茨城新聞 いばらぎ春秋 190715

 東京・池袋で4月、乗用車が暴走し母子2人が死亡した事故は、高齢ドライバーに相当に衝撃を与えたようだ。運転免許の自主返納が5月、過去最多を記録した。

 裏を返せば日常の足を失った高齢者が増えているということだ。過疎地の山間部では声にならない深刻さがある。そんな中、常陸太田市高倉地区で6人乗りカートを使った自動運転が21日まで実証実験中と知った。

 同地区の高齢化率は56%。バス停までの移動がしんどく、路線バスは敬遠されがちという。住民有志がワゴン車で高齢者の送迎サービスを行っているが、運転手の平均年齢も70歳近い。

 そこで郵便局やバス停の道筋1.8キロの路面に電磁誘導線を埋め込み、自動運転カートを一日3~6便運航してみようと、国土交通省が乗り出した。自動運転は米国発祥の衛星を使ったGPSが主流だが、ゴルフ場で独自の進化を遂げたカートは日本のお家芸である。

 ハイテクに頼らない支援もある。今参院選から、期日前に投票箱を積んだ車が山あいの集落を巡回する取り組みが高萩市で始まった。投票所に行けない弱者の一票をすくい取る心意気に拍手を送ろう。

 高齢化と人口減で危機にひんする過疎地に今、政治の光が当たれと声を大にしたい。

 

 

 あまり知られていない常陸太田市高倉地区の自動運転乗り合いカートの実証実験を取り上げたという価値は大きい。もっと大きいニュースになってもよさそうなものなのだが。最後にくるんと回転して参院選に持ってくるあたりも社説らしい。