『未来の年表 人口減少日本でこれから起きること (講談社現代新書)』書評・目次・感想・評価

【『未来の年表 人口減少日本でこれから起きること (講談社現代新書)』目次と読書メモ】

はじめに
 
西暦3000年にはなんと2,000人にまで減ると言うのであるp9
 
^_^ ちょっと初っ端から読む気を失わせる内容だ。センセーショナルな空論データを用いて読者を煽る。とりあえず著者はそういう人だと覚えておこう。
第一に人口減少の流れが、1000年近く続くと言う設定がもはや考えるには値しない。グラフの向きが下向きに変わったからといってそれが永遠に続くと言う設定で物事を考えるとは株でも為替でも齧ったことがある人ならどんなに馬鹿げたことがわかるだろう。
その間にバイオテクノロジーが進化して女性が出産をせずに子供を作れるようになって人口が増えるかもしれないし、大地そこまで人類が生き延びているかどうかすらわからない。
何よりまず高齢者の定義を揃えなくてはいけないのではないか?60歳、65歳、70歳?データによっては出産可能年齢に49歳までカウントされていたり、もうなんだか。サイエンスなき政策はあってはならないのではないのか?
 
^_^ この著者の称えるべき点は、出生率の低下、少子高齢化は止められないという前提で物事を考えている点だ。女性に子供を生ませるために社会を作り変えるではなく少子高齢化を迎えるために国家の形を変えると考えている点だ。
国民はカスタマー、国家はサービス提供者だ。変わるべきはカスタマーではない。サービス提供者である国家だ。
 
第一部 人口減少カレンダー
 
患者は何も高齢者とは限らない。働き盛りに発症する人もいる。2009年の労働省研究班の調査では、65歳未満の「若年生認知症」患者は、約37,800人だ。増えるのは50代後半からだが、40代以下の患者もいる。もはや「国民病」といえよう。p80
 
^_^ ここに著者の欺瞞がある。若年生認知症少子高齢化とは関係のない事象でここでこれを持ち出すのは読者を脅す材料であれば何でも持ち出すという著者のやり方を表している。こういうやり方が随所に見られる。編集者は何をやっているのだろう。
 
^_^ 認知症患者が増加することと同じ紙幅を割いて、火葬場不足にまで言及しているのは笑う。問題の大きさが全く違うのに。こんな人が日本の有識者会議に参加していること自体が問題だろう
 
こういう非常時の日本をまるで試すが如く、周辺国から戦闘機が飛来し、日本列島1周したことを覚えている人は少なくないだろう。p144
 
^_^ このようなまるで自衛隊がなすすべもなく領空侵犯されたような書き方は実際に防衛にあたった自衛隊に対しても失礼だと思う。航空自衛隊はきちんと対応し、領空侵犯させなかった。本当にこの著者は読者の恐怖を、煽るためなら何でもやるなぁ。
 
第二部 日本を救う10の処方箋ー次世代のために、いま取り組むこと
 
■小話
2005年度版「国民生活白書」によれば、子供1人にかかる費用は、第二次は第一子の80%、第3次は60%程度で済むと言う。p192
 
^_^ 面白い提言がいくつかあった。最後の自分が消費した社会保障費死亡時の返納制度は、相続税増税とあまり変わらないのではないかとも思った。そう考えれば、相続税の大幅な増税でもっとシンプルに少子高齢化問題を解決に導けるのではないだろうか?
 
おわりに 未来を担う君たちへ
 
^_^ この文はちょっと気持ち悪いと思った。なんというか自分に酔っている。国男に対して先に気づき、真摯に若者と向き合っている自分に酔っている。実際に問題が解決するかどうかではなく、若者が自分の提言に感動し、今まで大人は本当のことを言ってくれなかったあなたが最初に本当のことを言ってくれた人だ。と言われることに酔っているとしか思えない。
こんな文章を見せられて、自分が若者だったらどう思うだろう?僕なら外国語を一生懸命やってこの国を捨てるだろう。僕は団塊ジュニア世代だ。その世代がこの本を書くような老人からも、若者たちからも厄介者扱いされることに悔しくも悲しい気持ちになる。団塊ジュニアと言う存在がいるのではない。一人ひとりの人間がいるのだ。僕はテクノロジーを信じている。介護問題も、医療問題も、食料問題も、そして著者が心配する血液不足の問題だってテクノロジーが解決してくれると信じている。日本が課題先進国としてテクノロジーでこれらの問題を解決し、後から続く世界中の国々にそのテクノロジを輸出し、解決策を提示する。そんな未来をぼくは信じている。