『意識は傍観者である: 脳の知られざる営み (ハヤカワ・ポピュラーサイエンス)』書評・目次・感想・評価
意識は傍観者である: 脳の知られざる営み (ハヤカワ・ポピュラーサイエンス)
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デイヴィッド・イーグルマン 早川書房 2012-04-06
100点
読了後、すぐに読み直したくなるほどの傑作。
読了まで5時間
【『意識は傍観者である: 脳の知られざる営み』目次と読書メモ】
第一章 僕の頭の中に誰かがいる、でもそれは僕じゃない
地球が宇宙の中心でないように、意識も自分自身の中心ではない。
^_^ 学説的には知っていたけど、実際に言われてみると、 ちょっと震える。
第二章 五感の証言 経験とは本当はどんな風なのか
第二章 五感の証言 経験とは本当はどんな風なのか
われわれは五感で入ってくる情報を真実だと信じているが、 多くの場合、脳によって処理されたものに過ぎない。
感覚で感じているものはのが参考にする程度の重要度しかない。
映像処理を皮膚に伝えると、盲目の人も視界を得ることができる。 必ずしも視覚が必要なわけではないのだ。
外部からの刺激は、低次から高次へと伝わるだけでなく、 高次からまた低次へとフィードバックされる。
頭の中で想像した事は、高次から低次と伝わるので、 実際に起こった感覚とほぼ変わらない。
第3章 脳と心の隙間に注意
「悪い評判とは評判がないことだけ」。あるいは「 名前を正しく綴ってくれさえすれば、 新聞にどう書かれても構わない」。ページ92
嘘であろうが本当であろうが繰り返し聞き続ければ人々はそれを真 実だと判断する可能性が高まるこれを真実性錯覚効果と言う。
コインを投げるのだ。 まずどちらの意見が面でどちらが裏かを指定してから、 コインを投げあげる。重要なのは、 コインが落ちた後の直感を評価することだ。 どうするべきかコインに「教えられて」、 なんとなく安心感を覚えたなら、 それが彼女にとって正しい選択だ。そうでなく、 コイン投げで決断を下すのはバカバカしいと思ったなら、 それで彼女はもう一つの選択肢を選ぶことになる。ページ96
^_^ 無意識を利用するシステムとして、 もっと洗練された方法は無いだろうか?例えば、株式投資で、 前場のチャートを見て後場の動きを読めたりはしないだろうか? 何十枚も、毎日チャートを見て会っていたらキャンディー、 間違っていたら電気刺激など続けているうちに、 前場のチャートから後場の動きを読めるようになったりしないだろ うか?
意識は長期計画を立案する会社のCEOであり、 日常的な業務のほとんどは脳のアクセスできない部分がすべてこな している。
巨大な優良企業を引き継いだCEOについて考えよう。
彼の仕事は会社の技術が下支えできる範囲内の方針で、 会社のビジョンを定め、長期計画を立てることである。
第4章 考えられる考えの種類
^_^ 難しい論理的な問題も、 生活に根ざした実例を持った文章題にすると、 途端に理解する解きやすくなる。これはやはり進化上、 論理的な問題を解く必要性がなかったからだろう。 数学者はおそらく特別なのだ。
男性が色白の女性を好むのは、病気の兆候を発見しやすいから、 誤った選択をしにくいためと思われる。
男が浮気性かどうかはバソプレシン受容体次第?
意識のあるあなたは脳内で1番小さな端役であることだ。
第5章 脳はライバルからなるチーム
名言
酒が入ると秘密が出て行く
名言
人を露呈するものは三つある。すなわち酒盃、財布、そして激怒だ
紹介書籍「心の社会」
- 作者: Marvin Minsky,マーヴィン・ミンスキー,安西祐一郎
- 出版社/メーカー: 産業図書
- 発売日: 1990/07/01
- メディア: 単行本
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病気の治療で脳の右半分もしくは左半分を切除しても子供が8歳位 になる前であればその子は普通に元気に暮らせる。 右脳と左脳はほぼ同一のコピーなのだ。
脳の中では、理性と感情、右脳と左脳、
本能と本能、本能と倫理、現在と未来、 扁桃体と海馬など様々なシステムが競合している。
記憶に関しても、 衝撃的な出来事は扁桃体にも海馬にも保存されている。
脳は様々なサブシステムが競合し、 協力し合うことによって支えられ働いている。
著者は人工知能開発の行き詰まりは1つの答えが出てしまうとそれ 以上の学習研究を辞めてしまうことにあると考えている。
脳の損傷が行動や近くに奇妙な変化をもたらす変わった臨床例10 につき、 脳の1部が損傷受けても臨床的兆候が認められない症例は何百とあ るのだ。ページ174
つまり解決策を見出しても解決策を探すことをやめてはいけない。
第6章 非難に値するかどうかを問うことが、なぜ的外れなのか
1部の脳腫瘍で妻と母を殺し、 テキサスタワーの上から無差別殺人を行った男がいる。
素敵な考えだが、間違っている。
あなたがどう育つかには、 妊娠中の母親による薬物乱用、母体ストレス、低出生体重など、 多くの「病原体」(科学的なものと行動的なもの両方) が影響する可能性がある。ページ211
自分が犯罪者の立場になったところを想像して、「いや、 私ならあんな事はしなかっただろう」 と断定するのは問題があるーなぜなら、子宮内コカイン、 鉛の毒作用、あるいは身体的虐待を、 あなたは受けていないが犯罪者が受けているとしたら、 あなたと彼を直接比べることができないからだ。
それでも犯罪を犯す可能性を遺伝子や脳の問題、 育ちなどに求めることに納得いかない人にはこのデータを捧げる。
もしあなたがこの遺伝子を持っていたら持っていない人に比べて、 加重暴行8倍、殺人10倍、強盗13倍、 強姦44倍も犯罪を犯す可能性が高いのだ。
その遺伝子とはY遺伝子である。 この点を見ても誰もが同じ条件を持っているわけでは無い事は明白 である。
もしあなたがこの遺伝子を持っていたら持っていない人に比べて、
その遺伝子とはY遺伝子である。
※Y遺伝子は男性のみがもつ男性を男性たらしめる遺伝子です。
今から1, 000年後にはきっと稚拙に見えることだろう。
小話
我々には自由意志が存在するかどうか疑問である。
社会にとって危険な存在であることには変わりはないので、 隔離する必要はあるだろう。
しかし罰を与える事はその行為の修正が可能ではない限り意味がな い。
当然、遺族や被害者は刑罰を望むだろう。
しかし罰を与える事はその行為の修正が可能ではない限り意味がな
当然、遺族や被害者は刑罰を望むだろう。
しかし、 科学の進歩が追いついていないだけで彼らは脳における障害者の可 能性が大いにある。
現在、 脳に障害を持つ人の犯罪に関してはその病状において配慮されてい る。
犯罪を起こすこと自体が、ある意味、 脳に障害を持っている証拠でもある。
犯罪に関しては刑罰ではなく、治療、 訓練で対応するのが最適であると考える。
また出所等に関しては、 科学的データに基づく再犯率をもとに決定すべきである。
^_^ ずっと漠然と考えてきたことが、書かれていて非常に驚いた。 センシティブな問題ではあるが、人は生まれや、 育ちを選ぶことができない。親を選ぶこともできない。 そして犯罪者の多くが、障害を含む、生まれ、育ち、 親に問題を抱えている。 犯罪者が犯罪者になる要因としてそれらが存在することに意義を唱 えるものはいないだろう。 彼らは生まれと環境によってそのような犯罪に至ったと考えること もできる。 そのような彼らをすべての責任が彼らにあると考えて罰するべきだ ろうか。罰するべきでない。僕はそう考えていた。しかし、 社会にとって彼らが危険なことには変わりは無い。したがって、 社会全体のために彼らを隔離しておく。罰するためでなく、 社会の安全を確保するために、 社会全体のために彼らには申し訳ないが彼らの自由には犠牲になっ てもらうという考えが必要だと考えていた。
そのため、彼らにはそれなりの待遇が与えられるべきだ。
今回この本を読んで、 この程度の罪ならばこの程度の服役ではなく、 治療更生にかかる時間の分だけ、社会と隔離しておくと言う、 より合理的な判断が司法制度には必要なのではないかと考える。 つまりは軽度の犯罪でも治療更生が不可能であれば無期限に収容さ れると言うことである。逆に言えば現在の制度では、 ほぼ確実に再犯する人も、 罪の分の服役さえ済ませば出所していると言うことで社会にとって は危険極まりない制度が、存続していると言うことだ。
いずれ司法制度が再犯率を元に、 治療更生を重視したシステムになることを望む。
第7章 君主制後の世界
紹介書籍「人類の絶滅」
脳を理解することで、 より賢明な量刑制度を構築できる可能性がある。