『雑食動物のジレンマ 下──ある4つの食事の自然史』書評・目次・感想・評価

100点

44文字×18行×265ページ=209,880文字
図表や改行分を計算に入れて3/4を掛けると=157,410文字
日本人の平均的読書スピードを毎分600文字として262分
平均的な読者で
読了まで4時間22分程度

 
 良い本の条件を一つあげるとしたら、読者を考えさせるということかも知れない。
 この本は雑食動物である現代人が食べるという事にどう向き合うべきかを考えさせてくれる。
 読者を常に説得し、著者の考えを植え付けるようなスタイルの本ではなく、この本では著者と一緒に体験し、悩む。
 工業製品のように安価に生産されるコーンの山とそこから生産されるファーストフード、循環と環境に配慮した家族経営の牧場、現代においては趣味の域となった狩猟と採集。
 どんなバランスを取って、どんなチョイスをするべきか。
 答えはすぐには出ないけれど、読めば、食べるということに自覚的になれる。そんな価値ある一冊です。(上下巻だけど)

【『雑食動物のジレンマ 下──ある4つの食事の自然史』目次と読書メモ】


<<用例>>
太字 もくじの写し
要約 内容の要約(ただし恣意的です)
引用 気になった部分をメモとして引用しています(最後に引用ページを記載)
名言 気になった名言をピックアップしてメモ
小話 後で人に話したくなるような内容をメモ
^_^  一読者としての意見・感想(笑顔ですが読者の感情ではありません)

第12章 自家処理ーガラス張りの処理場
 
^_^ こうして食品が加工される過程について考えるとハイテクの時代であるから、常にその過程を見たい人に見せておくということが大事なのではないだろうか?
そうすればマクドナルドの緑色肉ナゲット事件のようなことは起きなかっただろうし。
とにかく食品の製造過程をネットで生で公開し続ける。その結果、食品に対する信頼性が増し、それができないような企業は淘汰される。
どうでしょう?
 
第13章 市場ーバーコードのない世界から
 
第14章 食事ー牧草育ち
 
第三部 森林ー私の食物連鎖
第15章 狩猟採集者
 
引用
平均的な終了採集民は狩猟採集に1週間27時間以上かけなかったと人類学者は推計しており、農耕民よりはるかに強靭で長生きだったと言う。ページ78
 
^_^ これが事実だとしたら人類はこの労働時間でもっとも長い期間を生き抜いてきたわけだ。我々現代人もそろそろその程度でやっていきましょう。
 
紹介書籍「野生のうたが聞こえる」

 

野生のうたが聞こえる (講談社学術文庫)

野生のうたが聞こえる (講談社学術文庫)

 

 

紹介書籍「ウォールデン森の生活」

 

ウォールデン 森の生活 上 (小学館文庫)

ウォールデン 森の生活 上 (小学館文庫)

 
ウォールデン 森の生活 下 (小学館文庫)

ウォールデン 森の生活 下 (小学館文庫)

 

 

紹介映画「ウッディ・アレンの愛と死」

 

愛と死 [VHS]

愛と死 [VHS]

 

第16章 雑食動物のジレンマ

 
引用
ネズミは新しい食べ物(食べ物だと推定して)をほんのわずかかじってみてからしばらく待つ。そして腹が痛くなれば、それは30分前に食べた何かが原因なのだと関連付けられる程度に、因果関係について明らかに最低限の理解力を持っている(社会学者の言う支援学習だ)。ページ90
 
^_^ 同じ雑食動物であるネズミがこのような戦略をとるのは興味深い。我々人類も同じ方法をとるべきかw
 
 
紹介書籍「美味礼讃」

 

美味礼讃 (上) (岩波文庫 赤 524-1)

美味礼讃 (上) (岩波文庫 赤 524-1)

 
美味礼讃 下 (岩波文庫 赤 524-2)

美味礼讃 下 (岩波文庫 赤 524-2)

 

 

紹介書籍「飢えたる魂」

 

飢えたる魂―食の哲学 (りぶらりあ選書)

飢えたる魂―食の哲学 (りぶらりあ選書)

 

 

紹介書籍「資本主義の文化的矛盾」

 

資本主義の文化的矛盾 上 (講談社学術文庫 84)

資本主義の文化的矛盾 上 (講談社学術文庫 84)

 
資本主義の文化的矛盾 中 (講談社学術文庫 85)

資本主義の文化的矛盾 中 (講談社学術文庫 85)

 
資本主義の文化的矛盾 下 (講談社学術文庫 86)

資本主義の文化的矛盾 下 (講談社学術文庫 86)

 

 

引用
資本主義は利益を第一に追求することから、様々な文化的支柱を蝕む傾向があるページ109
 
^_^ この点を鑑みてもリバタリアンの言う市場に任せておけばすべて問題ないと言うスタンスは誤りだとわかる。だいたい、何かが万能であるという考えは、100%間違いだと考えていいだろう。答えは常にそんなに単純ではない。
 
^_^ アメリカが伝統的な食文化を持たないため、インチキ臭いダイエットや、ファーストフード、インスタント食品などに食を蹂躙されやすいと言うのは納得いく話だ。
19世紀頃からインチキ健康食事法があって、未だに新しいものが出てきているのには悲しい気分になる。
日本は伝統的食文化を持つのでまだマシだが、何でも生で食べた方がいいだとか、炭水化物は全て毒だとか、馬鹿げた食生活が侵食しつつある。
何でもアメリカの方を見て真似ればいいというものではない。
 
第17章 動物を食べることの倫理
 
紹介書籍「動物の解放」

 

動物の解放 改訂版

動物の解放 改訂版

 

 

個人的な食の制限は全て悪いマナーだと考える、フランス人の意見に賛成だ ページ124
 
^_^ これは暴論ではあるが、本音のところそう思っている人は多いかも知れない。
 
紹介書籍「心はどこにあるのか」

 

心はどこにあるのか (ちくま学芸文庫)

心はどこにあるのか (ちくま学芸文庫)

 

 

自然が人間の社会的行為の指針にならないのなら、人間の倫理が自然でよく起きるべきことの指針になると考えるのは、人間中心的な考え方なのではないか。ページ140
 
^_^ 食って食われての自然界の弱肉強食の倫理は人間界の倫理ではない一方で我々人間界の倫理である個人主義を自然界に持ち込むのは傲慢ではないかということだ。
 
引用
動物の権利と言うイデオロギーがいかに偏狭で都会特有のものであるかがわかる。そのようなイデオロギーが栄えるのは、人が自然界と接触を失った世界だけで、その世界は、動物はもはや脅威ではなく(比較的最近の傾向だ)、自然をつつがなく支配できるような場所だ。「普通の生活では、人間と人間以外の動物の利益が深刻に衝突する事は無い」とシンガーは書いている。それは、明らかに都会版の普通の生活だ。農家や、園芸を行う者にはわからないような。ページ140
 
^_^ ネットでもよくあることだが、当事者の気持ちを代弁するお節介者が現れた時、事態はめんどくさい方向に流れる。声を上げない当事者の代わりに(自分の頭の中で作り上げた)正義の声をあげて気持ちよくなりたい人々だ。そして、大抵そんな人は当事者から最も離れた場所にいる。人と動物の権利の問題を考えるならば、農家や自然保護官など、人と動物が接触する現場にいる人間の意見を最大限に尊重すべきだ少なくともカラスしか動物のいない都会で理論をこねくり回している連中の意見よりよほど価値がある。
 
第18章 狩猟ー肉
 
紹介書籍「狩猟の哲学」

 

狩猟の哲学

狩猟の哲学

 

 

引用
物事がどうあるべきか執着する態度は、それが現実について考慮しつくされた結果であるときにのみ、初めて尊敬に値する ページ188
 
^_^ この言葉は重い。自分も含めて人は現実を見ずにこうあるべきだ、あああるべきだと気軽に断定し、さらに恥ずべきことにそんな自分の意見に執着する。
 
第19章 採集ーキノコ
 
紹介書籍「神々の糧(ドラッグ)ー太古の知恵の木を求めて」

 

神々の糧(ドラッグ)―太古の知恵の木を求めて

神々の糧(ドラッグ)―太古の知恵の木を求めて

 

 

第20章 完璧な食事
 
紹介書籍「マギーキッチンサイエンスー食材から食卓まで」

 

マギー キッチンサイエンス -食材から食卓まで-

マギー キッチンサイエンス -食材から食卓まで-

 

 

謝辞
 
訳者あとがき
 
紹介映画「キング・コーン」

 

キング・コーン [DVD]

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紹介書籍「ヘルシーな加工食品はかなりヤバい」

 

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