5章 買い物編04 物よりも人を大切にしたいから私は中古品を選ぶ

 若者と、その少年(たぶん甥っ子かな)が自動車で天体観測にやってきます。少年が大きな天体望遠鏡を車から取り出したところで、若者が声を上げます。

 

「あっ、流れ星!!」

 

「えっ!!」甥っ子が慌ててそちらを見ようと体をひねった拍子に天体望遠鏡が車にぶつかり、ドアに傷をつけます。

 

「ごめんなさい」と少年がうつむき加減で謝ります。

 

 若者がやさしい笑顔で少年を許し、そこで保険会社の紹介コメントが入ります。つまり、これは保険会社のCMです。

 

 つまり保険に入っていれば、大切な愛車を傷つけられても、甥っ子にやさしくできますよ、というCMです。

 

 一方、私はその保険に入っていませんが、甥っ子にドアに傷つけられても、やさしく許すことができます。

 

 何しろ、私の愛車は前世紀のプリウスです。1999年製の初期型です。10年ほど前に中古で買ったもので、買った当時から、細かい傷があり、他にも自分や相方がこすった傷があります。

 

 ですから、ドアを凹ませた甥っ子にも、心の底からこう言えるのです。「気にしなくていいよ」と。

 

 カッコよく言えば、その程度のことでは私の愛車の価値は微塵も、傷つかないということです。(もともとボロいから)

 

 CMの若者はあの後、車を修理に出し、修理の請求書を保険会社に送って貰わなければなりませんが、私は特にすることはありません。

 

 車のドアの凹みを見て「甥っ子と星を見に行ったなぁ、あの夜は楽しかったなぁ」と思い出すぐらいのものです。

 

 

 ピカピカの新車や、新築の家は持ち主から寛容さを奪うことがあります。友人の新車に乗ろうとしたら、靴を脱いでくれと言われたなんて話はいくらでもあります。

 

 私はできるだけ中古品を買います。機能的に問題が無ければ多少の傷は受け入れます。ピカピカのものを買って、傷をつけてへこむくらいなら、最初からその分、値段が安い傷ありのものを選びます。

 

 わざわざ貴重な人生の一部を切り売りして余分に働いて、そのお金でピカピカの「モノ」を買って、傷つけまいと「モノ」に気を使い、それでも、いつか傷つけて自分自身でショックを受ける。なんとも馬鹿馬鹿しいと思いませんか?

 

 というわけで労働は週2日、生活費は月額65,000円で十分楽しく暮らせるのです。