「無知」の技法 不確実な世界を生き抜くための思考変革 スティーブン・デスーザ ダイアナ・レナー 訳上原裕美子

 

「無知」の技法NotKnowing

「無知」の技法NotKnowing

 

 

【目次】

序文
はじめに

Part 1
「知識」の危険性

チャプター1
「知っている」は良いことか?

1 知のパワー
2 概知を疑い、自分の目で見て、考えた解剖学者
3 独りよがりのうぬぼれ
4 狐とハリネズミはどちらが賢いか?-専門化の限界
5 意図的に目をつぶる−アスベストに冒された街
6 見せかけの知-なぜ、リーマンショックは予測できなかったのか?

チャプター2
専門家とリーダーへの依存

1 知りすぎているリーダーと組織
2 確信とバイアスの問題
3 期待と言う重圧
4 知っているふり
5 権威に対する盲目的な服従

チャプター3
「未知のもの」の急成長

1「知っていること」は常に変化する
2 どんどん「複雑化」「曖昧化」する世界−猫を木からおろせるか?
3 煩雑−複合−混沌
4 複雑なものとどう向き合うか

Part2
境界

チャプター4
概知と未知の境界

1 フィニステレ岬に到着して
2.「未知のもの」を避ける
3 無能であることへの恐怖-王様は服などを着ていない
4 未知との境界線でのリアクション
5 境界線を越える必要性

チャプター5
暗闇が照らすもの

1「知らない」-無知を見直す
2 未知の国の住民から学べること-命を落とした探検家
3 芸術家-天使と悪魔の間の領域に挑む
4 探検家-山1つずつ
5 心理療法士-不可知の道
6 科学者-逸脱する自由
7 起業家-「次なる未来」を発見する

Part 3
「ない」を受容する能力

チャプター6
カップを空っぽにする

1 初心に立ち返る-ムハマド・ユヌスグラミン銀行を設立できたたった1つの理由
2 コントロールを捨てて信頼する
3 「手放す」と言うプロセス
4 「わかりません」と言ってみる
5 疑いを楽しむ
6 抵抗感と向き合う
7 身体で無心になる

チャプター7
見るために目を閉じる

1 目を閉じてみる-盲目の写真家が描き出す世界
2 観察の技法-ド・メーストルの「部屋を巡る旅」に学ぶ
3 沈黙のための場を作る
4 U理論の4つの「聞き方」
5 思い込みに逆らう
6 権威や専門知識に疑問符を投げかける
7 問いかける

チャプター8
1 闇に飛び込む
2 仮説を立てる-シャーロック・ホームズとゼブラ・ハンター
3 対話(ダイアログ)で多様な声を集める
「意味のあるリスク」を取る
4 冒険する-映画監督、ヒッチハイクで旅する
実験的なアプローチ-ドラッグ合法化と言う発想
5 失敗を受け入れる-偶然の自ら絶妙なソースは生まれる
6 早めに失敗する-ゴールドラッシュから引き継がれた起業家精神
7 やらない理由がどこにある?
8 責任を引き受ける

チャプター9
「未知のもの」を楽しむ

1 愚かさを楽しむ−タロットカードとジョブズのメッセージ
2 ユーモアと言うスキル
3 好奇心とクリエイティビティー
4 大胆さと脆さ
5 思いやりと共感
6 連帯感-未知の不安に共に備える
7 しなやかさ-予期せぬ大規模災害に際して
8 アンチ・フラジャイル-折れず、むしろ伸びやかに

終りに

appendix 歩くことによって作られる道

1「問い」と共に生きる
2 歩くことによって作られる道

1「問い」と共に生きる
2 実験

謝辞
引用文献

 

 【読書メモ】

未知に対する人間の一般的なアプローチには穴がある。本書の狙いは、その穴を考察し、「知らない」と言う事との関係をもっと実のあるものにする方法を探ることである。
ページ6

 

「知らない」と言うのは状態ではなく動作だ。無知と対峙するプロセスのことだ。
ページ6

 

現代の私たちからすれば、ガレノス信者の解剖学者たちは愚かに思えるかもしれない-だが、私たちも今、同じような過ちを犯し、既存の知識の確実性に頼っているのではなかろうか。
ページ28

 

^_^ 過去の過ちを知るところから、今の自分も、誤っているのではないか?と考えられるかどうか、それが大きな分かれ目だと思う。きっと現代人の我々も、当時の現代人と同様に愚かな間違いを犯している。間違いなく。

 

言葉とは、物事を共に認識するために必要なものだと言うのに、人間は、意味をなさぬ賢者の言葉をまるで知恵の塊であるかのように扱う
ヘラクレイトス(哲学者)

 

シンプルに説明できないのなら、きちんと理解していないと言うことだ。
アルバート・アインシュタイン

 

トンカチを持っていたら、何でもくぎに見えてくる
ページ36

 

何事も、師や先達の権威のみを根拠に信じてはならない。何世代も受け継がれてきたからと言う理由だけで、伝統を信じてはならない。仏陀
ページ73

 

知とは球体である。大きくなればなるほど、未知との接線も伸びる。ブレイズ・パスカル(17世紀の数学者、哲学者)
ページ78

 

世界がかくも急速に変化しているのだから、私たちの知っていること、知っていると思っている事は、どんどん無価値・不正確になっていく一方なのだ。
ページ80

 

知識が広がれば広がるほど、自分が知れば知るほど、知らない事は少なくなると私たちは考える。確かに理屈としてはそうだ。問題はこの発想が、「知り得ること」と言う宇宙の広さは固定だ、と言う想定に基づいている点にある。
ページ80

 

危機後の我々は「理由はわかっている」と自分に言い聞かせながら、世界は理解可能なものだと言う幻想を守っているのだ。ダニエル・カーネマン(心理学者)
ページ83

 

概知の概知と言うものがある。我々が知っていると我々が知っている物事だ。一方、概知の未知と言うものがある。我々が知らないと言うことを我々が知っている物事のことだ。だが、それ以外にも、未知の未知と言うものがある。我々が知らないことを我々が知らない物事だ。ドナルド・ラムズフェルド(アメリカ国防長官)
ページ84

 

複雑な問題には、必ず、明確で、単純で、間違った答えがある。ヘンリー・ルイス・メンケン(ジャーナリスト)
ページ90

 

^_^ 複雑な問題に対する、明確で単純で間違った答えの例として、禁酒法がある。飲酒の悪癖を一掃しようとある種の善意を持って制定された禁酒法があの無法と暗黒の時代を生み出したのだ。現代に翻って考えてみても、単純な解決法には劣らぬ人気がある。これをすれば痩せる、これをだけで健康に。国単位でも、少年犯罪にはとにかく厳罰化だ、老人が増えたから安楽死を認めろとか、大麻の問題まで厳罰化だ、とか解禁だとか。単純で結果が見えるような気がする解決法が支持されがちだが、答えは恐らくそんな単純でもなく、極端な解決法には無い。答えは恐らく中間にある。例としては大麻ならば医療用の大麻の解禁、医薬品として医師に処方される場合に限定しての解禁など、ややもやっとした解決法が、正しいだろう。しかし、それは大勢を占める、厳禁派にも、解禁派にも明確な支持は得られないだろう。人々はすっきりとした解決策を求めがちだからだ。

 

矛盾や曖昧さをも楽しめる開かれた心で、黒か白かを決めつけない中庸の生き方をしていけばいいのです。ペマ・チョドロン
ページ141

 

天使と悪魔の間の空間で生きる方法を学びなさい
ページ143

 

^_^ 人は天使にも悪魔にもなれない。だからその間で、白でも黒でもなく灰色で生きていくしか無いのだ。

 

未知の領域に乗り出すときは、その過程の小さな成功や目標到達を喜ぶことが大切だ-と、エドゥルネは信じている。たとえ、最終的なゴールには至らないとしても。
ページ148

 

事実があるはず、理屈があるはずと追求するのではなく、不確かなこと、不可解なこと、よくわからないことの中に、ただすっくと立っている力
ジョン・キーツ(4人、シェイクスピアを評して)

 

本当の発見の旅とは、新たな土地を探すことではなく、新たな目で見ることだ。マルセル・プルースト(作家)
ページ211

 

予想外の展開でいつものやり方が通用しなくなった時は、物事がつまずいた時、大慌てでその「スキマ」を埋めようとするのではなく、ただスローダウンして、沈黙し、動きを止めて待つ。
ページ216

 

^_^ 慌てることで傷口を大きく広げる事はよくあること。緊急事態にも一呼吸置くと言うのは大切なこと。

 

問題は失敗そのものではなく、失敗に対する姿勢だったのだ。
ページ274

 

レジリエンスは、衝撃に崩さず、そのままでいる力のことだ。アンチ・ フラジャイル(反脆弱性)は、むしろ痛手を受ける前よりも強くなることだ。
ページ322

 

【感想】
なんというか、良い本だとは思うのだが、焦点がボケているという感じが拭えない。無知であること、無知であると自覚すること、オープンマインドであること、謙虚であること、初心を忘れないこと。
どれも書かれているのだが、どれも同一の意味ではなくそれぞれニュアンスが違う。それが羅列されていて、焦点がボケているという印象。
しまいには危機に際して従業員を解雇しなかった航空会社が結果的に好業績を残したという「無知」とは関係ないようなエピソードもあって、エピソードとしては面白いんだけど、なんだこれという感じ。

.「居るのはつらいよ ケアとセラピーについての覚書」東畑開人

【目次】

 
プロローグ
 
それでいいのか?
 
第1章
ケアとセラピー
うさぎ穴に落っこちる
 
第二章
「いる」と「する」
とりあえず座っておいてくれ
 
第3章
心と体
「こらだ」に触る
 
第4章
専門家と素人
博士の異常な送迎
 
幕間口上
時間についての覚書
 
第5章
円と線
暇と退屈未満のデイケア
 
第6章
白熊とクジラ
恋に弱い男
 
第7章
治療者と患者
金曜日は内輪ネタで笑う
 
第8章
人と構造
2人の辞め方
 
幕間口上、再び
ケアとセラピーについての覚書
 
最終章
居るのは辛いよ
 
文献一覧
あとがき
 
 

【読書メモ】

中井久夫と言う精神科医は、心と体を分けておくのは、それが便利だからと言う理由にしか過ぎないと言っていた。
ページ81

 

^_^ これもまた管理のための便宜的なモノに過ぎないのにそれが真実だとおもいこんでしまっていることのひとつだね。
 
依存労働って、本当に損な仕事だ。すべてのお母さんたちは大変なのだ。仕事が成功している時ほど、誰からも感謝されないからだ。感謝されなければされないほど、その仕事はうまくなされている。依存労働の社会的評価が低いのには、きっとそういう事情もあるのだろう。依存は気がつかれない。
ページ115

 

^_^ うまく行っている時ほど、感謝されないというのはあるね。子供がグレたりしてお父さんが呼び出されて初めてお母さんの子育ての苦労にお父さんが気づいたりして。いや、時にはお前の教育が!とか、お母さんが叱られたりして。お父さんがアンタはそもそも参加してなかっただろうがよ。なんて事もあるらしい。
 
遊ぶためには、誰かが心の中にいないといけない。それが消え去ってしまうと不安になって、遊べなくなってしまう。少年は心の中で母親に抱かれているときに、遊ぶことができる。他者とうまく重なっているときに遊ぶことができる。
ページ154

 

^_^ 遊ぶというのは心に余裕というか、安全が必要という事なのだろう。
 
民俗学で言う「ハレとケ」と言うやつだ。終わることなく繰り返される「日常=ケ」は徐々に枯れていって、「ケガレ」になってしまう。するとケガレは暴走し、デイケアの平和を脅かす。だから、時々ハレの時間を挿入することで、枯れたものを生き返らせる。ページ166
 
ケアの基本は痛みを取り除いたり、和らげたりすることだと思うのだけれど、セラピーでは傷つきや困難に向き合うことが価値を持つ。痛みと向き合う。しっかり悩み、しっかり落ち込む。そういう一見ネガティブに見える体験が、人の心の成長や成熟につながるからだ。
ページ176

 

^_^ この本のテーマの一つでもあるケアとセラピーの違いがここに現れている。
 
我々は真剣に恋をしている時、まさに何かに取り付かれているのではあるまいか。愛とはいわば例外的状態が永遠に続くことではあるまいか。日常生活の適切な均衡が乱れ、すべての行為が心の奥にある「あのこと」に彩られる(「事件」ジジェクより)
 
^_^ こうしてデイケア施設で起きていることを見ていくと、あらゆるコミュニティが一続きの直線グラフの上に存在しているのではないかと思える。経済的には何も生んでいないように見えるデイケア施設とは、対極にある莫大な利益を生み出す例えば凄腕トレーダーの集団も、よく見ると何も生み出していないのは同じだし、メンバーは歳をとるし、人は出ていく。そして中で人は傷つき、時に癒される。とにかくそうして最後はコミュニティから離れ、やがて死にゆくのだ。
そう考えると、とにかくできることは自分を受け入れてくれたコミュニティを愛すること、それぐらいではないだろうか?
 
セラピーでは「ニーズを満たすこと」ではなく、その「ニーズを変更すること」が目指されます。
これは結構大事なことですよ。世の中のビジネスの大半は、ニーズを満たすことに全力を注いでいるんだけど、ある種のニーズを満たされることで逆に行きづらくなってしまうということがあるわけです。
ページ275

 

^_^ ビジネスをケア的とセラピー的に分けて考えてみると面白いかもしれない。
 
ケアでは変化するのは環境でしたが、セラピーでは個人が変化していくことが目指されます。ページ276
 
ケアと言う親密な「依存」を原理としている営みは、「自立」した個人の集合体である「市場」の外側にあるはずだ。
ページ322

 

 

「少ないもので気分爽快に生きるコツ必要十分生活」たっく

 

 

【目次】

 
プロローグ
私もかつては片付けられない人間だった
なぜ散らかるのか
必要10分である状態とは
まず机の上を確認
 
第1章
仕事編
 
机の上を運ぶ
机の上に不要なもの
書類は1年たったら捨てる
デスクに引き出しはいらない
単機能は多機能に勝る
ペンは二本だけ
資料は国会図書館を利用する
プリンターはいらない
出張のお供はトートバック
 
第二章
日常生活編
 
洗面所に置くものは1日1回ルール
浴室はホテルを目指す
バスタオルは不要
トイレは入浴前に洗う
靴は3足
下着は3枚
服は強制ローテーション
化粧品のボトルは顔を向ける
掃除機は不要
ストック品は極力おかない
飯は鍋で炊ける
固定電話、ファックスは不要
洗濯機はいらない
スプレー缶は買わない
ポイントカードは持たない
まとめ買いはしない
 
第3章
情報編
 
スマートフォンのホーム画面は1つだけ
メールの受信箱は常に空にする
情報は能動的に集める
SNSは嫌になったらやめる
テレビの録画はハードディスクいっぱいまでする
 
第4章
趣味嗜好編
 
車は何も立たずに乗る
音楽はデジタルで管理する
レンタル品を活用する
思い出は思い出して楽しむ
趣味のものは思う存分家に置く
 
第5章
必要10分生活の心得
 
私が必要十分生活に至るまで
必要十分な状態になると片付けが楽になる
選ばなくて良い事は一流の証である
知恵を絞ってルールを作る
収納はスーツケースに入る分だけ
自分と相手の領域を区別する
必要10分生活テスト
ついつい捨てられれないものの処分例
 
おわりに
 
 
 
「なんとなくこう決めている」ことと「ルール」は違います。曖昧な決まり事は、その隙間からたくさんのものが漏れていて、いつしか巨大な山になります。ページ13
 
ポイントカードがあるから行く店と言うのは、利害関係があるから付き合っている友達みたいなものです。ページ116
 
価値があると判断した情報には積極的に対価を払うような価値観が、無料で情報が手に入る時代には、逆に必要だと思います。ページ138
 
選ばなくて良い事は一流の証である
ページ176

 

 
選択肢がないと言うデメリットが、ここでは一流品を迷わず選択できると言うメリットに変わるのです。ページ176
 
考えないと入らない位であれば、それはものが多すぎると言うことです。ページ186
 
【感想】
著者の几帳面さにやや引いたが内容的には面白かった。革新的な部分は少なかったが。
 
 
 
 
 
 

「MMT現代貨幣理論入門」L・ランダル・レイ

 

MMT現代貨幣理論入門

MMT現代貨幣理論入門

 

 

【目次】

巻頭解説
「現実」対「虚構」MMTの歴史的意義
中野剛志

第二版序文
定義

序論
現代貨幣理論の基礎

第1章
マクロ会計の基礎
1つの部門の赤字は、別の部門の黒字に等しい

第二章
自国通貨の発行者による支出
租税が貨幣を動かす

第3章
国内の貨幣制度
銀行と中央銀行

第4章
自国通貨を発行する国における財政オペレーション
政府赤字が非政府部門の貯蓄を創造する

第5章
主権国家の租税政策
「悪」課税せよ、「善」ではなく

第6章
現代貨幣理論と為替相場制度の選択
失敗するように設計されたシステム「ユーロ」

第7章
主権通貨の金融政策と財政政策
政府は何をすべきか?

第8章
完全雇用と物価安定」のための政策
「就業保証プログラム」と言う土台

第9章
インフレと主権通貨
「紙幣印刷」がハイパーインフレを起こすわけではない

第10章
結論-主権通貨のための現代貨幣理論
MMTの文化的遺伝子

巻末解説
MMTの命題は「異端」ではなく、常識である
松尾

参考文献/注
索引

 

 

国債とは実は、準備預金よりも多くの利息を支払ってくれる、中央銀行における貯蓄預金口座に他ならない。
ページ41

 

^_^ そうなると政府は銀行を優遇するためのサービスとして国債を発行していることになる。つまり国債を廃止しても問題はない?

 

我々には根本的な改革−つまり、巨大銀行の規模縮小、監視の強化、透明性の強化、金融詐欺の訴追、「官民共同」の金融機関に「公的な役割」をより多く担わせることをーが必要である。
ページ49

 

^_^ 現代社会においては、巨大独占企業はインフラに近い。だからこそ、企業は巨大で市場を独占しているならば政府はより多くの規制をかけるべきである。規制を好まないならば分割して競争に戻るべきであり、独占的に市場を支配している以上はより多くの公共的な政府の介入を受けることを甘んじて受けるべきである。
例えばシェア25%を超えたら、別次元の規制を受ける。価格改正の場合に申請が必要など。

 

例としては、AmazonGoogle、携帯3社、トヨタ、他、水道部品などの小さな部門でも独占的であれば政府の介入を受けるようにしてほしい。
極論すれば時には政府は大企業の足を引っ張るべきである。
それによって資本主義の根幹である競争が維持される。

 

もっとも「不健全な」予算政策とは、「均衡予算」−一定期間(通常は一年間)における、租税収入と政府支出をぴったり一致させる予算 −を盲目的に追求することである。
均衡予算が意味するのは、政府の支出によって供給された政府の通貨がすべて納税により「返却されて」しまい、その結果非政府部門には何も残らない
ページ49

^_^ 面白くなってきた。

 

国内民間収支+国内政府収支+海外収支= 0
ページ59

 

言葉
ゴルディロックス
3匹のクマの童話より。ヒロインがちょうどいい温度のお粥を選んだことから。ちょうど良いこと。

 

最善の国内政策とは、完全雇用と物価安定を追求することである
ページ81

 

^_^ 完全雇用ね。働きたくねーなw

 

貨幣を裏付ける唯一のものが「間抜けを騙して渡せると思うから、私はドル紙幣を受け取っている」
ページ119

 

^_^ 笑える。

 

まとめ
貨幣が貨幣たりうるのはその通貨で納税できるからである。つまり円で納税できるから人々は円を受け取るのである。政府に対する借金も納税義務も円で返済できるから人々は円に価値を認め、円を受け取るのである。

 

政府が租税を必要とするのは、歳入を生み出すためではない。通貨の利用者である国民が、通貨を手に入れようと、労働力、資源、生産物を政府に売却するように仕向けるためなのだ。
ページ128

 

ビットコインは貨幣ではない。ビットコイン保有者は、租税を支払ったり、借金を返済したり、他の取引を行ったりするために、結局それを国家の計算単位−例えばドルやユーロマイナスに交換しなければならない。
ページ181

^_^ なるほど。この本の通り貨幣の定義が税金の支払いに利用できるだから、今のところビットコインは貨幣ではないということになるね。ちょっと納得。

 

本当の金持ちは、議会から課税免除を手に入れるので租税を支払わない。
ページ280

 

^_^ まぁ、あのトランプもほとんど税金払ってなかったらしいしね。

 

まとめ
政府の支出を租税によって賄うという考えを捨てるべきである。つまり政府がやるべきことを歳入不足を理由に放置すべきではない。租税は収入としてではなく、インフレ調整、飲酒、喫煙、環境破壊などの悪行を減らすために利用しすべし。
ただし、格差是正のための再分配よりも事前分配を支持する。取り上げる前に分配を是正するのだ。経営者の賃金を下げ、最低賃金を上げる。
歳入を当て込んでの悪しき素材の例として、
消費税=市民の購買力を取り上げてどうする?
法人税=経営者がタックスヘイブンを求めての本社移動や効果の疑問な宣伝広告費などでの経費計上など税回避のための経営上の不合理な行動を促す。
社会保障税=人々の働く意欲を削ぐ、また社会保障税を必要としないロボットの導入を促進させ、失業率を上げる可能性がある。

 

^_^ 租税を歳入とは考えず、別のものとして必要な歳出を行うというが、それでもインフレを避けるためには無尽蔵に歳出できるわけではないので、MMTで理想郷が現れるわけではないが、税の形はもう少し改良できるかもしれない。
しかし、いつになったら働く=幸せの押し付けから世界は自由になれるのだろうか。

 

ドルを「刑務所行き免除カード」とみなす考え方が、なぜこんなにも浸透しないのか、私にはわからない。
ページ302

 

^_^ たしかモノポリーでも刑務所から出るのにお金払って出られたはずw

 

変動相場制の主権通貨における財政赤字は、決して支払い能力のリスクを伴わない。主権を有する政府には常に、自国通貨で売られているものなら何でも購入できる「支出能力」がある。政府は、決して「市場原理」に支配されない。政府は銀行口座に振り込むことで支出し、このような振り込みが「枯渇する」事は決してありえない。
ページ330

 

^_^ あくまでこれは自国通貨に限ったもので、外国の通貨建ての債権は大きなリスクが伴う。

 

国家は、国民の1部を輸入品を消費する余裕がないほど貧しくしておくことによって、マクロ経済の安定を維持しようとすべきなのか?
一般的に、失業と貧困は、通貨の安定を維持するためなら容認できる政策手段なのか?
ページ414

 

通貨は、その発行者に対してその通貨で支払うように強制される義務があれば、受け取られるだろう
ページ497

 

「主権を有し、「不換」通貨を発行する政府は、その通貨において使用払い不能になる事は無い」とMMTは主張する
ページ511

 

【感想】


数式が出てくるところは正直お手上げでした。しかし、読み物としてはエキサイティングで面白い。
個人的なMMTに対する見解としては、まず赤字が許されるとして、次の歯止めは何か?ということ。
MMTといえども、国内の人的、物的な資源が増えるというわけではない。その中で、さらなる政府支出が許されるとして、それは政治家や権力者、またはポピュリストの無節操な出費を加速させ、無駄なものに国力を注ぎ込むという事態にならないかということ。
今でも無駄な橋、無駄な道路、無駄なイベント孫受け、ひ孫受けがまかり通っているのに。
もう一つは経済的にはハイパーインフレは政府が選択しない限り、起きないというが、実際にハイパーインフレを選択した政府がある以上、政治的にはありうるということで、経済学者が経済的にあり得ないと言ってもそれは現実には起こり得ないということにはならない。
その点では経済学者はやはり経済学からしか物を見れていないなぁと感じた。

「なめらかな社会とその敵」鈴木健

 

なめらかな社会とその敵

なめらかな社会とその敵

  • 作者:鈴木 健
  • 発売日: 2013/01/28
  • メディア: 単行本
 

 

 運動を開始するシグナルとなる準備電位は、その運動しようとする意志のタイミングよりも300ミリ秒ほど早く始まると言うことである。つまり、意志より前に運動が始まっていると言うことになる。リベットの解釈によれば、意思と言うのはいわば拒否権である。自由意志と言うのは、複数の並行して回避される運動プロセスの中から、適切でないプロセスを拒否する機能に過ぎないと言う。だから自由意志は運動の準備電位の前でなく300ミリ秒後に起きると言うことになる。
その適切さが「一貫性」を意味するときに、人は運動を後付けで合理化することになる。人間の脳の中には、こうした機能が最初から備わっている。
ここ50年ほどで明らかになりつつ神経科学の知見は「個人」の「主体」概念の同一性を否定しているように見える。
自由意志があるから責任を取るのではない。責任を追及することによって自由意志と言う幻想をお互いに強化しているのである。ページ31

 

^_^ 自由意志が幻想であるとすると我々は所詮、自己の状態と外部の環境によって反応するオセロに過ぎないことになる。黒ければさらに変わりうる。白ければ黒く変わりうる。その影響はうちと外の環境によると。

 

 

貨幣へのフェティシズムは、人間の持つプリミティブな身体性から生まれる価値観を押さえつけ、非人間的な行為へと走らせる要因であると批判されてきた。要するに、手段である所のお金が大事なものになりすぎてしまい、大切にしなければならない生き方や感じ方を犠牲にするようになってしまった。世の中の多くの問題は、お金のために強欲で非情になってしまった人々によってもたらされている。ページ52

 

^_^ 凄まじいまでのお金に対する批判。しかし同意する部分は多い。しかし、同時に名誉欲というものや仲間意識というものも同時に問題をもたらしているのも事実だが、それらもお金という価値観と深く関わっている。

 

 

全世界の全議題に対して、すべての人が政治的関心を持つことを要求するのは現実的ではない。人はすべての議題に対して政治的関心を持つ必要は無い。人は政治のために生きているわけではない。他のもっと素晴らしい体験のために生きているのであって、政治はそのための手段の1つに過ぎない。ページ154

 

^_^ 時々われわれはその現実を忘れ、政治に関心のない人を非難する。いつの間にか民主主義はすべての人に税制、国防、福利に至るまであらゆることについて考察を巡らせ、時間を使い投票することを要求している。
わからないときにどうするか?ということ、政治的無関心を否定するのではなく、それでも回る民主主義を考えだすのもアリなのかもしれない。

 

 

イタリアに囲まれた人口30,000人の小国サンマリノでは、外国人が裁判官をしていると言う。これは、裁判官をどう選んでも、どちらかの側の血縁関係があったりして、客観的な裁判ができなくなるからである。
ページ162

 

^_^ これは面白い。そして英断だろう。小さなナショナリズム固執していたらできることではない。そう考えると実はアメリカ軍に戦力を外注している日本は賢いのかも。実際、外国に本土を侵略されることも、侵略することもなかったわけだし。

 

アドホック=目的限定の

 

自由意志を持った一貫した自己と言うイメージは、他者から責任を追及されることによって強化される。マーシャル・マクルーハン(メディア論)は、印刷物を黙読することによって「個人」が形成されてきたと言う。
ジュリアン・ジェームズ(心理学)の二分心と言う考えによれば、およそ3000年前までは、人類は意識を持っておらず、右脳から響く「神々の声」に従っていた。心は基本的に2つに分かれていて、左脳は右脳の指令に従っていた。そして左脳が聞く右脳の声は、神々の言葉として受け入れられていたのが、3000年前に言語の発達によって意識として統合され、神は沈黙した。
ページ174

 

 

^_^ 一貫した自己と言うのは、それが管理しやすいがゆえに採用された一種の欺瞞で、実際の個々人のあり方とは異なるということか。その点でも、男女や年齢、偏差値なども管理しやすいというだけで、モノの本質からはずれていることが多い。
例えば僕は戸籍上は男だが、完全無欠の100%男ではないだろう。心の中に女性的な部分もゼロではないと思う。
今後はコンピューターの処理能力が上がることで、管理しやすい二元論から、モノのありようをそのまま管理できるようになるのかもしれない。
ゼロイチで考えるコンピューターが、ゼロイチで無理やり処理していた世界観を覆すかもしれないと思うと面白い。

 

ノーベル賞科学者であるジョシュア・レイダーバーグ(分子生物学)は、このことを「人は人ゲノムと人常在菌ごうゲノムから成り立つ超有機体である」と表現した。
ページ176

 

アイオワ大学はインフルエンザの流行の予測に予測市場を用い、62人の専門家による市場によって、米国質病予防管理センターのレポートよりも早く結果を予想することに成功している。ページ192

 

^_^ ただの予想やアンケートよりも、このやり方は有効だろう。専門家に限定しているのも素晴らしい。

 

著者が最も関心を持っているのは、複数のパラレルワールド同士で、人々はどのようにコミニュケーションをとっていけば良いのか、そこにおいて国家はどのような存在となり得るかと言う政治哲学上の問題にある。
ページ207

 

^_^ もうすでに我々はパラレルワールドに住んでいると言えるのかもしれない。トランプの陰謀論の世界に生きる人、もっと言えば、唯一絶対神のいる一神教に生きる人、信奉するブランドに生きる人など、生きる人の数だけ世界はあり、相互の完全な理解は不可能であり、それは古来から変わらない。その中で人々は衝突し、時には妥協して生きてきたのだ。誰もが思っている自分が見ている世界感が正しいと。

 

自由とは、与えられた選択肢の中から選択することが可能であると言うことでは決してなく、複雑なまま生きることが可能であることを言う。複雑なまま生きることができれば選択肢は自然に生成する。新たな選択肢を生み出すことができる可動領域の複雑性の広さ、それが自由なのである。ページ222

 

【感想】

正直言って数式には一切、ついていけなかった。しかし、エキサイティングな議論はとても面白く読むことができた。
自分の中の様々な要素をそのまま出すことができることの自由、便宜的な個人という単位からの自由など考えさせられることは多い。
そしてこの本を読み終えて感じることは、仏教の言う中道の凄みだ。
この本に度々登場するなめらかなというのは「中道」と一致する部分が多いと思われる。万物は白か黒かではなく、本当は白寄りの黒だったり、黒寄りの白だったりするのだ。人間も、人間のすることも。
人間がより人間らしく曖昧であるためにゼロイチのコンピューターやインターネットが役立つというのもなかなか面白い現象だ。

 

『ゼロから作る科学文明』著/ライアン・ノース

 

【評価】65点

【目次】

1 あなたがどの時代に閉じ込められたかを判別する方法
便利なフローチャート

2 あなたが紀元前20,000,000年前からあなたが紀元前200000年から紀元前50000年の間に閉じ込められたとお考えで、「ここの人間たちはいかれていて、私はもう間違いなく永遠に絶望的だ」と思われている場合に特にお伝えしたいこと

3.あなたの文明のために必要な5つの基本技術
3.1話し言葉
3.2書き言葉
3.3使いやすい数
3.4科学的方法
3.5余剰カロリー

4.測定単位は何でも良いとは言え、本書で使われている標準的な測定単位を発明し直す方法

5.われらは農民なり。世界を貪る者なり

6.人間は進化したけれど、まだ農業や品種改良が行われていない時代に閉じ込められたとすると、他の人間たちは何を食べているのでしょうか?それに、古代人はとんでもなく馬鹿なものを食べているに違いないので、それが得かどうかどうやって見分ければ良いのでしょう?

7.過去に閉じ込められたタイムトラベラーに役立つ植物

8.過去に閉じ込められたタイムトラベラーに役立つ動物

9,基本的な栄養少しでも長いく生きるために何を食べるべきか

10.技術で解決できる、人間が抱きがちな不満
10.1「喉が渇いた」
10.2「お腹がすいた」
10.3「気分が悪い」
10.4「この辺にある天然資源は最悪。もっとましなものが欲しい」
10.5「めんどくさい。代わりに働いてくれる機械が欲しい」
10.6「掃除じゃなくて、本当に何もしたくないんだ。魔法のようにスイッチを入れるだけで機械に働いて欲しいんだ」
10.7「もう夜遅いし、寒くなってきた。どれぐらい遅くてどれぐらい寒いか知りたい」
10.8「人々から素敵だと思われたい」
10.9「いいセックスがしたい」
10.10「燃えないものが欲しい」
10.11「読むものが何もないんだけど」
1 0.12「ここは最悪。どこでもいいから他のところに行きたい」
10.13「誰からも頭のいい人だと思われたい」

11、科学者とは何か?どうやってものを作ればいいのか?

12.ハイタッチについてこじゃれた文章で哲学の主要学派をまとめて紹介

13.視覚芸術の基本。あなたに真似できるスタイルもいくつか

14.体を癒す:薬とその発明の仕方

15:基本的な応急(あなたの場合、唯一の)処置

16.音楽、楽器、音楽理論の作り方。
あなたが盗作に使える、すごくいい歌も紹介。

17. コンピューター:あなたがあまり一生懸命考えなくても、ハンドルか何か回すだけで済むように、頭脳労働を肉体労働に変える方法

コンピューター:あなたがあまり一生懸命考えなくても、ハンドルか何か回すだけで済むように、頭脳労働を肉体労働に変える方法

まとめ これで色々と心地よくなったでしょうお礼なら結構ですよ。

補遺
A技術の系統樹
B周期表
C役立つ化学物質とその作り方それらの物質がいかに間違いなくあなたの命を奪うか
D論理的な議論の様々な形式
E三角関数表。日時計作りに不可欠なため掲載。
F人類が突き止めるのに時間がかかった普遍定数一覧。今あなたは、自分にちなんでこれらの定数を命名できます。
G角音の周波数。本書に記載したすごくいい歌をあなたが演奏できるように。
演奏できるように。
Hかっこいいギアやその他基本的な気候
I 人体の役立つパーツがどこにあり、それらはどんな働きをするか

著者あとがき
訳者あとがき
参考文献
原注

【感想】

0で割ることはできないよ、だって、答えが無茶苦茶で、どうやったら解決できるか、誰もまだ知らないんだから ページ54

 

正の数と負の数から割る数を0に近づけていくと、正の数の場合はどんどん増えていき、負の数の場合はどんどんと減っていく、結果、正の数からアプローチするとゼロでは割ったときには答えは無限大、負の数からアプローチすると0では割ったときには答えはマイナス∞になってしまう。つまりは数学と言うシステムそのものにこの部分にバグがあるので操作をしてはいけないと言う禁止事項になっている。

 

科学者は超オタクと思われることが多いですが、科学の哲学的基盤は実際、まったくのパンクロック的無秩序です。具体的には、それは次のようなものからなっています。決して権威を尊重するな。誰のどんな言葉も決して鵜呑みにするな。そして、自分が知っていると思うものすべてを、自分で正しいと確認するか、間違っていると否定するために検証せよ。ページ59

 

おめでとうございますあなたは今まさに、「文明の純利益になるとの謳い文句で、自分の労働を半分にする」ことを発明されたのです!ページ77

 

上の文章は休耕について、述べている。慣用句で「働かざるもの食うべからず」と言うものがあるがこの言葉の弊害はもはや目を背けて良い状態にはないとすら言える。

 

「働かざるもの食うべからず」と言うのは驚くべき暴言である。「食うべからず」と言うのは死ねと言うのと同義である。

 

世界には無駄な労働が溢れている。本当に必要なものではないことが労働として行われ、しかもその労働者自体が苦しんでいる。

 

僕個人的には「営業」と言う職業は不要ではないかと考えているがこれは自分でも暴論ではないかと考えてもいる。

 

ただ、自然を相手にする職業で言えば農業の休耕と同様に漁業にも同じことが言え、1つの魚種、例えば、イカやサンマなどが不漁だといいながら取り続けるのはやはり悪しき労働だといえるのではないか?

 

「資源を回復するために働かない」と言う選択肢が必要ではないか?そう考える。

 

しかし、海洋資源の復活のために漁師の皆さんに3年間の休漁をお願いしその間の生活費を税金で負担すると言い出したらおそらく世間はそれを認めないだろう。

 

その3年間、どんなに生産性が低かろうが何かしらの労働をさせろと言い出すに決まっている。「働かざるもの食うべからず」と言う慣用句には言う側の働きたくない思いと、働かずに済む人へのルサンチマンが存在し、それが「働かざるもの食うべからず」と言う言葉に力を与え、世界がより良い方向に向かうことを妨げている。

 

 

ピンクグレープフルーツはアメリカ政府の原子力の平和利用プログラムによって突然変異が起こされ開発された。ページ86

 

竹筋コンクリートが存在する

 

竹は鋼鉄の半分ほどの引っ張り強度がある

 

フランスでベルサイユ宮殿の敷地内にジャガイモが栽培されたことでしょう。この時、この新しい謎めいた王宮の野菜を守るため「監視人」が置かれました。夜になると監視人を役目を終えて帰るので、この新しい作物に興味津々の市民たちが畑を襲い、やがて自分たちもジャガイモを栽培するようになりました。ページ104

 

^_^ うまいこと考えたなぁ

 

ソビエト時代からロシアでは狐の家畜化が行われ、大人しく飼いやすい狐が販売されている。ページ129

 

ビタミンの名称で、アルファベットや数字が途中飛ばして使われているのは、昔、ビタミンだと思われていたものの、実はそうでは無いことが後でわかった物質がいくつもあったため。ページ152

 

混合液を徐々に加熱すると、沸点が最も低い液体の最初に沸騰すると言うのは、よくある誤解で、実際にはそのような事は起こりません。数種類の液体の混合液の沸点は、実は複数ではなく、1つでしかないのです。しかし、混合液が沸騰する時発生する常備の中に含まれる量が最も多いのは、沸点が最も低い液体です。そのためこの上記を液化すると、より上流が澄んだ液体が得られるのです。ページ167

 

^_^ 勉強になるなぁ。

 

食塩水の場合、最初に形成される氷は、残った液体よりも食塩の濃度が低くなります。この氷を回収し、溶かし、再び凍結蒸留すると、より低濃度の食塩水ができます。同様に、凍った海水を溶かす場合、最初に溶ける氷は、塩分濃度が最も高く、残った氷は塩分濃度が低くなっているでしょう。ページ167

 

^_^ そう考えると凍結蒸留によって塩を作ることも可能かもしれない。最後の部分では加熱が必要だろうが。

 

馬力とは「75キログラムの荷重を1秒間に1メートル動かすときの仕事率」(中略)健康な人間は、短時間なら約1.2の馬力が出せる。ページ173 

 

 

^_^ 人間が1時とは言え今より馬力が出せるなんて。これは馬力の数的定義そのものが間違えているのではないかとすら思える。

 

フランスで1670年に制定された犯罪に関する法令は、(中略)自殺は訴追の対象となり、起訴されたものは必ず出廷しなければならなくなったのです……遺体を切り開かれ、中に塩を詰められて。ページ195

 

^_^ 自殺は犯罪と考える一方で、現代社会では自殺した者の意思は重く見られる。それが結果的に自殺を増やすことにつながっているような気もある。

 

近代以降は、私たちは食塩にヨウ素を噴霧して、成人一人当たりの推奨摂取量0.15ミリグラムが何を食べていても確実に摂取できるようにしています(訳注日本では海藻食べる習慣があり、それ以上要素を摂取する必要がなく、ヨウ素化塩は認可されていない)(中略) 1924年に要素間俺が全米で導入された時、それまで要素が欠乏していた地域の知能テストの得点が平均で15ポイントも上昇しました。ページ199

 

^_^ 日本人の誰もが海藻を食べるわけではない。つまりヨウ素が不足している日本人が存在しているのではないだろうか?

 

石鹸の分子は親水性の腕と親油性の腕を持つため、油汚れを水で覆うことができる。ページ281

 

センメルヴェイス反射=深く根付いた信念に矛盾する情報を、ほとんど反射的に即座に拒否する人間の傾向 ページ283

 

^_^ これは実はあらゆるところに転がっていると言えるかもしれない。

 

鞭を打つときの音は、実は、鞭の先端が音速を超える時に起きる小さなソニックブームです。ページ288

 

着色に使う物質のうち、染料は、水や油などの触媒に溶けるもの、顔料は解けないものを言うページ414

 

『累犯障害者』著 山本譲司

 

累犯障害者 (新潮文庫)

累犯障害者 (新潮文庫)

 

【評価】95点

【目次】

序章 安住の地は刑務所だった−下関駅放火事件

第1章 レッサーパンダ帽の男−浅草・女子短大生刺殺事件

第2章 障害者を食い物にする人々−宇都宮・誤認逮捕事件

第3章 生きがいはセックス−売春する知的障害女性たち

第4章 ある知的障害女性の青春−障害者を利用する偽装結婚の実態

第5章 多重人格と言うおり−性的虐待がうむ情緒障害者たち

第6章 閉鎖社会の犯罪−浜松・ろうあ者不倫殺人事件

第7章 第7章 ろうあ者暴力団−「仲間」を狙い撃ちする障害者たち

終章 行く行き着く先はどこに−福祉・刑務所・裁判所の問題点

あとがき
文庫版あとがき
解説 江川紹子

 

【感想】

 あっという間に読み終えてしまった。
 累犯障害者というのは度々、犯罪を起こしたり、犯罪に巻き込まれてしまう障害者のこと。
 著者は元国会議員で秘書給与の流用で刑務所に1年半ほど入っていた人物。
 国会議員という法を作る立場から獄中という法を執行される立場を経験してきたある意味、貴重な人物と言えます。
 その彼が語る日本の問題点は刑務所はもちろん、福祉、裁判制度、警察制度まで多岐にわたり、同時に複合的で、どれか一つでは解決できないほど、複雑に絡み合っていました。
 ぼくも含めて人間というのはその発言内容そのものよりも、誰の発言かを重視してしまう傾向があります。
 著者は元受刑者、粗雑に言えば前科者です。その時点で彼の主張は聞くことなく、彼の意見には価値がないと判断するのは簡単です。
 ネットでよく言われる「お前が言うな」です。
 しかし、この短絡的な考え方はとても大きな損失を生みます。
 社会的にも、そして個人的にも。
 前科者だから、低学歴だから、外国人だから、左翼だから、右翼だから、男だから、女だから、子供だから、年寄りだから、と発言者にレッテルを張ってその考えを排除してしまえば、社会の視点は偏り、いわゆる強者による強者の議論に終始してしまいます。
 その結果の官僚主義であり、政治、政策の硬直化です。
 泥棒対策は東大卒よりも元泥棒に聞くべきですし、引きこもり対策には20年引き篭もったベテラン引きこもりの意見を聞くべきです。
 児童政策に子供の意見を聞かないのは愚かですし、障害者政策に障害者の意見を聞かないのは愚かです。
 全ての人が他の誰かとは違うのですから、社会に対して、他の誰かとは違う貴重な意見を述べることができるはずです。
 ですからどんなことでもこの意見に関してこの人の意見は聞く価値があるのかと、一旦立ち止まって考えてみる必要があるのです。
 例えそれがエリートでも、犯罪者でも、です。
 現代社会ではそれがうまくできていません。ネットでは元犯罪者がとか、不倫してたくせにとか、議論とは違うところで発言を封じようとするレッテル貼りが横行していますし、テレビのワイドショーではどんなことにでもタレントや落語家、お笑い芸人の意見が無責任に放送されて、ただテレビでよくみる人というだけで、専門家でも、経験者でもない彼らの意見が大きな力を持ったりしています。
 本来、落語家は落語に関して話すとき、タレントは芸能界について話すときには、その発言には聞く価値はありますが、門外漢のことに関してはその発言には大した価値はないはずなのにです。
 その点、この本の著者の意見は国会議員から逮捕、服役という経験から言っても、とても貴重で価値のあるものと言えるのです。
 文章もやや硬いというか、古いというか、という部分もありますが、基本的には読みやすいのでおすすめです。
 社会問題は問題を多くの人が認識するところから解決の一歩は始まります。その点でも多くの人に読んでもらいたい一冊です。