何かを買わせようとする人はこれほどいるのに、買わせないようにする人はいない。

 セールスマンは世界中にいます。

 

 セールスマンとは何か?それはサービスやモノを人に売る職業である。その為に時に訪問し、時に説得し、時に嘘もつきます。

 

 セールスマンが買わなくてもいいということはほとんどありません。

 

 もし言ったとしても、それは別の何かを買わせるためです。

 

 人にモノを買わせる職業の人はこれほどいるのに、人にモノを買わせないようにする職業はないのです。

 

 まぁ、もちろんそこに金銭的メリットが無いからだが、それにしてもあまりにもバランスが悪いのです。

 

 何かを買えと迫ってくるのはセールスマンだけではありません。こうしてインターネットをしていても、何かを買ってくれという広告は押し寄せてきます。

 

 買わせよういう勢力がこれほど強力でありながら、買わないようにさせる勢力はほとんどいないというのが現実です。

 

 せいぜい家族と、財布のヒモぐらいでしょうか? しかし、売ろうという勢力は、プロフェッショナルでしかも大軍。一方で家族は素人。財布の限界も、サラ金やら、ローンやらは軽く飛び越えるようにと誘ってくる。

 

 結局、僕らはこの歪んだ構造の中で、さして欲しくもないモノを買い、その支払いの心配をし、好きでも無い仕事に長時間従事して、人生を切り売りしていく。

 

 セールスマンの反対語を検索してみましたが、適当な言葉は存在していないようです。名前すらないのだから、戦いは絶望的です。

 

 帝国軍に対して、共和国軍、連邦軍に対して、ジオン軍と、相手がいくら巨大な勢力でも、弱小勢力側にも名前があるものですが、この「セールマン帝国」の反対側の勢力には名前すらない。

 

 と、ここからはぼくの妄想です。

 

 セールスマンの反対語が存在しないので、とりあえずアンチセールスマンと名付けてみようと思います。

 

 アンチセールスマンは30分3000円で、あなたが何かを買わないように説得する。

 

 例えば、新車を買おうとしているなら、販売店に行って、セールスマンの話を30分聞いた後、アンチセールスマンに会いに行って、3000円払って30分、話を聞く。

 

 数百万の買い物に関しての相談料としての3000円の出費なら、高くはないと思う。

 

 席に着くと、アンチセールスマンはあなたに言う。

 

 自動車ローンの金利は高く、あなたが支払う金額は本体価格より、相当高くなること。

 

 自動車ローンの金利や、諸経費を含めて、支払う700万円を手にするためには、税金や社会保険料を支払う為、1000万円近い金額を稼がなくてはならないこと。

 

 新車を買えば、その瞬間は喜びを感じるが、その喜びは決して長く続かないこと。

 

 あなたの新車はあなたの者になった時点で、市場では中古車となり、大きく価値が下がること。

 

 ピカピカの新車は、嬉しいかもしれないが、ショッピングセンターの駐車場に止めれば、誰かがキズを付けないか心配になったり、サッカークラブの帰りの息子を迎えに行けば、泥足で乗ろうとした息子を、怒鳴ってしまうかもしれないこと。

 

 そのどちらも、今、乗っている中古車に乗り続ければ避けられること。今まで通り、息子が泥足で乗ってきても、笑って済ませることができること。

 

 新車の輝きを維持しようすればそれなりのコストと手間が掛かること。

 

 さらに手を掛けても、大金を掛けたピカピカの新車が、やがてはありきたりの古ぼけた一台になっていくのを見ることは避けられないこと。

 

 さらに大きな視点で言えば、あなたは息子の為に新車をと、考えているかも知れないが、新車を買うという行為自体が、息子たちが生きる次の時代に残すべく、地球環境を破壊する行為であること。

 

 と、まぁ、アンチセールスマンが言いそうなことを並べ立ててみましたが、どうでしょう。

 

 人生で大きな決断をする時、僕らは色々な人の意見を聞きます。結婚や、子供を持つかどうかなどが最たるもので、結婚して幸福な人、不幸な人、幸福な子育てをしている人、子育てに苦労している人、自分の親、祖父母に至るまで、子供の頃から、いろいろな意見を聞いて、決断をします。

 

 しかし、僕らがモノを買うときは、あなたにモノを売ったらお金が貰える人の話を聞いて決断するという何とも、一方的な意見にまみれて決断してしまいます。

 

 もちろん、いろいろな人の意見を聞いて決めるという人もいますが、それでもハンコを押す瞬間に目の前で口を開いているのは、あなたがそれ買うことで、お金を貰える人です。

 

 今回は車ですが、新築の家を建てるとか、保険に入るとか、アンチセールスマンが必要な場面は人生にあると思います。

 

 ぼくは働きたくないので、やりませんが、誰かどこかで開業しませんか?