『ファクトフルネス』書評・目次・感想・評価

FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣

 

FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣

FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣

 

 100点

この本の著者は執筆の途中で亡くなった。それを息子夫婦が本にして出版したという。
本当にこの本が出版されることなく埋もれてしまうことが無くて良かったと強く思う。
僕がお金持ちだったら、図書館や学校の図書室はもちろん、床屋の待合室、歯医者の待合室、病院、とにかく100万部買って日本中にばら撒きたいとすら思うw
冗談はさておき、日頃の自分がぼんやり考えていたこと、人はなぜこうも判断を誤るかについて明晰な説明をしてくれる本はありません。しかも読みやすく、おそらく中学生でも理解できるでしょう。
本能に基づいた誤った判断は自分だけではなく、他人をも悲劇に巻き込みます。少しでも気になった方はぜひ読んでみてください。
世界を少しでも良いものにすることができる一冊です。

〈目次〉

一章 分断本能

何でもドラマチックに2項対立で物事を見ようとするから間違える。貧困も4つの段階に分けるとより現実に沿って理解できる。世界を4つの所得レベルに分ける我々先進国民はレベル4の中に生きている。高いビルの上から見ると下の建物はすべて等しく低く見えるようなもので、豊かな我々と貧しい彼らという古く安易な理解にハマりやすい。

 

二章 ネガティブ本能

我々は世の中はどんどん悪くなっていると思い込まされている。
世界に問題があるが、よくなってきている。それは保育器の中の未熟児のようなものだ。
よくなってきているが、万全の状態ではない。

^_^ 世の中が悪くなっていると感じて貰った方が儲かる連中が多いからね。慈善団体とか、警備会社とか。

第三章 直線本能

グラフを直線だと思い込んでしまう本能。物事は直線で進むという間違った考え。

^_^ よく少子化が進んで日本人がいなくなるという馬鹿話があるが、あれも直線本能のなせる技だろう。
物事がこのまま進むわけじゃない。戦後のベビーブームの時、そのまま行けば日本には人口爆発して大変なことになっていただろう。しかし、そうはならなかった。少子化も同じようにどこかで変化が起こる。

^_^ 確かに特に社会や自然界に直線のグラフは続かないことが多い。どこかで頭打ちになるか、逆に指数関数的に増えることもある。よく見極めなければ。

第四章 恐怖本能

科学を批判的に見て、予防接種を受けさせない親がいるが、そんな時はどんな証拠が出されれば予防接種を受けさせるかを考えてみてほしい。もしどんな証拠が出ても予防接種を受けさせないのならばそれは批判精神ではない。

^_^ これは名言だろう。自分や他人が何かに理性的に考えているのか、固執しているだけなのかの判断材料になる。

五章 過大視本能

数字が一つだけ出てきた時は要注意。比較する数字を探しなさい。
数字をチェックする時は8割を占める項目をチェックすれば大抵済む。
例えば去年は世界で420万人の赤ちゃんがなくなったと言われたら、10年前は?生まれた赤ちゃんの全体数はなど比較材料を求めるべきだ。

^_^ ほんとうに良著だ。学ぶことが多い。そして罠の何と多いことか。

六章 パターン化本能

化学物質の一つが危険だからといって、すべてを危険だと判断するのは間違いだ。逆に考えてみるといい。それは化学物質の一つが安全だからといってすべてが安全だと思い込むことと同じだ。逆の場合を考えてみよう。
過半数と言われたら51%から99%か確認すべき。その差は大きい。
自分が賢く他はアホだと思うな。

^_^ 例えば出会った〇〇人が嫌な奴だったからといってすべての〇〇人を嫌な奴だと思い込む。そんなことはよくある。
それはつまりステキな〇〇人に出会ったらすべての〇〇人が素敵だと思い込むようなことだと

7章 宿命本能

アフリカの子沢山はかわらないとか、イスラムでは女性の権利は確立しないとか、宿命のように変化がないと思い込むのは愚かだ。中絶を禁止しているキリスト教でも少子化は進んだし、少しずつの変化は見逃されがちではあるが、確実に変わっていく。かわらないものなどない。

^_^ そう考えると、中間搾取を避けて、投資ができればアフリカへの投資などはやはり良いものなのだろう。

8章 単純化本能

「子供にトンカチを持たせると、何でも釘に見える」
問題を一つの道具で解決できると思い込むこと。
政府がすべて統制すればうまくいくという社会主義は失敗したが、市場に任せればすべてうまくいくというのも間違いだ。民主主義が問題をすべて解決するというのも大間違い。

^_^ この罠は現代的な罠だ。市場に任せればすべてうまくいくとか、〇〇人さえいなければすべて解決するとか、総理が変わればすべて良くなるとか。世の中はもっと複雑なのだ。

9章 犯人探し本能

問題を誰かのせいにして問題を片付けたと思い込んでしまう本能。
貧しい人に薬が届かないのは儲け主義の製薬会社が悪いなど。
問題の解決はシステムや社会基盤から見つけ出さなければならない。

^_^ オウム問題も麻原を処刑したことで終わってしまった。麻原を生むような、社会環境や社会システムは本当は改善されていないのに世論は終わったと問題が片付いたような気になっている。
そういう点でも死刑制度には疑問が残る。犯人を殺しても社会とシステムが変わらなければ問題はまた起こる。

10章 焦り本能

今すぐ決めろ、とにかく手を打て。世の中はビジネス、セールスマン、活動家、環境保護団体などなど。
とにかく焦らせて自分の意に沿った選択をさせようと焦り本能を煽る。
焦り本能は今までの本能の中で最悪で根元的な困った本能だ。
地球温暖化は大きな問題だがアルゴアはより危機を煽るチャートを作るように著者に迫った。しかし、著者は断った。
たとえ目的が正しくてもデータを歪めることは許されない。

^_^ この件に関して著者に全面的に賛成できる。世の中では正しいことのためにはどんな手段も許されると思い込む人が多すぎる。環境保護団体はデータを歪め、セールスマンは都合の良いデータをツギハギ、テロリストは自爆する。
日本でもエセ右翼、エセ左翼が同じようなことをやっている。思想の異なる連中を貶めるためにはどんな捏造もデータの曲解もやってのける。そして、それが発覚すると相手側はもっと酷いことをやっている彼らの横暴を止めるにはこのぐらいの捏造は許される。我々は善良だなどという。ありえない。まったく許しがたいと思う。
「目的が正しいのならばどんな手段も許される」これこそが現代における諸悪の根源なのかも知れない。

11章 ファクトフルネスを実践しよう

この章ではこの本を読んだ人が、この本から学んだ知恵を活かすため、どういう態度で世界と向き合うべきかを改めて教えてくれる。
何かに突き動かされる時、自分は何らかの本能に支配され間違った選択をしようとさているのではないかと考える。それだけでこの本を読んだ価値はあったと言える。