盛岡タイムス 天窓 190715 丸木舟で台湾から与那国 

 

盛岡タイムス 天窓 190715 丸木舟で台湾から与那国 

 

 探検家関野良晴さんの1993年から始まった「グレートジャーニー」はテレビ番組となり、高い関心を持って見ていた。

人類発祥の地アフリカ大陸から移動拡散をたどる旅は乗り物もカヤックや自転車など人力で動かすものなどに限られた。

 南米チリを出発した旅は2002年、アフリカ大陸のタンザニアに到着。約5万3千キロを旅を終えた。逆ルートの旅は現代から太古を目指す時空の旅となり、原初的な営みや野生に触れた。

 壮大な旅を経験した関野さんは日本を強く意識。先祖が日本列島にたどり着いた旅のルートをなぞる。海のルートでは丸木から舟を制作。太古の技術を用い、帆を立てた丸木舟でインドネシアから日本までの航海に挑んだ。時代が下って遣唐使らの乗った船にとうてい及ばない船体での大海原の航海は、どれだけの人を海に沈めたか想像も付かない。

 国立博物館などのチームが何度か挑戦してきた、日本人の祖先が台湾からどうやって渡来したかを探る丸木舟の航海実験が、先日ついに成功した。競技ボートのような丸木をくり抜いただけの細い船体(全長約7.6メートル)を数人の手こぎで太古と同様、海図やコンパスに頼らず200キロを渡った。地球上は20世紀以降も大きく変化したが、天空の星座は3万年前とあまり大差ないはずだ。

 

 最後に読者にふっと太古の星空を見上げさせるような終わり方が秀逸。