ばし続けた要因ではないかと考え る。
!この発想は無かった。 日本のメーカーが優秀というだけでは説明できなかった投資という 視点で言えば通貨高は有利に働くし、 日本のホンダが米国ホンダに部品を移動するときに為替はあまり気 にされないだろうし!
第3章 大事なのは社会だー日本の先送り戦略の意図
日本の官僚は無能だ。
農業改革でも何もせず、流通改革でも何もしなかった。 そして何もしなかったが故にどちらもうまくいった。
そして余計なことをしてバブルを生じさせ、崩壊させ、 手をこまねいている。 そして今回も解決を先送りして問題が消え去るのを待つだろう。
経済を第一と考えるのはアメリカ特有の考え方だ。 他の先進国では社会を優先する。
第4章 NPOが都市コミュニティをもたらす
田舎にはコミュニティがあった。しかし、それは束縛的であった。 人々はこぞって都市を目指し、農民から市民になった。しかし、 都市にはコミュニティが無かった。 都市には置いて人々は匿名の存在だ。 人はコミュニティを必要とする。そこで必要なのがNPOだ。 今後、NPOが爆発的に発展することを期待する。
!日本でもNPOのシステムが導入されたが、 どうも胡散臭いという印象が先行してしまっている。 なぜだろうか?企業はだって胡散臭いのはいくらでもあるのに。 そもそも日本にはNPOは馴染まないのだろうか? では代わりになるものは? どうにもこの国はドッチを向いても袋小路だ!
95点
3時間
何しろ、16年以上前の本だから、過去と現状、 ドラッカーの予想があたっていたのか?当時から解決したものは? 当時から積み残した課題は? と時間を隔てたちょっと変わった角度で読めて面白かった。 そして何よりドラッカーの慧眼には2018年の今でも驚かされる 。 今は亡きドラッカーに現代社会について聞いてみたいと思うのは世 界中の読者の叶わぬ願いではないだろうか?