『放浪の天才数学者エルディシュ』書評・目次・感想・評価

文庫 放浪の天才数学者エルデシュ (草思社文庫) 

文庫 放浪の天才数学者エルデシュ (草思社文庫)

文庫 放浪の天才数学者エルデシュ (草思社文庫)

 

 92点

 正直に言うと300ページ近いこの本を読み通した今でも、僕自身は恐らく天才数学者エルデシュの偉大さの三分の一も理解していないだろう。

 高校時代にすでに数学の授業について行けなかった僕は、ここに書かれている数式、公式、数学的発見の意味を三分の一もわからなかった。

 それでもこの本は面白かった。人として破綻しているように見えて、実は人として大切なことしっかりと抑えているエルデシュ

 自分自身が圧倒的才能の持ち主であると同時に、他人の才能の触媒でもありうるエルデシュ

 こうして大人になってみて、実は数学に興味がわいている。しかし、才能はいかんともしがたいし、一から学ぶ根気もない。

 だから数学者の伝記を好んで読み漁っている。彼ら数学者たちは変人ぞろいでとても面白い。そして、脆く悲しい天才も多い。

 だから数学者の伝記を読むと、自分に才能がないことを喜ばしくすら思えるのだが、エルデシュの人生は苦難はあれど、憧れすら感じられた。(薬漬けではあったけれど)

 

<目次>

0 二十五億歳の男

1 ザ・ブックからそのまま出てきたような

2 エプシの謎

e サムとジョーの問題

3 アインシュタインドストエフスキー

π 最悪の可能性専門博士

4 限界の報復

5 「神が整数を創りたもうた」

6 はずれ

7 生存者たちのパーティー

∞ 「わしら数学者はみんなちょっとおかしいんだ」

訳者あとがき

関連サイト

 

 

 

 

『ファンタジア』書評・目次・感想・評価

 

ファンタジア 

ファンタジア

ファンタジア

 

 82点

 言葉では表せないと、言葉で言い表されがちな芸術、ファンタジアをわかりやすい文体で子供にすらわかるように教えてくれる一冊。

 芸術に対する新しい視点が得られる。

 特に物事を知っていることがファンタジアの妨げにはならないという言葉は大人には心強い励ましになるだろう。

 でもちょっと内容的に古いというのは否めない。原著は1977年のもの。

 

<目次>

 

創造力ってなに?

 

不変の要素

 

思考は考え、想像力は視る

 

ファンタジア 発明 創造力 想像力

 

知っているものの関係

 

冷たい炎 煮えたぎる氷(逆さ) 

 

七つ頭の竜

 

泥よけ付きのサル

 

ブルーのパン

 

コルクのハンマー

 

広場にベッド

 

五線譜のランプシェード

 

リドリー風に

 

ポップなマッチ

 

恐怖のモンスター

 

素晴らしき哉、重量挙げ選手

 

関係の中の関係

 

創造力を刺激する

 

ダイレクト・プロジェクション

 

知識を豊かに

 

クリエイティブな遊び

 

サラダ菜のバラ

 

3次元の遊び

 

オリガミ

 

フォルムの分析

 

構造分野における組み合わせ可能なモディユール

 

書体

 

反復のヴァリエーション

 

15個の石

 

創造力とフォルム

 

架空の美術館

 

モノからモノが生まれる

 

訳者あとがき

 

 

 

『敗者の生命史38億年』書評・目次・感想・評価

敗者の生命史38億年

敗者の生命史38億年

敗者の生命史38億年

 

 

98点
 
 生命史を俯瞰して見てゆくには最適な一冊。
 視点も面白く何度でも読み返したくなる。
 ニッチ戦略という考え方はビジネスマンも改めて生命から学ぶ部分は多いのかもしれない。
 ニッチを探すことを知っていてもいつのまにか競争にかまけているということは多いものだから。
 このブログもしっかりとニッチを探して生き残りたい。
 

【目次】

プロローグー敗者が紡いだ物語38億年前
 
競争から共生へー22億年前
 
単細胞のチーム・ビルディングー10億から6億年前
 
動く必要がなければ動かないー22億年前
 
破壊者が創造者かー27億年前
 
死の発明ー10億年前
 
逆境の後の飛躍ー7億年前
 
捲土重来の大爆発ー5億5000年前
 
敗者たちの楽園ー4億年前
 
フロンティアへの進出ー5億年前
 
乾いた大地への挑戦ー5億年前
 
そして、恐竜が滅んだー1億4000万年前
 
恐竜を滅ぼした花ー2億年前
 
花と虫との共生関係の出現ー2億年前
 
古いタイプの生きる道ー1億年前
 
哺乳類のニッチ戦略ー1億年前
 
大空と言うニッチー2億年前
 
猿の始まりー2600万年前
 
逆境で進化した草ー600万年前
 
ホモ・サピエンスは弱かったー400万年前
 
進化が導き出した答え
 
あとがき 結局、敗者が生き残る
 
参考文献

『エコノミクス・ルール 憂鬱な科学の功罪』書評・目次・感想・評価

エコノミクス・ルール:憂鬱な科学の功罪 

エコノミクス・ルール:憂鬱な科学の功罪

エコノミクス・ルール:憂鬱な科学の功罪

 

 【目次】

謝辞

はじめに 経済学の正しい使い方、間違った使い方
 
第1章 モデルは何をするのか
第2章 経済モデルの科学
第3章 モデルを舵取りする
第4章 モデルと理論
第5章 経済学者が間違える時
第6章 経済学と経済学批判

終わりに 20の戒め
 
「弧」の経済学方法論ー訳者あとがきに変えて
 

索引

『グローバリゼーション・パラドックス 世界経済の未来を決める三つの道』書評・目次・感想・評価

グローバリゼーション・パラドクス: 世界経済の未来を決める三つの道

グローバリゼーション・パラドクス: 世界経済の未来を決める三つの道

グローバリゼーション・パラドクス: 世界経済の未来を決める三つの道

 

 

92点
 
 もはやこれ以上のグローバリゼーションには利益がないというのは面白い視点だった。
 何よりグローバリゼーションでわずかな利益を1得るのに国内の労働市場で50の変動が起きるというのは空恐ろしいことだ。
 貿易は良い、しかし金融のグローバリゼーションは危険だ。
 一方で著者は労働者の移動の自由化にはまだ大きなフロンティアが残されているというが、5年で国に返せば問題ないというのは短絡的すぎる
 5年の間で恋愛して、結婚するかもしれないし、子供を作るかもしれない、5年で帰るとなれば雇用側に彼らを教育するメリットはあるのだろうか?
 お金や貿易品ではなく労働力とは人、そのものなのだがどうも著者にはその認識が薄い気がする。
 
【目次とメモ】
 
序章 グローバリゼーションの物語を練り直す
 
われわれは最大限のグローバリゼーションではなく、賢いグローバリゼーションを必要としているのである。ページ18
 
^_^ 国際貿易と言う点でのグローバリゼーションは良いものであるが、資金の自由な行き来を認める金融のグローバリゼーションこそが諸悪の根源なのか?

第一章 市場と国家について歴史から見たグローバリゼーション
 
市場は、頑丈な政府の制度によって支えられている時、最もよく発展し、最も効果的に富を生むのだ。市場と政府は補完的であり、角に単純化された経済学の説明にあるような、従属的な関係にはない。ページ36
 
^_^ これは政府による効果的で実効的なルールがあって初めて市場が発達しうるということだろう。GAFAの様に国家を飛び越えてしまった存在に対してはどうすればいいのだろうか?
 
福祉国家は、解放経済の裏返しとしてできた。ページ39
 
^_^ この貿易開放度が高い国ほど、国家の希望、役割も大きいという現実は今まで学んできたことと大きく異なり、そのまま受け入れがたい、受け入れがたいがどうやら事実の様だ。つまり日本がより市場を開放すればするほど日本政府は大きくならざるを得ないということだ。うーん、今まで学んできたこととは違うなぁ。
 
政府は国境線の内側で取引費用を引き下げるが、国の間の取引の摩擦の根源なのだ。ページ40
 
よく機能する市場経済はすべて、国家と市場、放任主義と介入の組み合わせである。その組み合わせは、それぞれの国の選好、国際的な地位、そして歴史的な経路に依存する。しかしどんな国も、公共部門が自主的な責任をおうことなしに発展することはできない。ページ42
 
国家は国内市場の働きに欠くことのできないものであると同時に、グローバル市場の設立に大きな障害にもなる。これから見ていくように、国家の活動は、グローバリゼーションが乗り越えなければならない取引費用の源泉である。ここにグローバリゼーションの大きいなる難問がある。国家なしではできないが、国家のせいでできないのだ!ページ42
 
^_^ 面白い。

第二章 第一次グローバリゼーションの興隆と衰退

第三章 なぜ自由貿易論は理解されないのか?
 
^_^ グローバリゼーションが進んだ今、これ以上のグローバリゼーションを進めても得られる利益は少ない(ただし、確実にある)が、その為に生じる利益を得る人と失う人の間での資本移動は大きい。その割合は利益1に対して資本移動は50である。端的に言えば自由貿易ぐ進むたびにトヨタは51儲けて、農家は50損する。それでも日本としては1儲かるからいいだろうということになっているということだ。さて、これでもこれ以上、グローバリゼーションを進めるべきだろうか?

第四章 ブレトンウッズ体制、GATT、そしてWTO 政治の世界における貿易問題

第五章 金融のグローバリゼーションと言う愚行

第六章 金融の森のハリネズミと狐
 
自己奉仕バイアス(成功は自分の手柄、失敗は状況要因のせいとする態度) ページ145
 
^_^ よく見るな。これ宗教とか。成功は神のおかげ。失敗は信心が足りない。
 
対外金融とは、いい時だけの友達のようなものだ。全く必要でないときにはそこにいるが、何か助けて欲しいときにはそこにいない。ページ151
 
^_^ これは対外金融に限らず、金貸し全般に言えることでは無いのか。
 

第七章 豊かな世界の貧しい国々
 
^_^ 正しい答えは「富裕国の貧困層」だそして、この答えに疑問の余地は無い。私の本子子によると富裕国にいる貧困層の平均所得は、貧困国にいる富裕層の平均所得の3倍以上である(各国の購買力の違いを調整すると、9400ドルと3000ドルになる)。乳児死亡率など工夫に関するその他の点についても同様である。富裕国の貧困層は、貧困国の富裕層に比べてより多くのものを持っており、はるかに望ましい状態にあるのだ。ページ164
 
^_^ 貧困国でめだつのは超富裕層。0.01%にも満たない連中がBMWに乗っているに過ぎない。そう考えると未だ富裕国の地位にとどまっている日本の貧困層である自分は世界的に見てなかなか良い場所にいるのだろう。最近の日本人の中国やその他アジアの新興国に憧れや嫉妬を持つ事はやはり大きな間違いなのだ。未だ我々日本人の多くより豊かなのは彼らのごく一部に過ぎない。しかし、彼らは目立つし、日本に観光に来ることもできる為、目につくだけだのだ。
 
第八章 熱帯地域の貿易原理主義
 
第九章 世界経済の政治的トリレンマ
 
われわれは3つの選択肢を持っている。国際的な取引費用を最小化する代わりに民主主義を制限して、グローバル経済が時々生み出す経済的・社会的な損害には無視を決め込むことができる。あるいはグローバリゼーションを制限して、民主主義的な正当性の確立を願っても良い。あるいは、国家主権を犠牲にしてグローバル民主主義に向かうこともできる。これらが、世界経済を再構築するための選択肢だ。ページ233
 
^_^ これは二番目の選択肢しかない様に思われる。民主主義よりもわずかな貿易利益を優先することが賢い選択とは思えない。1番目は現状維持だし、3番目は理想主義すぎる。我々、先進国に住む人間が世界政府でシャッフルされることを望むとは思えない。

第十章 グローバル・ガバナンスは実現できるか?望ましいのか?

第十一章 資本主義3.0をデザインする

第十二章健全なグローバリゼーション
 
世界貿易はとても自由なものになっている。その結果、わずかに残る保護主義の名残を取り除くことによって我々がいるとされる利益はほんのちっぽけなもの、それは専門家や金融紙が推測するよりもかなり小さいとなっている。ページ288
 
^_^ もはやグローバリゼーションは十分に進んでおり、今後は反動的保護主義の台頭を防ぐ為にグローバリゼーションを進めるのではなく、柔軟性をもちその維持に努めるべきということか。まぁ、これ以上、貿易自由化を進めても出てくる利益は残りカスでその摩擦は大きいだけ、労多くて益少なしということか。

終章 大人たちへのおやすみ前のおとぎ話

謝辞

訳者 あとがき


人名索引

『「ない仕事」の作り方』書評・目次・感想・評価

「ない仕事」の作り方 (文春文庫) 

「ない仕事」の作り方 (文春文庫)

「ない仕事」の作り方 (文春文庫)

 

 

95点
 
まじめに面白い。そして実は結構大変なんだなぁと思う。そして憧れると同時に自分には無理だなぁと思う。
 

<目次とメモ>

 

前書き すべては「マイブーム」から始まる

 

第1章 0から始まる仕事〜ゆるキャラ

 
第2章「ない仕事」の仕事術
1 発見と「自分洗脳」
2 ネーミングの重要性
3 広めることと伝わること
 
第3章 仕事を作るセンスのはぐくみ方
1 少年時代の「素養」が形になるまで
2 たどりついた仕事の流儀
 
第4章 子供の趣味と大人の仕事〜仏像
 
あとがき本当の「ない仕事」〜エロスクラップ
 
A +B= ABでなく、A+B=Cになるようにするのです。そして映画ビーのどちらかもう一方打ち消すようなネガティブなものにします。この「ゆるキャラ」は、その最たる例と言えるでしょう。ページ17
 
私は仕事をする際、「大人数に受けよう」と言う気持ちでは動いていません。それどころか、「この雑誌の連載は、あの後輩が笑ってくれるように書こう」「このイベントはいつも来てくれるあの間に受けたい」と、ほぼ近しい1人や2人に向けてやっています。あるいは、その原稿や笑を最初に受け取る編集者を笑わせたいだけで書いていると言っても過言ではありません。ページ78
 
世の中には「触れてはいけない」と勝手に思い込んで、自主規制してしまいがちな世界があります。しかし、伝統守るのも良いのですが、古い考えに縛られすぎて、良いものが多くの人に伝わるのを邪魔してしまうこともある。その「高い色」や「暗黙の了解」といったものを取り除きたい。そんな思いも私の「ない仕事」のモチベーションの1つとなっているのかもしれません。ページ105

『人類は絶滅を逃れられるのか 知の最前線が解き明かす「明日の世界」』書評・目次・感想・評価

人類は絶滅を逃れられるのか―――知の最前線が解き明かす「明日の世界」 

人類は絶滅を逃れられるのか―――知の最前線が解き明かす「明日の世界」

人類は絶滅を逃れられるのか―――知の最前線が解き明かす「明日の世界」

 

 

82点
 
 まあまあ面白かったが否定派にもともと勝ち目がない戦いだった。最後に逆転するぐらいであればよかったのだが。
 
<目次と感想>
 
訳者前書き
はじめに
登壇者紹介
 
第1章 人類の歴史から導かれる明日の世界ー4つのシナリオ
 
マルコム・グラッドウェル 
進歩が人類に牙をむく
 
アラン・ド・ボトン
人間の本質は1000年たっても変わらない
 
マット・ リドレー
貧困・飢餓・疫病のリスクを人類は乗り越えてきた
 
スティーブン・ピンカー
人類の爆発的進歩は止まらない
 
第2章 人類は絶滅を逃れられるのかー世界の未来を占う論戦
 
第3章 悲観主義にならないための未来予測
 
ボトン 経済発展の悲劇の1つは、人は物質的に満たされれば、幸せになれると言う信念に基づいていたことです。しかしリチャード・良いスターリンと言う経済学者が40年以上前に、所得と幸福の関係について有名な研究論文を発表しました。たとえある社会が著しく金持ちでも、「もっと」と言う欲求、他人へのやっかみ、そして自意識や不安はなくならない。どんなに金持ちになっても、金銭的な不満はなくならない、と言うのです。自分を他人と比べるのは社会的な病であり、億万長者でも、やっかみ嫉妬、力不足といった感覚から自由になることができないのです。ページ24
 
^_^ その呪縛から解き放たれる為に僕は月6万5千円で暮らすのですw
 
すべての国で、知能指数は10年で3ポイントのペースで上昇しています。ページ63
 
^_^ これが本当なら今の10代は僕より10近く知能指数が高いことになる。老人が若者に呆れるのはもはや老人の頭が悪過ぎて若者を理解できないからかもしれない。
 
アラン GDPが増えても、貧困は撲滅できません。多くの百万長者や億万長者が、まだ物足りないと感じています。これこそが真の貧困です。そして残念ながら、その感覚は大きくなっておりどんな所得レベルになっても存在します。ページ70