『世にも奇妙な人体実験の歴史』書評・目次・感想・評価

【『世にも奇妙な人体実験の歴史』目次と読書メモ】


<<用例>>
太字 もくじの写し
要約 内容の要約(ただし恣意的です)
引用 気になった部分をメモとして引用しています(最後に引用ページを記載)
名言 気になった名言をピックアップしてメモ
小話 後で人に話したくなるような内容をメモ
^_^  一読者としての意見・感想(笑顔ですが読者の感情ではありません)

はじめに マッド・サイエンティストの世界へようこそ
 
名言
生半可な知識が危険だと言うなら、危険でないほど大量の知識を持った人間がどこにいるのだ。(トーマス・ハクスリー)ページ10
 
第1章 淋病と梅毒の両方にかかってしまった医師ー性病
人体解剖の草分けである医師ジョン・ハンターは、性病研究にも辣腕を発揮。林業のメカニズム解明のため、患者の膿を自分の性器に付着させたところ……
 
^_^ 過去において医学は貧者を実験台にして、富者の治療に生かすという搾取構造があった。現在はないとは言えないが随分マシになったのだろう。他の本でも読んだがこのジョン・ハンター氏はマッドサイエンティストというより、偉大な科学者であり、医師であったと思う。何しろ、誰にとってもいちばん大切な自分を実験台にしている点で、貧民を実験台にするばかりの医師より、平等だし、新しい地平を切り開いた偉人だと思う。
 
第2章 実験学のつもりが中毒患者にー麻酔
毒にんじん、笑気ガス、エーテルクロロホルム、コカイン、モルヒネ……麻酔薬の開発者たちは、必ず自分で効果を試し、そして中毒者になっていった。
 
小話
コカ・コーラは鬱とヒステリーの治療薬として販売されていた。コカ・コーラがコカインのおかげで消費量伸ばした事は間違いない。ページ45
 
小話
第一次大戦中、ロンドンの高級百貨店ハロッズは、「海外の友人へのギフトボックス」を売り出した。その中には、注射器と一緒にモルヒネとヒロインの瓶が入っていた。ページ45
 
小話
イギリスで流通している紙幣のおよそ80%はコカインまたはヘロインに汚染されている。ロンドンでは、その割合は99%にまで及ぶ。ドラッグに手を染めていない善良な市民を守るため、毎年、1500万ポンド分の紙幣が廃棄処分となる。ページ47  
 
^_^ フロイトがヤク中であったことを思えば、未だにヤク中の医者の妄想をありがたがっている人が大勢いるのはどうかと思うが、一方で清原の打撃理論に聞く価値がないかと言えばあるわけで、ヤク中かどうかはともかく聞く側の冷静な判断が求められるのは間違いないだろう。
 
第3章 インチキ薬から夢の新薬まで-薬
どんな化学物質が薬になるかは、人体実験をしてみないとわからない。英国の医者フィールドは、ダイナマイトの原料をあえてなめてみた。すると……  
 
現在、インターネットの普及に伴って自己診断が再び流行し、多くの人が医師の診断を受けずに自己判断で、偽物の可能性すらある無認可の薬を購入している。インチキ薬業界は未だに大繁盛しているのである。イギリス人は45億ポンドを「大開企業」に費やしている。アメリカ人は、正規の医師の診断を受けるよりも、有効性の事象もなく何の規制も受けていない嵐月療法に頼ることの方が多い。糖尿病や顔を拭く万病に効くと信じて、大勢の人がいまだに尿を飲んでいる。この分だと、「小便預言者」にも復活のチャンスがあるかもしれない。ページ59
 
^_^ 今の医療にも問題がないわけではないがだからといってなんの規制もない怪しい治療法に大金をつぎ込む愚は後を絶たない。はっきりいってどちらがマシなのかという部分もある。とりあえず国民健康保険も効くし、通常の医療を受けるべきだろう。
 
第4章 メインディッシュは野獣の死骸ー食物
英国紳士フランク・バックグランドは動物好きだった。ただし、食べるために。氷、森ふくろう、ジャッカル、アナグマそのお味はいかに?
 
名言
窮乏と贅沢を代わる代わる味わうと言うのは、たいていの人間の性分に合っている。(フランシス・ゴルドン)ページ80
 
引用
有名な生物学者のジャック・ホールデンは生物学者として上をどう思われますかと尋ねられ、「神は法外に虫好きだったんだなと思う」と、答えた。
 
^_^ 確かに多様性や繁栄度を見ても人間より虫の愛され方は半端ない。
 
昆虫の中には70%もタンパク質が含まれているものもあり、グラムあたりのタンパク質の量は肉よりも多く、脂肪分は少ない。しかもビタミンやミネラルも豊富である。ただ栄養豊富なのは認めるが食べるとなると昆虫はどうしても見た目が悪い。これは神様の営業戦略の深刻な失敗である。ページ82
 
^_^ 笑った。でも昆虫食って病気を誘発しなかったっけ?
 
小話
ほとんどのピザやソーセージはポテトチップスにはシステインという添加物が含まれているが、このシステインの原料は人毛である。ページ84
 
穀類の多くには昆虫編が混入しており、年に1kgほどの昆虫を食べてしまっている。
 
第5章 サナダムシを飲まされた死刑囚ー寄生虫
ドイツの医師キュッヘンマイスターは、寄生虫の感染経路を解明した。その方法は、死刑囚に寄生虫を飲ませ、ひたすら解剖すると言うものだった。
 
小話
帰省中によって体重減少が帰国することが現在ではよく知られた事実だが、それは栄養分を寄生虫に取られるからではない。サイトカインなどの分泌物が脳に作用して食欲を抑えるのである。ページ91
 
第6章 伝染病患者の黒ゲロを飲んでみたらー病原菌
これらの研究でここに挑んだペッテンコーファーは、菌入りの水を飲みほした。また黄熱病の研究者たちは患者のゲロを集めて煮詰め、自ら飲んでみた。
 
^_^ 黄熱病はウイルスが病原なので、必死に研究した人々が報われなかったのは悲しい歴史だ。結局テクノロジーが追いつかなければ解明できなかったのだ。
一方で、胃潰瘍の原因がピロリ菌であることを学会が認めるまで長い年月が掛かったことは、学会の怠慢であったと言える。
医学会に限らず、古い権威がイノベーションを阻害するのだ。
今、権威に疎外されている科学的事実はなんだろうか?
 
第7章 炭疽菌をばら撒いた研究者ー未知の病気
生物兵器の研究は20世紀初頭から軍部でひそかにおこなわれていた。だが、細菌漏れによるアウトブレイクなど、事故や事件も多発している。
 
^_^ 政府は嘘をつく。以上。
 
第8章 人生は短く、放射能は長いー電磁波とX線
電磁気の発見は、怪しげな雲街を起こした。放射線もそうだった。だが犠牲者の数は電磁気とは比較にならないほど多かった。
 
^_^ キュリー一家の科学へ捧げる情熱には頭が下がるばかり。それにしても未だに電磁波治療椅子とか、ラドン温泉とか、ラジウム温泉とかがありがたがられていると思うと悲しい気持ちになる。
 
第9章 偏食は命取り-ビタミン
食物に含まれている「何か」。それが不足すると病気になってしまう「何か」。その正体を突き止めるため、孤児院の子供達が実験台として選ばれた。
 
ビタミンCを体内合成できない動物は人間やモルモットなど数種しかいない。実験動物であるモルモットがビタミンCを体内合成できないのは人類にとって幸運だった。
 
^_^ ビタミンCに葉酸などなど、とにかく多様な食べ物を食べろと医学はいっているのだろう。
 
第10章 ヒルの吸血量は戦争で流れた血よりも多いー血液
「悪い血」をヒルに吸わせるインチキ医術、羊の血を人体に輸血する無茶苦茶。血液型の判別と安全な輸血の確立まで、人類はかくも多くの血を流してきた。
 
最近、アメリカ麻酔医協会はこれと同じようなアドバイスを医師向けに発表した。手術に伴って輸血を受けた患者は1ヵ月以内に感染症や卒中や心臓発作や腎臓障害に見舞われる危険がはるかに高くなると言う研究結果が出ていると言う。ページ184
 
^_^ なるべくなら輸血なしで手術を受けられるのがベストってことですね。
 
^_^ 血液にあれを入れたりこれを入れたり、自分なら絶対やだと思うことを自分で実験するお医者さんは尊敬します。他人を騙して実行する奴は、、、外道ですね。
 
第11章 自分の心臓にカテーテルを通した医師ー心臓
犬の心臓にカテーテルを入れたら死んでしまったが、人間の場合はどうか?ドイツの外科医フォルスマンは、まず自分で試すと言う強心臓の持ち主だった。
 
^_^ 医学会というのはどこでも閉鎖的で、権威主義的なんだなぁ。
 
第12章 爆発に身をさらし続けた博士ー爆弾と疥癬
水中で爆弾が破裂した場合、なぜ空気中よりも死者が多いのか?こうした謎を解くため、キャメロン・ライト博士は半死半生になっても被爆し続けた。
 
第13章 ナチスドイツと戦った科学者たちー毒ガスと潜水艦
ドイツ軍の毒ガス攻撃から身を守るにはどうすればいいのか?科学者たちは自ら毒ガス中毒になりながら、ガスマスクを開発した。
 
第14章 プランクトンで命をつないだ漂流者ー漂流
海難者が生き延びるにはどうしたらいいのか?海水を飲んでもいいのか?医師ボンバールは「異端者号」と名付けた船に乗り込み、漂流実験を開始した。
 
^_^ プランクトンの摂取で壊血病が回避できるのかと、漂流したら少しづつ海水を飲むというのは正解なのだろうか?
 
第15章 ジョーズに魅せられた男たちーサメ
獰猛な人食い鮫を追い求め、世界各地の海を渡り歩いたハンス・ ハス。腕に食いつかれ、ズタズタにされてもなお、彼はサメの研究を止めなかった。
 
第16章 超高圧へ挑戦し続けた潜水夫ー深海
一瞬にしてものみな全てが潰される深海の世界。そこに挑戦して話しに行く冒険者たち……水圧を乗り越えた先には、深海生物のパラダイスがあった。
 
^_^ 条件が揃わないからと中止を宣言できなくするマスコミのプレッシャー、しかし大衆支持なくしては冒険に予算をつけるのは難しい。判断は難しく、ある意味大衆とマスコミが冒険家を死に追いやった例は数多いのだろうな。
 
第17章 鳥よりも高く、早く飛べー成層圏と超音速
超音速戦闘機の事故からパイロットを脱出させるには?数々の事件の末にたどりついた答えは、今日我々も馴染み深い「シートベルト」だった。
 
アメリカの自動車業界は変革に抵抗した。これらの優先事項は格好の良さであって安全性ではなかった。ゼネラルモーターズ社の会長は、我が社の経営は技術者ではなくセールスマンで持っているのだ、と胸を張った。シートベルトが初めて一般車に導入された時、「シートベルトがドライバーに与えるダメージは、衝突によるそれよりも大きい」と主張する人々がいた。
 
^_^ 自動車業界がいかに安全性を軽視しているかを表すエピソードですね。今も、100キロ以上出せない様にリミットされた車が一台も販売されたいないことに自動車会社はなんと弁明するのでしょうか?
 
あとがき 究極の自己犠牲精神を持った科学者たちに感謝
 
 

【著者・トレヴァー・ノートン さんの気になる著書リスト】

 

ダイバー列伝―海底の英雄たち

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