『中村屋のボーズ インド独立運動と近代日本のアジア主義』書評・目次・感想・評価

中村屋のボース―インド独立運動と近代日本のアジア主義

中村屋のボース―インド独立運動と近代日本のアジア主義

中村屋のボース―インド独立運動と近代日本のアジア主義

 

89点

 このレベルの評伝を20代で書き上げた著者の技量と努力と才能に脱帽するばかりでした。

 この点数は多分に嫉妬も含まれている。

 著者はこの一冊を書くことに20代を捧げたと述べていたが、それにしてもよく書けている。

 特にこの手の評伝は対象(この本の場合はボーズ)に入れ込んでしまい持ち上げるばかりに成りがちであるが、著者は冷静な目を持ちつつ、最後まで書き上げられている。

 それでありながら人間ボーズに対する愛情も感じられ、読む人にも著者と同じようにボーズに対する複雑な感情を味合わせてくれる。

 友人が中村屋に努めているのだが、今度中村屋に行ったら是非、そのカレーを食べてみたいと思う。

 話は戻るが自分が戦前の日本にいたら、果たしてあの戦争に突入する日本に対して、疑問を持ちえたか?

 亜細亜を白人帝国主義者からの解放。この大義名分は人の心を熱くし揺さぶる。

 負けることを知っている自分が読みながら高揚感を覚えたぐらいだったのだから、当時の空気のただなかにあったら、僕は冷静に判断できたかどうかわからない、

 義憤というものを揺り動かされると人はいかに盲目になるのかと空恐ろしくも感じた。

 

<目次>
はじめに
第一章 インド時代
1-1 生い立ち、そしてインド独立運動
1-2 ハーディング総督爆殺未遂事件からラホール兵営反乱事件へ
 
第二章 日本へ
2-1 日本への逃亡
2-2 日英同盟と国外退去問題
 
第三章「中村屋のボーズ」
3-2 アジア主義者との連携
3-3 相馬俊子とのロマンスとインドカリー
 
第四章 日本での政治活動の開始
4-1 表舞台へ
4-2 全亜細亜民族会議
 
第五章 苦難の道へ
5-1 日本におけるインド独立運動
5-2 満州事変
5-3 雑誌「新亜細亜」の創刊
5-4 アジア解放の論理と行動
 
第6章「大東亜」戦争とインド国民軍
6-1 マレー作戦とF機関
6-2 One fight more, the last and the best
6-3 インド国民軍の運営
6-4 無念の死
 
終章 近代日本のアジア主義とR・B・ボーズ
 
あとがき
 
引用文献
 
朝鮮に住む朝鮮人、台湾に住む台湾人は、法的には「日本人」でありながら、政治的能力や民度が低いとの理由から、独立まで一貫して参政権が与えられなかった。ページ146
 
^_^ アジア主義や八紘一宇は綺麗事でしかなかったということ。現代において一部右翼が日本の植民地政策を礼賛しているがこれが現実であり限界だったのだろう。