『合成生物学の衝撃』書評・目次・感想・評価

89点

43文字×17行×225ページ=164,475文字
図表や改行分を計算に入れて3/4を掛けると=123,356文字
日本人の平均的読書スピードを毎分600文字として206分
平均的な読者で

読了まで3時間26分程度

 
 内容的には面白いが情緒に過ぎる部分があり、ところどころポエムなところが鼻に付く。
 軍に対する過剰な拒否反応にも違和感。これほどクリティカルな技術を国ではなく一企業に握らせるのはもっと危険ではないのか?ならば研究者はどこから資金を得ればいいのか?
 生命操作に対しては違和感だの、漠然した恐怖だのを連呼するばかりで、いったい何が倫理的に問題なのかを全く掘り下げていない。
 以上、不満が多くなってしまったが、内容的にはとてもエキサイティングだった。
 何より知らない間に随分と生物工学が発展していることにも驚いた。驚きの分、学びも多かったと思う。
 文章もこなれていて読みやすかった。
 科学技術は日進月歩、この本も五年後に読めばその価値は全く違うものになるでしょう。
 興味が湧いたなら、旬で新しいうちに読まれることをお勧めします。

【『合成生物学の衝撃』目次と読書メモ】


<<用例>>
太字 もくじの写し
要約 内容の要約(ただし恣意的です)
引用 気になった部分をメモとして引用しています(最後に引用ページを記載)
名言 気になった名言をピックアップしてメモ
小話 後で人に話したくなるような内容をメモ
^_^  一読者としての意見・感想(笑顔ですが読者の感情ではありません)

プロローグ わたしを離さないで
 
紹介書籍「わたしを離さないで」

 

わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)

わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)

 

 

第一章 生物学を「工学化」する
マサチューセッツ工科大学で学ぶトム・ナイトは、コンピューターの性能は18ヶ月後2倍になっていくと言うムーアの法則が物理的限界にきていることに気がついた。ナノサイズの半導体を作る最も洗練した方法は生化学によって得られるのでは?
 
第ニ章 人工生命体プロジェクトはこうして始まった
MITの講座による協業の流れとは全く違う流れは、たった1人の科学者によって作られた。クレイグ・ベンター。NIHという最高峰の研究所を辞めたベンターは、ヒトゲノムを読み、人口生命体「ミニマル・セル」を創り出すプロジェクトに着手する。
 
紹介書籍「ヒトゲノムを解読した男」

 

ヒトゲノムを解読した男 クレイグ・ベンター自伝

ヒトゲノムを解読した男 クレイグ・ベンター自伝

 

 

紹介書籍「ゲノムを支配する者は誰か」

 

ゲノムを支配する者は誰か―クレイグ・ベンターとヒトゲノム解読競争

ゲノムを支配する者は誰か―クレイグ・ベンターとヒトゲノム解読競争

 

 

第三章 究極の遺伝子編集技術、そして遺伝子ドライブ
一文字からの修正も可能な遺伝子編集技術「CRISPRーCas9」。2012年に開発されたこの技術を用いて、ある遺伝子を集団内で一気に広めることができる方法が生まれた。マラリアかの撲滅、生物多様性の維持等への使用が考えられるが。 
 
^_^ 遺伝子ドライブとCRISPRを利用した生物の改変はヤバイ。
 
第四章 ある生物兵器開発者の回想
旧ソ連では合成生物学を使った生物兵器の研究が実際に行われていた。私は、機密研究に携わった1人の科学者のインタビューに成功する。ペスト菌と脳脊髄炎を引き起こすウィルスを掛け合わせた新しい病原体の研究など、セルゲイ・ポポフは証言する。
 
紹介書籍「生物兵器 なぜ造ってしまったのか?」

 

生物兵器―なぜ造ってしまったのか? (二見文庫―ザ・ミステリ・コレクション)

生物兵器―なぜ造ってしまったのか? (二見文庫―ザ・ミステリ・コレクション)

 

 

紹介書籍「バイオテロと生物戦争」

 

バイオテロと生物戦争

バイオテロと生物戦争

 

 

引用
いったいあなたの生物兵器を作る必要がどこにあるのか。これにはいくつかの答えがあります。1つには、誰かが治療の難しい何かの病気に感染して、誰もそれが何かを知らず、治療もしにくく、それに致死率も高いとなれば、それは心理的に、非常にインパクトの大きい兵器になると言うことです。それこそが、生物兵器を使う目的の1つなのです。
 
^_^ 一つだけじゃなくて全部教えてよ。まず、言えることは恐怖を与えるということだね。つまりはそれを理解すればある程度は抑え込める。必要以上に怖がる必要はないという事、恐怖が最大の効果だと考えれば。
 
第五章 国防総省の研究機関は、なぜ合成生物に投資するのか?
ベトナム戦争での大ゲリラ戦の兵器を次々と開発した実績のある国防総省の研究機関DARPAそのDARPAは合成生物研究の最大のパトロンといってもいいかもしれない。2014年だけで、1億1000万ドルもの予算をその研究に拠出している。
 
紹介書籍「CRISPR 究極の遺伝子編集技術の発見」

 

CRISPR (クリスパー)  究極の遺伝子編集技術の発見

CRISPR (クリスパー) 究極の遺伝子編集技術の発見

 

 

紹介書籍「科学者と戦争」

 

科学者と戦争 (岩波新書)

科学者と戦争 (岩波新書)

 

 

紹介書籍「生命科学とバイオセキュリティ デュアルユース・ジレンマとその対応」

 

生命科学とバイオセキュリティ―デュアルユース・ジレンマとその対応

生命科学とバイオセキュリティ―デュアルユース・ジレンマとその対応

 

 

紹介書籍「マインドウォーズ 操作される脳」

 

マインド・ウォーズ 操作される脳

マインド・ウォーズ 操作される脳

 

 

紹介書籍「ペンタゴンの頭脳」

 

ペンタゴンの頭脳 世界を動かす軍事科学機関DARPA (ヒストリカル・スタディーズ)

ペンタゴンの頭脳 世界を動かす軍事科学機関DARPA (ヒストリカル・スタディーズ)

 

 

第六章 その研究機関、DARPAに足を踏み入れる
厳重なセキュリティに守られたその研究機関の中で、私は室長とプログラム・マネージャーに会った。「軍部の意向を反映するのか?」「機密研究を行っているのか?」これらの質問に対して彼、彼女は、まず「われわれは世界のために研究している」と。
 
第七章 科学者はなぜ軍部の金を使うのか
DARPAからのお金を使えば、それだけミサイルの開発に振り向けられる予算が減るだろう?」。遺伝子ドライブの方法を開発したケビン・エスベルトはDARPAのプログラムに応募した理由をこう語った。が、拒否する科学者たちもいる。
 
^_^ 研究には金がいる。そうなるとどこかから引っ張って来なければならない。企業、個人、国、そして国の軍事的機関。そうなると消去法で、国の軍事機関であれば……と考えてしまうのは仕方のない事なのかも知れない。どんな研究でも画期的であればあるほど、軍事にも民生にも活用しうるわけで、、、ロシアや中国に先を越されるぐらいなら。曲がりなりにも民主主義が機能しているアメリカに、、、という気持ちもわからないでもない。
 
第八章 人造人間は電気羊の夢を見るか?
ヒトゲノム合成計画が発表された。しかし、人口で作られたゲノムを受精卵に移して、代理母に出産させれば、親のいない「人間」の誕生になる。問題は無いのか?私は以前取材した人工授精で誕生したことを告げられた人々の苦悩が頭をよぎった。
 
^_^ 自分も母親を知らないが、それについて苦悩し続けるほどナイーブではない。世の中の人間は(特にマスコミ)必要以上に他人の立場に立ったつもりになって騒ぎ立てる。当の本人が語っていないなら(本当に語っているという保証があるならもちろん匿名でも構わない)そんなものは他人の気持ちを理解できるつもりの偽善者の妄想でしかない。つまり聞く必要はない。
 
第九章 そして人口生命体は誕生した
ヒトゲノムの解読競争で公的チームに先んじた孤高の科学者クレイグ・ベンターは「ヒトゲノム合成計画」を嗤う。「彼らは細胞1つすら作れないではないか」。そう、ベンターだけが、人工の生命体「ミニマル・セル」の作成に20年越しで成功したのだ。
 
エピローグ マダムはなぜ泣いたのか?
 
あとがき
 
主要参考文献/取材協力者

【著者・須田 桃子さんの気になる著書リスト】

 

捏造の科学者 STAP細胞事件

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