「MMT現代貨幣理論入門」L・ランダル・レイ

 

MMT現代貨幣理論入門

MMT現代貨幣理論入門

 

 

【目次】

巻頭解説
「現実」対「虚構」MMTの歴史的意義
中野剛志

第二版序文
定義

序論
現代貨幣理論の基礎

第1章
マクロ会計の基礎
1つの部門の赤字は、別の部門の黒字に等しい

第二章
自国通貨の発行者による支出
租税が貨幣を動かす

第3章
国内の貨幣制度
銀行と中央銀行

第4章
自国通貨を発行する国における財政オペレーション
政府赤字が非政府部門の貯蓄を創造する

第5章
主権国家の租税政策
「悪」課税せよ、「善」ではなく

第6章
現代貨幣理論と為替相場制度の選択
失敗するように設計されたシステム「ユーロ」

第7章
主権通貨の金融政策と財政政策
政府は何をすべきか?

第8章
完全雇用と物価安定」のための政策
「就業保証プログラム」と言う土台

第9章
インフレと主権通貨
「紙幣印刷」がハイパーインフレを起こすわけではない

第10章
結論-主権通貨のための現代貨幣理論
MMTの文化的遺伝子

巻末解説
MMTの命題は「異端」ではなく、常識である
松尾

参考文献/注
索引

 

 

国債とは実は、準備預金よりも多くの利息を支払ってくれる、中央銀行における貯蓄預金口座に他ならない。
ページ41

 

^_^ そうなると政府は銀行を優遇するためのサービスとして国債を発行していることになる。つまり国債を廃止しても問題はない?

 

我々には根本的な改革−つまり、巨大銀行の規模縮小、監視の強化、透明性の強化、金融詐欺の訴追、「官民共同」の金融機関に「公的な役割」をより多く担わせることをーが必要である。
ページ49

 

^_^ 現代社会においては、巨大独占企業はインフラに近い。だからこそ、企業は巨大で市場を独占しているならば政府はより多くの規制をかけるべきである。規制を好まないならば分割して競争に戻るべきであり、独占的に市場を支配している以上はより多くの公共的な政府の介入を受けることを甘んじて受けるべきである。
例えばシェア25%を超えたら、別次元の規制を受ける。価格改正の場合に申請が必要など。

 

例としては、AmazonGoogle、携帯3社、トヨタ、他、水道部品などの小さな部門でも独占的であれば政府の介入を受けるようにしてほしい。
極論すれば時には政府は大企業の足を引っ張るべきである。
それによって資本主義の根幹である競争が維持される。

 

もっとも「不健全な」予算政策とは、「均衡予算」−一定期間(通常は一年間)における、租税収入と政府支出をぴったり一致させる予算 −を盲目的に追求することである。
均衡予算が意味するのは、政府の支出によって供給された政府の通貨がすべて納税により「返却されて」しまい、その結果非政府部門には何も残らない
ページ49

^_^ 面白くなってきた。

 

国内民間収支+国内政府収支+海外収支= 0
ページ59

 

言葉
ゴルディロックス
3匹のクマの童話より。ヒロインがちょうどいい温度のお粥を選んだことから。ちょうど良いこと。

 

最善の国内政策とは、完全雇用と物価安定を追求することである
ページ81

 

^_^ 完全雇用ね。働きたくねーなw

 

貨幣を裏付ける唯一のものが「間抜けを騙して渡せると思うから、私はドル紙幣を受け取っている」
ページ119

 

^_^ 笑える。

 

まとめ
貨幣が貨幣たりうるのはその通貨で納税できるからである。つまり円で納税できるから人々は円を受け取るのである。政府に対する借金も納税義務も円で返済できるから人々は円に価値を認め、円を受け取るのである。

 

政府が租税を必要とするのは、歳入を生み出すためではない。通貨の利用者である国民が、通貨を手に入れようと、労働力、資源、生産物を政府に売却するように仕向けるためなのだ。
ページ128

 

ビットコインは貨幣ではない。ビットコイン保有者は、租税を支払ったり、借金を返済したり、他の取引を行ったりするために、結局それを国家の計算単位−例えばドルやユーロマイナスに交換しなければならない。
ページ181

^_^ なるほど。この本の通り貨幣の定義が税金の支払いに利用できるだから、今のところビットコインは貨幣ではないということになるね。ちょっと納得。

 

本当の金持ちは、議会から課税免除を手に入れるので租税を支払わない。
ページ280

 

^_^ まぁ、あのトランプもほとんど税金払ってなかったらしいしね。

 

まとめ
政府の支出を租税によって賄うという考えを捨てるべきである。つまり政府がやるべきことを歳入不足を理由に放置すべきではない。租税は収入としてではなく、インフレ調整、飲酒、喫煙、環境破壊などの悪行を減らすために利用しすべし。
ただし、格差是正のための再分配よりも事前分配を支持する。取り上げる前に分配を是正するのだ。経営者の賃金を下げ、最低賃金を上げる。
歳入を当て込んでの悪しき素材の例として、
消費税=市民の購買力を取り上げてどうする?
法人税=経営者がタックスヘイブンを求めての本社移動や効果の疑問な宣伝広告費などでの経費計上など税回避のための経営上の不合理な行動を促す。
社会保障税=人々の働く意欲を削ぐ、また社会保障税を必要としないロボットの導入を促進させ、失業率を上げる可能性がある。

 

^_^ 租税を歳入とは考えず、別のものとして必要な歳出を行うというが、それでもインフレを避けるためには無尽蔵に歳出できるわけではないので、MMTで理想郷が現れるわけではないが、税の形はもう少し改良できるかもしれない。
しかし、いつになったら働く=幸せの押し付けから世界は自由になれるのだろうか。

 

ドルを「刑務所行き免除カード」とみなす考え方が、なぜこんなにも浸透しないのか、私にはわからない。
ページ302

 

^_^ たしかモノポリーでも刑務所から出るのにお金払って出られたはずw

 

変動相場制の主権通貨における財政赤字は、決して支払い能力のリスクを伴わない。主権を有する政府には常に、自国通貨で売られているものなら何でも購入できる「支出能力」がある。政府は、決して「市場原理」に支配されない。政府は銀行口座に振り込むことで支出し、このような振り込みが「枯渇する」事は決してありえない。
ページ330

 

^_^ あくまでこれは自国通貨に限ったもので、外国の通貨建ての債権は大きなリスクが伴う。

 

国家は、国民の1部を輸入品を消費する余裕がないほど貧しくしておくことによって、マクロ経済の安定を維持しようとすべきなのか?
一般的に、失業と貧困は、通貨の安定を維持するためなら容認できる政策手段なのか?
ページ414

 

通貨は、その発行者に対してその通貨で支払うように強制される義務があれば、受け取られるだろう
ページ497

 

「主権を有し、「不換」通貨を発行する政府は、その通貨において使用払い不能になる事は無い」とMMTは主張する
ページ511

 

【感想】


数式が出てくるところは正直お手上げでした。しかし、読み物としてはエキサイティングで面白い。
個人的なMMTに対する見解としては、まず赤字が許されるとして、次の歯止めは何か?ということ。
MMTといえども、国内の人的、物的な資源が増えるというわけではない。その中で、さらなる政府支出が許されるとして、それは政治家や権力者、またはポピュリストの無節操な出費を加速させ、無駄なものに国力を注ぎ込むという事態にならないかということ。
今でも無駄な橋、無駄な道路、無駄なイベント孫受け、ひ孫受けがまかり通っているのに。
もう一つは経済的にはハイパーインフレは政府が選択しない限り、起きないというが、実際にハイパーインフレを選択した政府がある以上、政治的にはありうるということで、経済学者が経済的にあり得ないと言ってもそれは現実には起こり得ないということにはならない。
その点では経済学者はやはり経済学からしか物を見れていないなぁと感じた。