『専門家の予測はサルにも劣る』書評・目次・感想・評価

100点
44文字×18行×350ページ=277,200文字
図表や改行分を計算に入れて3/4を掛けると=207,900文字
日本人の平均的読書スピードを毎分600文字として347分
平均的な読者で
読了まで5時間47分程度
 
この本を読んだ人の心の中では本を燃やす焚書の真っ赤な炎が燃え上がるでしょう。
価値のない本が、読むべきでないベストセラーが、ハッキリとわかるようになります。
場合によっては、自分の本棚に並ぶ本に恥ずかしさを覚えるかもしれません。
この本の内容は予想を伴う書籍のほとんどにケンカを売るような内容です。
専門家の予想ははずれます。売れっ子ほどはずれ、断言するタイプほど華々しくはずします。
著者はそれは人間の認知や心理の仕組みに基づいたもので、避けるのはとても難しいと言います。
そしてそれを利用して当たらない預言者たちは表舞台に残り続けます。
この本の考えを受け入れると、今、日本で人々を不安に陥れている、人工知能に仕事を奪われるだの、少子化でいずれは日本人はいなくなるだの、年金はやがて破綻、それどころか日本が財政破綻で消滅するなどのトピックが、今までと違って見えてくるでしょう。
「未来は絶望だ」が一番金になり、「未来はバラ色だ」はさほどお金にならず、「未来はわからない」が最も正しく、まったく金にならないのです。
自分はこれからも当たらない預言者の言葉を求めて、セミナーに出掛け、本を買い、テレビを見て、彼らに布施を積むべきか、考えるキッカケになる価値ある一冊です。

【『専門家の予測はサルにも劣る』目次と読書メモ】


<<用例>>
太字 もくじの写し
要約 内容の要約(ただし恣意的です)
引用 気になった部分をメモとして引用しています(最後に引用ページを記載)
名言 気になった名言をピックアップしてメモ
小話 後で人に話したくなるような内容をメモ
^_^  一読者としての意見・感想(笑顔ですが読者の感情ではありません)

まえがきーその予測を信じる前に………
 
第一章 始めに
専門家の予測はいつでも間違っていた
予測の歴史は「予測失敗の歴史」と換言できる。これまで、膨大な数の予測がなされ、膨大な数の「外れ」が記録されている。とある大学教授が行った、専門家の予測の当否をモニターした研究から見えてくる、彼らの予知能力の実態とは?
 
世界は複雑なのだ。予測するには複雑すぎるのである。そして人間の脳は、いかに素晴らしかろうが、完璧にはほど遠い。認知回路がシステム的に間違いを起こすからである。予測できない世界を、間違いを起こしやすい脳を使って予測すれば、失敗を重ねて当然だろう。ページ34
 
^_^ そうなるとわれわれは予測と言うものに対してどうのように向き合えば良いのだろうか?
 
要約
自信たっぷりの専門家ほど、自分のアイディアに固執するため予想はずしやすい。自分の考えをときには疑いバランスをとった考えのできる専門家は予想を的中させる確率が高いがそれでも微々たるもの。
 
引用
わたしたちがどんなに賢くても、どんなに高度な思考方法を身につけたとしても、予想するときに使うのには限界があるし、世界はそもそも予測できないものなのだ。ページ52
 
^_^ ビックデータや人工知能がその壁を破ることができるのだろうか?
 
第二章 予測できない世界
「蝶の羽ばたき」が未来予測を吹き飛ばす
未来予測を検証するには当たっては、まず、未来がどのように変動するかを知る必要がある。カオス理論、バタフライ効果、フィードバック現象などなど、未来を変え得る事象は無限にある。そう、私たちが生きているのは、そもそも予測不能な世界なのだ。
 
紹介書籍「石油の世紀ー支配者たちの興亡」

 

石油の世紀―支配者たちの興亡〈上〉

石油の世紀―支配者たちの興亡〈上〉

 

 

要約
カオスでフィードバックがあり、非線形の事柄を予測するのは不可能に近い。
未来の知識は現在ではわからないし、もしわかっていればそれは既に未来の知識ではない。自然はわからない上に、人が絡めばさらにわからなくなる。人口動向すら戦争が起きれば若者がいなくなるなど変化が生じる。
 
^_^ 少子化で人口が減って数百年後には日本人がいなくなるなんて予測がまかり通っていることに違和感を感じていたが、出生率など何をきっかけに変化するかわからない上にそんな先のことが予測できるわけがない。くだらない予測を書き並べる書籍を焚書したい(笑
今後読書をする上で、くだらない予測をする本を避けられるだけでもこの本を読んだ価値は十分にある。
 
第三章 専門家の頭の中
優秀だから専門家は間違える
はるか昔から、ゆっくりと、そしてバータ利敵に進化してきた人間の脳は、未来予測に向かない特性を多く抱える。そして、知識量が増えれば増えるほど、その傾向は強くなる。専門家は優秀なのに間違えるのではない。優秀だから間違えるのだ。
 
進化は継ぎ接ぎだらけその場しのぎの積み重ねである。脳も同様である。
 
引用
私たちは背骨を手に入れ、直立歩行ができるようになったが、その欠陥のために、常に痛みで腰を曲げることになる。網膜に不条理に組み込まれた盲点によって、視界が欠ける。何の為にもならないのに、親知らずが生えてきて痛む。ページ111
 
小話
iPodのランダム再生がランダムには思えないと言う顧客の要望に応えて、ジョブズは「ランダムだと感じてもらうために、ランダム性を下げた」と答えた。ページ120
 
名言
人間の論理的思考の中で、最も問題のある側面を1つ特定しようとするならば、確証バイアスが1番の検討候補に上がるだろう。(レイモンド・ニッカーソン 心理学者)
 
^_^ 人は自分の意見に都合の良い情報ばかり集めたがる。
 
第4章 今日と同じ明日
世界は変わらない。変わるとしても今日のように変わる
80年代、人々は日本が覇権を握ると考えていた。当時の日本の勢いを鑑みての予測だ。が、結果はご存知の通り。人間は、「現状維持」を志向するバイアスを持っている。故に、変化を想定するのが苦手で、仮に想定するにしても、「今日と同じ変化」を予測するのだ。
 
引用
災害時などに備えるための計画を練る際には、シナリオ・プランニングが言うように働くかもしれないとしたが、全面的に信頼できる手法ではないと断じた。ページ176
 
^_^ 少なくとも災害時などに備えるのにはあらゆるシナリオを想定しておくと言う手法は使える可能性があるということか。
 
予測が必要としないときに正しくて必要とするときに間違うことになる。ページ177
 
^_^ 予測は何も変化がしないときには当たり最も予測が必要な変化が起こる時には外れる。皮肉なものだ。
 
^_^ そう考えると今、世間を騒がせている予測も意味がないという事になる。今のトレンドを引っ張るだけの予想。まず中国脅威論、少子化で日本人消滅、日本の財政破綻、あとは何だろう?逆にバブルなのは日本国債か、これはトレンドがやがて変わるだろう。
 
第5章 不確実性による不安
楽観論より、悲観論が売れる理由
人間にとって「何か悪いことが起きる」と言う予想よりも体がだいぶのは「何か悪いことが起きる、かもしれない」と言う不確かな見立てである。だからこそ、専門家は過激なまでの悲観論を発表し、人々はそれに群がるのである。
 
拷問はコントロールを奪うことで行われる。尋問、睡眠、食事、罰に対して、全て尋問者が決めることで尋問を受ける者を追い詰めることができる。罰を与えることは時には、尋問を受ける人に安堵感を与えることさえある。罰は終わった、、、と。強い電気ショック20回の人より、ランダムに弱い電気ショック17回、強い電気ショック3回の人ではランダムの人の方が強い恐怖を感じるのだ。人間には自分で自分の行動や生活をコントロールしているという実感が必要なのだ。
 
引用
例えば、痛みを与えると言う脅しの方が、実際の痛みより大きなダメージを与える恐怖を引き起こすことができる……。長く続けると、未知の強い感情が退行を引き起こす。一方で、例えばある種の罰を与えるなど、恐怖を具現化する事は、安堵もたらすことが多い。ページ195
 
引用
「人間は、「何か悪いことが起こるかもしれない」と言われる方が、「何か悪いことが起こる」と言われるよりも、不快に感じるものなのだ」
がんの診断結果で、最悪の結果が告げられた時に、ある種の安堵感を経験したことがあると話す人は少なくない。つまりは、そういうことだ。ページ200
 
^_^ 人間はどこまでも不確実性を嫌うと言うことか。
 
人々は確実のもの欲しがる。それは専門家の予測が提供する、「心理的な賄賂」と言っても良い。ページ203
 
^_^ 書店の新刊コーナーには「心理的な賄賂」が溢れかえっている。
 
第6章 メディアスターたちの予測
人気者ほど、予測が下手
人々は、わかりやすく、断定的に言葉を発する人を好み、メディアへの露出が多い専門家もその特徴に書きする人がほとんどだ。しかしそうした人ほど予測が下手なのだ。結果、メディアでは「明らかで、わかりやすく、間違った」予測が量産されている。
 
引用
Googleのヒット数を使って有名度をはかった専門家284人を調べると、有名になればなるほどあたらなくなると言う。ページ215
 
第7章 予言が外れる時
専門家たちの言い訳
大っぴら予測をし、それが派手に外れたとなれば、当然、それを追求されることもある。しかし、専門家は華麗に(あるいは無様に)それをかわす。専門家の言い訳の極限的な論理展開から見えてくる、人間の記憶と認知が抱える欠陥とは? 
 
引用
記憶は進化するものであり、記録されるものではない。記憶は鮮明なまま、何十年もそこにありながら、ときには微妙に、ときには大胆に進化する。そういう変化は、ランダムに起きるものではない。記憶は現在に役立とうとする。今この瞬間の必要性に合わせて、変化するのである。ページ288
 
^_^ つまり記憶は古い写真のように劣化するだけでなく、取り出されるたびに手垢で汚れ、書き加えられ、不都合は取り去られる。その時その時に都合の良いように改変されるということを忘れてはならない。
 
小話
2000年問題時、韓国のコリア・テレコム社はほぼ対策をせず壊れたら直せば良いではないかと言う態度で臨んだ、一方イギリスのブリティッシュテレコム社は5億ポンドをつぎ込んで対策した。両社は同じようなシステムを使っていたが、結局、韓国の判断が正しかった。
 
要約
人は自分が予測したことが外れたことを認めることができない。それは知識が多ければ多いほど認知的不調和を避けるため、事実をその知識でねじ曲げて構成しほぼ当たったような状態にしてしまうことすらある。
 
^_^ 今日本を覆っている恐怖感もあてにならない予測に寄っているのではないか?自分は予測を行うなら意地でも明るい予測を行いたい。訪れるかどうかわからない絶望振りまく方が金は儲かるかもしれないがおそらく人類にとっても害悪でしかない。僕は外れるにしても明るい未来を予測したい。
 
第8章 終わりに
それでも未来を知りたい人たちへ
どれほど人間が予測下手だとしても、私たちは予測なしでは生きられない。人間のあらゆる行動に、予測が関わってくるからだ。しかし、正しい行動するのに、正しい予測は必須ではない。予測不能な世界で、暗がりの中を歩く方法とは?
 
引用
将来について思い悩む人が、よくこんなことを口にする。「先が不透明だ。昔とは違うよ」セリフの前半は正しいが、後半は間違っている。将来はいつの世も不透明なのだ。ページ314
 
^_^ 煽り本を書く連中にしてみれば、いつの世も激動の時代で、いつになく
不透明で、不安が世界を覆っている。正直少し笑ってしまう。
 
^_^ 将来は見通せない。しかし予測は必要だ。しかし予測は外れる。そうなると予測に対する対策に二次的なメリットを加えておくことが重要なのかもしれない。
例えば地球温暖化はどうなるかは見通せない。しかし炭酸ガスの発生を抑えることでエネルギー効率の上昇や、地政学上不安な中東へのエネルギー依存を低減できたり、新しいエネルギー開発への資金提供が行える。
つまり地球温暖化がどうなるかわからない以上、地球温暖化対策をしつつ、他のメリットを享受する一石二鳥の対策を選択するのが、正しいのかも。
人生においては、癌になる可能性がある以上保険に入るのも1つの選択肢であるが、癌にならなかった場合は損になる。
ならば、癌になった時に経済的に困らないように一定額を貯金するのもいい手だ。何しろその資金は他の用途にも使用できる。保険はその資金では賄い切れない場合にのみ使用できる保険を選択すれば保険料の節約にもなる。
考えてみればそのような、将来の予測とその対策、そして同時に何らかのメリットを得る方法を考えておくと言うのは考え方としてどうだろう?
 
紹介書籍「みんなの意見は案外正しい」

 

「みんなの意見」は案外正しい (角川文庫)

「みんなの意見」は案外正しい (角川文庫)

 

 

引用
実際、人が集まると、周りに合わせた集団思考に陥る傾向があり、そうなると何かを決めるには最低の環境となる。賢い決断と言うのは、大勢の人が、それぞれ独立して考えて判断したものを持ち寄って判断した結果だ。そのような環境だと、ある人の間違いは他の人によって消し去られ、各人の確かな情報が結びつくことになる。その結果、1日の羽田よりずっと適切な判断ができあがる。ページ331
 
^_^ なるほど。各人が独立して判断するのが重要なんだね。
 
引用
確証バイアスを避けるための基本的な方法は、自分の考えが間違っているかもしれない理由をリスト化して書き出すと言うものだ。ページ332
 
^_^ 何か大きな決断をする時はこの手法を試してみる価値があるかも知らない。謙虚であること、余りに大きな未来を予測しないこと。
 

 

歴史主義の貧困 (日経BPクラシックスシリーズ)

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推測と反駁-科学的知識の発展-〈新装版〉 (叢書・ウニベルシタス)

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億万長者のジョージ・ソロスは典型的なキツネだ。
 
^_^ ジョージ・ソロスの著書を読んでみようかと考える。
 
どんなにに良い時代であろうと、私たちの寿命が限られている。だから1つのようであれ、世界の危機はあまりにも深刻に受け止めて、本来楽しむべきことを後回しにするのは自然の摂理に反する。良い仕事をする、恋をする、友との付き合いを楽しむ、ホームランをカットバス、そして、めでたく子供を授かる。それが人生だ ページ344
 
訳者あとがき

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リスクにあなたは騙される (数理を愉しむ)

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