国民年金額で暮らす大先輩の記事『元自営業の高齢夫婦は「国民年金だけ」でどう暮らしているのか』(20190724)

「年金だけでは暮らせない」「今から2000万円も貯められるだろうか」──6月に公表された金融庁の報告書が、国民の不安を煽り続けている。しかし、一般的なサラリーマン家庭であれば、それほど心配する必要はない。標準的なサラリーマン夫婦がもらう厚生年金は月22万円(妻が専業主婦の場合)ほど。さらに大企業なら2000万円超、中小企業でも1000万円超の退職金がもらえるため、老後資金を確保する余裕が出てくるのだ。

 

 そもそもフルタイムで仕事をしている時と同じだけのお金を引退後も使おうという発想がおかしいですよね。仕事をせずに月額22万円って、ぼくからみたらそうとう金持ちです。

 

 サラリーマン家庭と比べ、老後の心配が大きいのは自営業者だ。『老後破産しないためのお金の教科書』(東洋経済新報社)の著者で、久留米大学商学部教授の塚崎公義さんが語る。

「自営業者の国民年金は夫婦で最大約13万円しかなく、退職金もありません。老後の収入は金融庁が試算した平均金額よりもぐっと少なく、老後に不足する金額は2000万円どころではないはずです。元気なうちはできるだけ長く働くこと、若い頃から貯金しておくことが求められます」 

 

 国民年金だけは払っておくべきというところでしょうか。ぎゃくに言えば、国民年金を完納して、夫婦で月額13万円で暮らすスタイルが作れれば、お金に関しては怖いものなしということです。

 

 だが現実には、国民年金のみで平穏に暮らす高齢夫婦もいる。大阪府守口市の公団団地に暮らす野澤寿美子さん(86才・仮名)は、夫の正男さん(90才・仮名)とともに、10年前まで酒店を営んできた。

「夫の兄が大阪の旭区で米屋さんを営んでいた縁で、小さな酒屋を始めました。大きな儲けはありませんでしたが地道に商売を続けてきて、娘2人を育てあげました」(寿美子さん)

 成人した娘たちはそれぞれ結婚して家を離れていった。その後も野澤さん夫婦は細々と店を続けた。

 そして正男さんが80才になったのを機に、「そろそろ潮時や」と酒店を閉めて、次女夫婦の近所である守口市の公団団地に移り住んだ。

「店は個人商店だったので、何十年も国民年金を払ってきました。店を閉めた時に自宅も処分しました。それまでずっと自転車操業でカツカツの暮らしやったから、貯金は100万円もあったかどうか。それでもこの10年は年金だけでやりくりしています。一銭も借金せず、誰にも迷惑をかけてこなかったことがホンマによかったです」(寿美子さん)

 

 65歳ハイ、引退。もう働きませんっていうのもアリといえばアリですが、収入の多い少ないではなく、本当にやりたい仕事を見つけた人なら、65歳になってもそのライフワークを続けたいと思うはずです。

 もちろん、頻度や、やり方は年相応に変えながら。

 つまり収入の多い少ないではなく、お金にはあまりならなくても、どうしてもやりたいという天職を見つけることが、老後も仕事を続ける意欲になり、自分の老後を経済的に守ることにつながるのではないでしょうか?

 

 野澤さん夫婦が国民年金だけで暮らせる理由の1つは、年金の受給開始を遅らせる「繰り下げ受給」を選んだことだ。

「夫は60才から年金を受け取れる世代でしたが、商売を続けていて実入りがあったので、年金の受給開始を70才まで繰り下げたんです。そのため、夫の国民年金は通常より高くなって月10万円ほど。私は65才からもらい始めて月6万円ほどなので、夫婦合わせて月16万円ほどの年金です。そこから毎月7万5000円の家賃を払い、スーパーの安売りを利用して食費を月5万~6万円ほどに抑えて、水道光熱費や新聞代などで1万5000円くらい使う。もらえる年金とちょうど同じくらいの支出でやりくりしています」(寿美子さん)

 

 繰り下げ受給で3万円ほど多く国民年金を受け取っていますが、このご夫婦は、月の家賃を7万5千円も払っています。これはちょっと驚きです。

 これだけの高額の家賃(収入の約半分が家賃に消えています)を払ってなお、暮らしていけているということです。

 引退後は通勤はしないので、病院と、ショッピングセンターがそばにあれば、駅近でなくても暮らしていけます。今、日本は家余りで家賃ゼロの家すらあります。若いうちに家を買っておくのは理想ですが、この月額7万5千円は公団とはいえ高すぎな気がします。

 つまり、こんな高額な家賃を払っても大丈夫ってことは、国民年金でぜんぜん生活できるということです。

 

 現在、年金の受給開始年齢は原則65才だが、もらい始めるタイミングは受給者自身が60~70才の範囲で決められる。受給開始を遅らせる、つまり繰り下げるほど年金額は増え、「70才受給」を選ぶと、年金額は本来の42%増しになる。ファイナンシャルプランナーの森田悦子さんが解説する。

「年金なしでも生活できそうなら、繰り下げ受給を選んで、もらえる年金額を増やすべきです。繰り下げは1か月単位で可能です」

 野澤さん夫婦の場合、酒店を閉めた時に自宅を売却して、公団団地に移り住む「住まいのダウンサイジング」をしたことも効果的だった。老後も自宅に住み続ける場合、傷んだ箇所の修繕や、介護が必要になった時にバリアフリー化のためのお金を要するケースが少なくない。

 

  若いうちに家が買えるなら、平屋の一戸建てがいいかも知れませんね。バリアフリー化もしやすいし、車も乗り付けやすい。いわゆるトカイナカの中古物件なら激安です。

 

 卒寿を迎えた正男さんは耳が少し遠くなり、軽い認知症を患っているが、まだまだ健康で日常生活に不自由はない。妻の寿美子さんも元気で快活そのものだ。

「夫は酒屋だったのに酒が飲めず、たばこもやりまへん。日々の暮らしもぜいたくはしないけど、夫は肉好きだから月に1度や2度はすき焼きをします。夫婦仲がいいことも幸せな暮らしの条件ですよ。お金をぎょうさん持っていても夫婦仲や家族関係が冷え切っていたら不幸やからね。

 まあ、私らは国民年金だけでなんとか暮らせていますが、もし可能やったら、あと3万円ほど多めにもらえればうれしいですわ」

 そう言って寿美子さんは楽しそうに笑った。

※女性セブン2019年8月1日号

 

 この夫婦仲がよいというのが何といっても大事なんだと思います。

 仲が悪いと外でストレスを発散しようとしたり、余計なお金が掛かって、経済的にも良くないですしね。

 奥さんがもう3万円あればという具体的な金額をあげているのも好感が持てます。あればあるだけ、貰えるなら貰えるだけ、要求できるんであれば一円でも多くという人は、いくらあっても幸せになれないものです。

 きっと奥さんは3万円の具体的な使い道があるんだと思います。旦那さんにもうちょっといいお肉ですき焼きをもう少し多く食べさせたいとか、たまには二人で外食したいとか。

 国民年金生活の大先輩の話はとても参考になり、同時に温かい気持ちになれました。まずはパートナーと仲良くということですよね。

 

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