信濃毎日新聞 斜面 19/07/15

信濃毎日新聞 斜面 19/07/15

 

 令和フィーバーもすっかり落ち着いたが、これから迎える時代の節目に心躍らせる人がいる。平成仮面ライダーシリーズ最終作「ジオウ」ファンの子どもたちだ。物語が終盤に入り、次回作、令和の新ライダーを見る日が近づいてきた。

 1971年に1作目の放送が始まった仮面ライダーが、90年代の中断を経て平成に復活したのは2000年。以来20作を数える。昭和シリーズに親しんだ親世代が悪の組織に立ち向かうヒーローを期待して眺めていると、その内容は意外性の連続だった。

 「ジオウ」は、未来人が突如現れ、主人公が50年後に人々を苦しめる「魔王」になっていると告げるところから始まる。倒すべき相手は誰なのか。他の作品も多くが勧善懲悪でない。戸惑いつつ真の敵を見極めていく若者の姿が印象深い。価値観が多様化した時代の反映だろう。

 子供に分かるのか心配なほど物語が複雑化した一方、昭和から変わらないものもあった。まなじりを決し、「変身!」の掛け声でポーズを決める場面だ。名乗りを上げ、見えを切る。時代劇にも通じるかっこよさ。変身ベルトは今もおもちゃの定番だ。

 放送後、子供たちは熱い気持ちを「ごっこ遊び」にぶつける。ベルトを装着し新聞紙を丸めた自作の剣を手にしている。恐らく1958年放送の「月光仮面」のころから基本は同じ。社会の変化が加速する令和時代のライダーでも、きっと変わらないだろう。そう思うとどこか安心する。

 まず社説のテーマに「仮面ライダー」を持ってくる自由さに嬉しくなる。そして、その中に横たわる時代の断絶にじょうずに橋を架けていく内容になっているのが憎い。

 「ジオウ」に夢中の今の子供、平成ライダー昭和ライダーりその親、さらには「月光仮面」に夢中になっていたお爺ちゃん・お祖母ちゃん世代まで、みごとに貫いている。