2章 考え方編15 世の中は弱肉強食なんて嘘っぱち
「自然界と同様に、人間の社会も弱肉強食だから強くなければならない」
そんな、ありがたそうで実はちっともありがたくないアドバイスをくれる人生の先輩があなたの周りにもいませんか?
そんなのは嘘っぱちです。本当に世の中が弱肉強食ならその先輩もとっくに食われて肉になっているはずですから。
冗談はさておき、実際は自然界も、人間社会も、弱肉強食ではなくて『適者生存』。
生存競争において、ある環境に最も適した生物が生存し得るという考え。 〔 H =スペンサーによって提唱され、ダーウィンが「種の起原」の第四版以降の「生存闘争」の章中に用いた語〕(大辞林より)
その環境に適応したものが生き残るという理屈です。つまりは環境に適応していればライオンやトラじゃなくても、カメでも、ウサギでも、ナマケモノでも、生きていけるということです。
誰もがトラやライオンを目指す必要なんてないのです。
強くても環境に適さなければ滅びます。巨大な牙を持ったサーベルタイガーは絶滅しましたし、トラは絶滅危惧種で、現在は世界でも4000頭しかいません。
さらに言えば進化をする必要だってないのかもしれません。最も原始的な生物であるアメーバだって適者生存の理論に則って、太古の時代から生き続けています。
人間社会においても同じです。人間社会で確実に強者であったカルロス・ゴーンも今では塀の向こう側です。
彼と彼の行為が日本の社会にいつの間にか、適応しなくなっていたことに彼自身、気づくことができませんでした。
一方で人間社会は大きく広がり、さまざまな人が生きられる環境が生まれてきました。
狩猟社会では狩りが上手な人だけが生き残りましたが、農耕社会になって辛抱強く畑を耕す人も生き残るようになり、社会が形成されて、面白い話をするひとや、美しいダンスをするひと、などなど、色々な環境が生まれて、色々な人々が生きていけるようになりました。
現代は世界に70億人の人間が生きています。人間は他の生き物と違って自分で生きる環境を選ぶことができます。
あなたが私同様に人間界のナマケモノだったり、進歩のないアメーバだとしても、きっと生きていける環境があるはずです。
世間というものは油断をするとすぐにトラやライオンになるようにと私たちを追い立てます。
人間社会のトラやライオンになれる人の数はごく限られている上に、トラやライオンになったからと言って幸福になれるとは限らないというのに。
なぜでしょう?それは単純にわかりやすいからです。人間界のトラやライオンになれば、尊敬される、お金か儲かるなど、わかりやすい結果がもたらされます。
世の中ではしばしば、事実よりも、わかりやすさが、優先されます。
例えば、人が健康になるには様々な要因が絡み合っていて決して単純ではありませんが、ふくらはぎを揉めば健康になれるというような本が爆発的に売れたりします。
わかりやすさに騙されないでください。
もう一度言いますが、人間社会は大きく広がって、どんな人でも自分が生きるのに最適な環境がどこかにあるはずです。
特に学生や生徒さんは限られた世界に生きているので、学校での生活に行き詰まると「世の中には自分が生きていける場所なんてない」と思い込んでしまうことが、あるかもしれませんが、学校なんて無限に広がる人間社会のごくごく一部です。
「学校よりも社会の方がずっと厳しい、学校でやっていけない奴が、社会でやっていける訳がない」なんて言う先生もいるかも知れませんが、それも嘘っぱちです。
先生は学校という狭い社会に適応するタイプの人で、学業が終わっても、学校にとどまっているようなタイプの人ですから、学校でのやり方の延長で、どんな社会でも通用すると思い込んでいるだけです。
何度でも言います。学校がダメでも、学校の外にあなたが生きる世界があります。あなたが人間界のナマケモノでも、アメーバでも。
新年度が始まるにあたって、ちょっと説教臭くなりましたが、新しい学生さん。そして新しい社会人の皆さんに、幸多かれ。
月額65,000円の国民年金額で愉快に暮らす人間界のナマケモノより。