『隷属なき道 AIとの競争に勝つベーシックインカムと一日三時間労働』書評・目次・感想・評価
[読みやすさ 9/10] 翻訳物でありながらとても読みやすい。
[何度も読む 7/10] 完成度が高いので再読したくなる。
[読後感 9/10] 世界に現れた新しい知性に喜びと嫉妬を感じる。
[学び 10/10] 新しい視点と望むべき未来の世界について学べる。
[斬新さ 10/10] とてつもない暴論かも知れないが無視できない。
【Q1】どんな人にオススメ?
世界の政治やあり方に疑問を持っているが、どこを見てもその答えになるものが無いと嘆いている人に。数あるベーシックインカムに関する本の中からどれを読むべきか迷っている人に。
【Q2】この本の弱みは?
内容には文句はないがタイトルがキャッチーじゃない。もっと多くの人に読んでもらいたいので「国境開放とベーシックインカムが世界を救う」とかの方がよかったのではないだろうか。そして近隣の書店に売っていない。6店舗回って1店舗にしか置いていなかった。いい本だからもっと置いて。
【Q3】この本の強みは?
ベーシックインカムだけではなく、世界の目指すべき新しい形を提示する一冊。実例を多く紹介し、時に暴論に見えるアイデアを納得させるだけの内容になっている。著者自身が聡明な12歳に理解されるものでなくてはならないという条件も満たしていると思う。とても読みやすくわかりやすかった。この本を紹介できることに喜びを感じる。
【『隷属なき道 AIとの競争に勝つベーシックインカムと一日三時間労働』目次と読書メモ】
■第1章 過去最大の繁栄の中、最大の不幸に苦しむのはなぜか?
産業革命以降の2世紀で、長く停滞していた世界経済は250倍、 1人当たり
の実質所得は10倍に増えた。
これは中世の人々が夢見た「 ユートピア」なのか?
ではなぜ、 うつ病が歴史上かつてないほどの健康問題になっているのか?
産業革命以降の2世紀で、長く停滞していた世界経済は250倍、
の実質所得は10倍に増えた。
これは中世の人々が夢見た「
ではなぜ、
世界は素晴らしく豊かになったが、人々は希望を失っている。
向かうべき方向、進歩、期待などを見出せず苦しんでいる。
■第2章 福祉はいらない、直接お金を与えればいい
生活保護や母子家庭手当て、就学援助、
そのかわりに全ての国民に、
生活困窮者は自分自身に必要なものがなんであるかわかっている。
例えば牛を送る。牛を維持するのにも金がかかる。
数々の社会実験でもフリーマネーが麻薬やタバコ、酒に、 変わる率は低く、実際にその地域では消費が減少した。
貧しい人はお金がないから貧しいのだという当然のことに立ち返る べき。
! 人に支援をするときになぜ支援する側が支援される側より必要なも のを理解していると思ったのだろうか?傲慢の極みだ、!
■第3章 貧困は個人のIQを13ポイントも低下させる
ベーシックインカムがなぜ有効なのかは、
貧困はIQを13ポイントも下げる。
貧困に直面している人は複数のタスクを同時進行しているパソコン のようなもので判断力が大幅に落ちる。
忙しい人は休むことができるが貧困は休むことができないのだ。
その結果、 目の前の問題を解決することばかりに集中し長期的視野に立てない 。
貧困の人にお金を与え、 ホームレスに家を与えることはトータルで福祉予算の削減にも役立 つ。
政府の助けを必要とする人ほど政府に助けを求めることができない でいる。
■第4章 ニクソンの大いなる撤退
60年代初頭、ベーシックインカムは、
ニクソンに渡された報告書
ニクソン大統領はすべての貧困家庭に年間、
しかし、 反対派の1人が150年前のイギリスのスピーナムランドでのベー シックインカムによく似た制度の導入の失敗の資料を持ち出した。
それはナポレオン戦争当時のイギリスでの貧民の蜂起を抑えるべく 導入された制度だった。
実際はその制度はうまく機能していたが、 その後の調査で貧民の堕落、 人口の増加などの様々な問題を生んだとされた。
しかし、 後世の調査で、 その調査はほとんど捏造で実際の給付を受けた貧民ではなく、 労働は義務だと考える司祭や地主から集めたものだった。
しかし、
その後のクリントン政権では自己責任というレトリックの元、 貧しい人に対する給付は減らされ、 子供の貧困対策は大きく後退してしまった。
貧困から逃れるのは働く者の特権という考え方は今でも変わらずそ こに蔓延っている。
■第5章 GDPの大いなる詐術
ロシア人教授クズネッツが80年前に基礎を築いたGDPは進歩を
だがGDPは多くの労働を見逃し、
発展途上の国、 たくさんの家や橋を作る必要がある国にとってはGDPは未だ価値 のある指標だ。
しかし、成熟した先進国においては違う。
3.11の地震の後、日本の経済成長率は伸びた。 復興需要によって。
ならば近隣の窓ガラスを割って歩くべきか? 否。
ならば近隣の窓ガラスを割って歩くべきか?
クズネッツが考案したGDPは戦時下において自国がどれほど戦え るかを推測するのには一定の効果があったが、 戦時下でない今では信奉されるほどの価値がない。
戦時下では国力を高めて敵を打ち破ることがすべてなので国民の幸 せなどは計算に入れる必要がないからだ。
しかし、平時は違う。 成長や進歩は国民の幸福のためにあるはずなのだが、 その幸福の源泉たる家族やコミュニティなど価格のないものはGD Pでは無視される。
他の指標も的確とは言えない。新しい指標が必要だ。
!新しい指標とは新しい目標と同義だろう。 日本が国は十分発展したからとGDPの発表やめちゃえば面白いの になぁ。無理だろうけど!
■第6章 ケインズが予測した週15時間労働の時代
ケインズは1930年の講演で、「 2030年には人々の労働時間は週15時間になる」と予測した。
ところが、 産業革命以来続いていた労働時間の短縮は70年代に突然ストップした。
借金によって消費を拡大させる資本主義の登場
■第6章 ケインズが予測した週15時間労働の時代
ケインズは1930年の講演で、「
ところが、
仕事とは他になすべきことを持たないものの逃げ場であるーオスカ ー・ワイルド
現代のストレスの多くのが働きすぎを原因としている。
より多くを消費するため、多くの人がより多く働き、 借金をしてより働くよう自分を追い詰める。
大切なのは働かないことではなく、 労働を多くの人に分散すること。
働くものが労働を独占するのではなく、老人、 女性を含め多くの人が仕事を適量( 今の基準でいうとかなり少なく)持ち、 誇りを持って生きられるようにすることだ。
失業は離婚や死別以上に人を傷つける。
しかもそれは継続的だから始末に悪い。
!労働と賃金はある意味、マルサスの罠に落ちている気がする。 消費を抑えれば労働時間は減らせるのにそれをしない。賃金が増えれば消費を増やし個々の幸福度は上がらない。賃金が上がれば労働時間を減らせるのに多くの人がは一時間労働時 間が減ると一時間分お金を損すると思っている。 時給があがれば人は休むと損する金額が増えるという罠がある。 賃金が上がったら労働時間を減らすという考え方があっていい!
■第7章 優秀な人間が、銀行家ではなく研究者を選べば
「空飛ぶ車が欲しかったのに、得たのは140文字」とピーター・
目指すべき未来は全員の失業だ。 そうすれば全員遊んで暮らせるーアーサーCクラーク
警察、消防、ゴミ収集、 など本当になくては困る人々が薄給で働き、 不必要な職業の人が高給を得ている。
多くの優秀な頭脳が銀行などの実際には何も生み出さない部門の高 収入に惹かれて就職する。
高速株取引でいったい誰が幸せになるというのだ?
良いものを生み出さなくても高収入を得られる世界は多くの損失を 被っている。
あの頭脳たちが人類のためになる研究開発に向かっていたら世の中 はもっともっと良くなっていたはずだ。
会計士、株仲買人など、 世の中にはなくてもいい仕事が山ほどある。 人に必要のないものを買わせるマーケターなど。
そしてその多くが高収入である。
教育でも将来高給を得る仕事を得るために想像力、 持続力などもっともらしいことを言っているが、 我々の社会がその流れを作り変えて、子供が将来、 本当に価値ある仕事につけるように社会自身を変えていかなくては ならない。
■第8章 AIとの競争には勝てない
産業革命時代、織物工は蒸気機関に仕事を奪われた。
そして今、
その結果、
今こそ、時間と富の再分配、
機械と戦うために人々はより長い教育を必要とする。
すると、 長い時間を教育に当てられる富裕層の金持ちだけがいい仕事につけ るため、貧富の差は拡大する。
労働者と資本家の取り分は長い合間、 1対2であり不変だとされていたが、資本家の取り分が10% ほど増え始めた。
すると、
これは小さくない変動だ。
結局人間はAIには勝てない。 つまり生産手段である機械を共有にしなければ食べていけない人が 大量に出る。
■第9章 国境を開くことで富は増大する
西側世界は途上国支援のために50年で5兆ドルを投じてきた。
わずか62人が35億人の総資産より多い富を所有する偏在の要因は国境にある
途上国の支援に5兆ドルもの資金が投入されているが、 効果のほどはわからない。
そこて最近はRCT(比較試験) が行われてより効率的な支援が実施されようとしている。
そこて最近はRCT(比較試験)
さらには効率良い方法としては国境の解放だ。
今世界の貧富の差を最も大きくしているのは国境だ。
今の世界では望まれた国で生まれるかどうかがエリートであるかど うかを決めているのだ。
国境を解放すると世界のGNPは約2倍になると考えられている。
もちろん急な解放はできないし、するべきでない。
2000年以降、世界中で国境の壁が増え続けている。
移民の受け入れなど一定のペースで国境の壁を減らしていくことが 重要である。
!これこそ日本に投げかけられた問題なのだろう。 移民をどうするか?社会に多様性を持たせられるか? 国境の解放の経済効果については少しずつ果実として受け入れてい くのがいいのだろう!
■第10章 真実を見抜く一人の声が、集団の幻想を覚ます
1954年12月21日に洪水が来て世界は滅亡する。
その予言が外れても信者たちは信念を変えない。
人々は集団の中では間違った答えでもそれに賛同するとわかってい る。
しかし、 そこで1人が誤りであると言うだけで人々は正しさに目覚める。
しかし、
荒野で1人叫ぶことにも意味はあるのだ。
だからこそ我々は新しいアイデアを用意しておく必要がある。
!感動的な内容だった。我々は自由に考えなければならない。 そうすることで次の世界を作るアイデアが生まれてくるのだ!
■終章 「負け犬の社会主義者」が忘れていること
この本で提案したのは、大きな路線変更だ。奴隷制度の廃止、 女性の解放も、唱えられた当初は、正気の沙汰とは考えられていなかった。 そうした「大きな政治」を左派は思い出し、 右派も同調する変革へと進むべきだ
■終章 「負け犬の社会主義者」が忘れていること
この本で提案したのは、大きな路線変更だ。奴隷制度の廃止、
オヴァートンの窓というものがある。
それは意見には急進的なものから、穏当なものまでがあり、 政治家は穏当で大衆に受け入れられやすいオヴァートンの窓に入る 政策を選び、窓の外に置かれる急進的な政策を避ける。
最近の急進的な右派は自分の過激な政策を通すためにより過激な政 策を見せて、オヴァートンの窓を右にずらし、 自らの政策を穏当で受け入れられやすいものに見せかけている。
一方、左派はすっかり覇気をなくし、現状を追認するばかり。
また自らの主張をこねくり回して難しくするばかり。
12歳の聡明な子供に自らの考えを伝えられるようにしなければい けない。
改革は失敗に終わったのではない。これがはじまりなのである。
!これが29歳の人が書いた内容とは思えない。 とんでもない良著だった。 ベーシックインカムに反対の人も賛成の人もベーシックインカムを 知らない人にも読んでもらいたい。 この本が生まれる土台となった、メディア、De Correspondent にも、興味が湧いた!