クレイトン・M・クリステンセン,ジェームズ・アルワース,カレン・ディロン
翔泳社 2012-12-07
[読みやすさ 9/10] 翻訳ものですが文体も安定していて、とても読みやすいです。
[何度も読む 8/10] 為になる内容なので時折、読み返して人生の軌道修正をしたい。
[読後感 7/10] 終盤の内容は子供がいないのでよくわかりませんでした。
[学び 9/10] 新しい人生戦略を学ぶことができます。
[斬新さ 9/10] 経営戦略を人生に応用するという斬新な内容。
【Q1】どんな人にオススメ?
これから進路を決めようと考えている学生さん。高報酬か、やりたいことかで悩んでいる転職希望者。東大卒で悪いことする人が多い印象なのは何故なのか長い間疑問に思っていたあなた。
【Q2】この本の弱みは?
終盤は子供がいないのであまり理解できた気がしません。申し訳ない。
【Q3】この本の強みは?
経営戦略の専門家が、経営戦略を人生に応用する方法を指南してくれる。通常の自己啓発本と一味違う内容なので、新しい切り口の教訓が得られる。またエリートが陥りがちな失敗にも警鐘を鳴らしている。教訓なあふれた一冊。
【著者・クレイトン・M・クリステンセンさんの気になる著書リスト】
【『イノベーション・オブ・ライフ ハーバード・ビジネススクールを巣立つ君たちへ』目次と読書メモ】
序講
第1講 羽があるからと言って
書店に行けば簡単に人生の問題を解決してくれそうな自己啓発本がたくさんあるがそんな簡単なものではない。
空を飛ぶにはどうする?羽を持てばいい?それは魅力的な回答に見えるがそれは違う。
きちんとした理論が必要なのだ。
理論には使える使えないがない。
過去に学ぶこともできるが過去はあくまでバックミラーに映るものだ。
それを見て車を前に向かって運転することはできない。
この本は相関ではなく、因果をもつ理論を伝える。
因果を見るためには例外を調べるべきだ。空を飛ぶには翼があればいい?ではコウモリは?ムササビは?飛行は翼と因果関係にないことがわかる。
◆第1部 幸せなキャリアを歩む
第2講 わたしたちを動かすもの
自分が本当に愛することを仕事に選びなさい、そうすればあなたは一生労働する必要がなくなる。
仕事に対する思いは「仕事が好き」と「嫌い」が一直線上にあるわけではなく、それぞれ同時に存在しうる。
衛生要因という、それが無いと状態が悪化するが、あったからといって健康が増進するわけでは無いという条件がある。
仕事にも衛生要因がある。問題の無い同僚、問題の無い上司、問題の無い労働時間、そして報酬。
そうなのだ、報酬は衛生要因に過ぎない。必要ではあるがあったからといって仕事が好きになるわけではない。
多くの人がそれを忘れて報酬を仕事を選ぶ第一条件に選んでしまっている。
ハーバードの卒業生も
奨学金を返すためなど様々理由で高い報酬を
条件に就職する。
そしてズルズルと仕事を続け、報酬は上がり、今更本当にやりたい仕事に転職しようとしても家族は生活水準が高くなっており、転職できない。そんな罠にハマるのだ。
!報酬は衛生要因だったのか、、、確かに高い報酬でも嫌な仕事が好きになるわけじゃないもんな。好きなのは報酬で目くらまし食らっているようなもんか!
第3講 計算と幸運のバランス
好きな仕事を見つけていて、その仕事に就こうとするのを「
意図的戦略」、好きな仕事が見つかってない、
若しくは就けず訪れた幸運を利用する「
創発的戦略」。企業経営と同様にそれらをバランスよく利用して方向性を決めなければならない。
アメリカに進出したホンダがいい例だ。ホンダは当初、大型バイクを売るべくアメリカに進出した。しかし、製品に問題があった点とハーレーを始めとするライバルがあったため、売れなかった。
ところが従業員が乗っていた小型バイクであるカブを売ってくれと打診され、当初は進出意図と違うため、断っていたがやがて方針を転換しカブを売り出した。
これが上手くいくには何が言えればいいのか?
不確実でおおきな要因から順番に並べていく。
!これがうまくいくには何が言えればいいのかは試してみたい。このブログが上手くいくには?!
第4講 口で言っているだけでは戦略にならない
経営も人生も毎日、毎日、その瞬間、瞬間に行う無数の選択によって成り立っている。
短期的な目標は長期的な目標を押しのけてしまうことが多い。
それは人生も経営も同じようなことが起こる。
経営陣が長期的な計画を進めるようにいくら述べても、社員の評価が1年ごと、2年ごとならば社員として正しい選択は短期的な目標を達成して評価を受けることだ。
経営陣は右の耳から長期目標を達成するように囁きながら、左の耳から短期目的を達成するようがなり立てているのだ。
個人に置いてもおなじことが言える。
昇進、高給、短期的な目標は常に魅力的で、できる人たちを誘う。
その結果もっと大事な家族、子供、自分の人生をかけて本当にやりたいことを後回しにしてしまうのだ。
本当に大切な目標を達成するには長期的な展望が必要な事が多い。
その結果、無数の選択は短期的な目標を選び、あなたの人生の大切なリソースはすぐに結果が出るということに振り分けられてしまうのだ。
!経営的観点から語られる人生がこんなに意義深いとは思わなかった。この本は素晴らしい。
確かに人生とは自分の人生の経営とも言えるわけだ!
◆第2部 幸せな関係を築く
第5講 時を刻み続ける時計
良い金、悪い金理論。
新規事業に投資する場合。
良い金は性急に利益を、成長はゆっくりでいいとする。
悪い金はその逆で、利益も出ていない事業を巨大化させるよう莫大な資本を突っ込んでしまう。
これは本業が頭打ちになった企業が慌てて新しい事業の柱を求めてよくやるパターンだ。
良い金はその後、ビジネスに筋道が立ったところで利益を求めず、成長を加速させるよう資金を投入する。
!アマゾンは利益を常に事業に突っ込んでいるわけだから、きっと常に育てる事業があるというわけですね。すごいなぁ。やはり経営のスピードが速いということもあるのだろうか?!
若いビジネスマンは子供が小さいうちは仕事に打ち込もう、子供がもうちょっと大きくなって話が通じるようになったら仕事を減らしてなんて考えがちだが、子供が小さいうちにたくさんの「会話のダンス」をして置かないとその後の成長に差が出る。
会話のダンスとは大人同士で話すときのように語りかけること。
〇〇しなさい。とか、はやく〇〇でない。
!うーん、僕は幼少の砌、言葉のダンスをたくさん受けたのだろうか?受けたとしたら、、、生みの母に感謝だね!
ビジネスに成功して家族を失う人は多い。
日陰が必要になることを見越して木を植えなければならない。
第6講 そのミルクシェイクは何のために雇ったのか?
あるファーストフード店がミルクシェイクを改良しようとしてアンケートをとって改良したが売り上げが伸びなかった。
逆に客はミルクシェイクで何を解決しようとしているのかを買った人に聞いた。
すると、長い車通勤で通勤中にゆっくりと味わい、昼ごはんまでお腹を持たせるためだった。シェイクのライバルはバナナやベーグルだったのだ。
イケアは世界的家具屋になったが真似しようという会社はいない。
イケアは顧客の困りごとを解決する方法を提供するのだ。
そして顧客はイケアのファンになる。
家族でもおなじことが言える。相手がどんなことを求めているのか理解しなければならない。自分がやりたいことではない。
相手が求めていることだ。
そしてパートナーに言えるのは自分がどれだけ相手に献身できるかも重要だ。
結婚相手は相手がどれだけ自分に貢献してくれるかだけでなく、自分が相手にどれだけ貢献したいかも重要なのだ。
献身すると人にはさらにそのものに愛着を持つ。
!母、弟との関係をみなおすべきだろうか?!
企業は、資源、プロセス、優先事項で成立している。
資源は資本など、プロセスは社内外のネットワークや資源をより価値の高いものに変える流れ、優先事項は方針のようなものだ。
デルはエイスースに部品の製造をアウトソースしていた。
やがて、資本の効率化という株式市場が重視する指標を上げるためにマザーボード、パソコンそのものの設計までアウトソースし、デルはデルというブランドを貸し出すだけの会社に成り下がった。
そしてエイスースは自社ブランドのパソコンを発表した。
これは人間、家族、子育てにも適応できる。
親は子供を学校に、キャンプに、講座にと、資源を増やすための機会を大量に与えるが、プロセスや優先事項(動機)などを与えることには熱心ではない。
やるなということではなくバランスなのだ。今の若年者の就職率が世界的に低いのはこの事が関係あるような気がする。
!ちょっと最後の部分は納得できない。まあ、影響がゼロだとは言わないが、!
第8講 経験の学校
マッコールの理論というのものがある。人を採用し何かをさせる際、似たような事をこなしてきたかで、判断するという事だ。
例えば新規事業を立ち上げるのにいくら履歴書が輝かしくても、既存企業を運営する事しかしていない人ではないのである。
実際に新規事業を立ち上げた事のある人を採用するべきなのである。
これは子育てにも言える。
子供に輝かしい実績を積ませる事が大切なのではなく、問題にぶつかって悩みのり越える、もしくはのり越えられず、困った事になるという事を学ばせなければ、子供は問題を解決できる力を得られない。
つまり、宿題をやっていないと泣きつかれても、宿題を手伝ってはいけない。
宿題をやってないという問題を徹夜で解決するか、翌日学校に行って、困った事になる事を学ばせなければならない。
子供のキャンプに親が全てお膳立てしては子供のためにならないのだ。
!人材採用の話は
中途採用に関してはとても意義深い内容だ。
でもまぁ、
そう考えると引きこもりだった
諸葛孔明は採用されませんけどねw
!
第9講 家庭内の見えざる手
企業の文化はそれでうまくいっている間は社員たちは監視がなくてもその文化に従って働く。
不正が見逃される文化ならば不正を働く。
ピクサーは作品を作り上げる中で、厳しい批評を良しとして、今まで成功している。
だから社員の誰もが製作過程で批評を遠慮しない。
だが、今は成功しているピクサーも、いつか環境が変わった時は、今度は失敗を繰り返して新しい文化を作り上げなければならないだろう。
これは家庭でも言える。時には意識的に、または無意識的に家庭には文化が形成される。
不正を許せばそれが家庭の文化になる。
子供たちは家を出てもその文化を持って社会と向き合うだろう。
!家庭内の文化に反発して全く逆になる事もあるだろう。余りに厳格ならば家を出ると放漫な生活を送ったり。まあ、逆になるかは親を好きかどうかにかかっているだろうが!
◆第3部 罪人にならない
第10講 この一度だけ
ブロックバスターは既存のシステムがあるために新しいNetflixに敗れた。
ポリシーを100%守る方が98%守るよりも簡単な事だ。なぜなら常に判断する必要がないからだ。
一度、例外を作ってしまうとそこから崩壊する。
不正は次の不正をやりやすくする。
心理的にも抵抗が下がるのだ。
!ブロックバスターの選択は無理もない。自分で自分の首を絞める事はできないだろう。つまり、新技術の誕生で既存企業は新興企業に潰される可能性がある。他の可能性がないか考えてみよう!
終講
大事なことは自分がどうありたいのかなという自画像、方向性、モチベーション。
そしてその為に努力を捧げる献身。
そしてそれを評価するものさし。
お金でなく。
謝辞
訳者あとがき
95点
読了まで3時間