「2円で刑務所、5億で執行猶予」浜井浩一

 

2円で刑務所、5億で執行猶予 (光文社新書)

2円で刑務所、5億で執行猶予 (光文社新書)

  • 作者:浜井浩一
  • 発売日: 2009/10/16
  • メディア: 新書
 

 

【目次】

 

はじめに

第1編
犯罪と犯罪予防

ある内閣総理大臣所信表明演説
減る少年犯罪、増える高齢者の犯罪

治安の悪化?
何が犯罪不安を作り出しているのか
殺人は増えているのか?
暗数の問題
科学的な犯罪統計の開発
日本の治安は世界一だが……
なんでもかんでも心の問題?
今問題なのは少年非行ではなく高齢者犯罪
万引きは今や高齢者の犯罪
高齢者の殺人
狙われる高齢者?
少年犯罪の低年齢化は真っ赤な嘘
性情報の氾濫が性犯罪を増加させている?
外国人犯罪が治安悪化の元凶?
情報の垂れ流しが体感治安を悪化させる

間違いだらけの犯罪対策
ニューヨークを安全にしたのは「割れ窓理論」か?
全米で暴力の認知件数が減少傾向にあった
拡大解釈に過ぎない
監視(防犯)カメラに防犯効果はあるのか?
青色防犯灯や青パトには防犯効果があるのか?

エビデンスに基づいた犯罪対策−キャンベル共同計画
キャンベル共同計画
非行防止の万能薬か? −スケアード・ストレイト(反面教師)プログラム
再販を促進する効果
徴兵制やブートキャンプ(新兵訓練)は非行を抑止するか?
効果あるプログラムとは?
心から悔い改めさせれば再販を防げるのか
真の構成とは?
ミーガン法、電子関し、防犯マップ活動
刑罰の重さと被害感情

第2編
刑事政策(刑罰)
ある知事の演説
すべては検察官のさじ加減ひとつ
犯罪認知件数と刑務所人口に因果関係は無い
犯罪者はどのように罰せられるのか?
検察官は治安の番人か?
最後のセーフティーネットとしての刑務所
刑務所でのワンシーン−処遇審査会
刑事司法の現場
負け組と勝ち組を分けるもの
5億円の詐欺でも執行猶予、無銭飲食で実刑
数字で見る受刑者
遠山の金さんはいらない
「自業自得社会」から「お互い様社会」へ

人はなぜ犯罪を犯すのか−犯罪理論について
犯罪者はなぜ懲りないのか?
なぜ高齢者は犯罪を繰り返すのか? −犯罪学理論あれこれ
就寝経過する無期懲役
そもそも無期刑(終身刑)とは?
殺人の再犯率は17%?

法律と科学
裁判で真実は明らかにならない
ある野球部顧問の業務上過失致死事件
法律家の思考と科学的思考
法律家にとっての科学
法律は、例外から一般法則を検討する
裁判員制度−裁判官は真実を見つけるプロではない
調書裁判
刑法第39条問題
被告人の構成に対する関心が芽生える可能性

ポピュリズムと厳罰化
劇場型司法
空気に流されるポピュリズム
光市母子殺害事件の報道
先進国に共通した現象
ニュージーランドにおけるポピュリズムの例
ポピュリズムに強いフィンランド
誰が何のために日本の厳罰化を進めたのか?
日本は恥の文化?
死刑支持率80%?
誰が死刑を支持するのか?
死刑の犯罪抑止効果
厳罰信仰

貧困と犯罪
「自己責任」を主張する政治家は信用するな
ホームレスを自己責任だと思う人へ
刑務所は失業の調整弁?
新自由主義は宇宙からの侵略者?

「刑務所太郎」はなぜ生まれるのか?
刑務所志願
「刑務所太郎」はなぜ生まれるのか?
刑務所依存症
人が立ち直るために必要なもの
回復のプロセスは共通
切り捨て型コンプライアンス社会

終わりに

主な参考文献

 

【読書メモ】

 

家族内殺人は、心理学的には自殺と同じような心理機制を持っていると言われている。日本は、先進国の中で自殺の多い国である。そして、その背景には、経済的な困窮などによる社会的な孤立がある。家族内殺人が、もし、増加するとすれば、それはモラルの低下や家族制度の崩壊ではなく、家族を支える社会のセーフティーネットが弱まり、社会的に孤立する家族が増えたためである。ページ43

 

様々な問題を心の問題にしてしまうのはとても簡単であるし、政治家にとっても都合が良い。心の問題は、個人の問題、つまり自己責任に還元できるからである。しかし、心の問題の背後で、より大きな社会の問題が隠されてしまいがちである点に注意が必要である。ページ46

 

日本で現在格差拡大が進んでいる最大の理由が、小泉改革による影響ではなく、人口動態的に格差の最も大きい高齢者層の割合が増加したことによるのと同じ理屈である。ページ47

 

重要な事は、単なる不審者情報など曖昧な情報を一方的に流さないと言うことである。犯罪学の実証研究でも、不審者や犯罪発生に関する情報提供だけでは防犯にはほとんど効果がなく、犯罪不安を高める作用が大きいことがわかってきている。ページ62

 

対策の効果が懸念される場合、そのほとんどが単なる成功事例の報告であることが多く、注意が必要である。成功事例はダイエット食品の個人的な成功体験と同じである。その人の体重の減少が喧伝している商品の効果とは限らないのである。そして多数の失敗事例は決して報告される事は無い。ページ91

 

刑罰の重さと被害感情や被害者の受ける精神的なダメージを必ずしも比例関係は無い。ページ92

 

^_^ 強盗に比べて恐喝が刑期が短いのは疑問だ。実際、恐喝の方が被害者感情が悪いことがデータ内で示された。恐喝は被害者を締め上げて金を取る行為であり、締め上げられている時点で被害があり、その期間も強盗にくらべれば遥かに長い。

 

そのものは、ある意味意味を反映したものであり、それ自体が悪ではないことである。問題なのは、そのみーがマスコミ等の不正確な情報に基づいて作られ、徐々に流されやすい店にある。今後の課題は、エリート主義の会議ではなく、専門的な知識を見に行かに反映させ、健全なポピュリズムをどう作るのかと言うことにあるのかもしれない。ページ188

 

^_^ ポピュリズムに反対してエリート主義を推進する考えでもあるが、僕が支持したいのは一般市民が知識や教養を得たうえでのポピュリズムだ。そうなると質の高いマスコミが必要になってくる。

 

死刑には暴力を促進する効果があることが指摘されている。刑罰と言う国家が見せしめに人を殺すことが、ある意味「悪い奴は殺しても構わない」と言うメッセージにつながり、かえって殺人を増加させてしまう効果である。ページ197