福井新聞 越山若水 190715

福井新聞 越山若水 190715

 

 「童謡『犬のおまわりさん』の現代的意義を考えて」と、不思議な問いかけをしたのは順天堂大名誉教授の樋野興夫(ひのおきお)さん(65)。医療者とがん患者や家族が対話する場「がん哲学外来」の提唱者だ。同外来をテーマにした映画「がんと生きる 言葉の処方箋」(野澤和之監督)の上映会が福井市でありメッセージを寄せた。

 医師でもある樋野さんは、診療室の外でお茶を飲みながらじっくり患者と語り合う場が必要と、約10年前に同外来を始めた。共感の輪が広がり、今では全国約150カ所で同様のカフェが開かれている。その一つ、福井県済生会病院の取り組みも映画で紹介されている。

 さまざまながん患者が登場する。脳腫瘍が再発した愛知県の男子高校生は、いつも明るく前向きだ。「病気になった自分にしかできない経験が積めた」と話す。病気を公表し、病の子供たちの力にと自らカフェを運営する。

  「過去のことを振り返っても、明日のことを思い煩っても人間にはコントロールできない。毎日毎日全力を尽くすしかい」。樋野さんが映画の中で語る一言一言が聞く人の心に響く。

 冒頭の問いかけは、迷子の子猫に困惑する犬のおまわりさんの姿を通し、困っている人に寄り添うことの大切さを伝えたかったようだ。対話によって「解決はできなくても、解消はできる」。映画のメッセージでもある。

 

 冒頭でなぞかけをするぼくの好きなタイプのコラム。

 同時に内容がとても温かい。

 問題は解決しなければ意味がないという考え方もあるが、世の中にはやはり解決できない問題も残っている。

 そこで大切なのは寄り添う気持ちなのかも知れない。

 人間がAIに勝てる部分はそこなのかもしれないが、テクノロジーは困ってしまってワンワンワワンと一緒に困れるAIも用意できるようになるのだろうか。