書評・目次・感想・評価『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」』
98点
読了まで2時間半
Q1】どんな人に薦めたい?
ロジカルシンキングを信奉している人。
自分をエリートだと思っている人。
日本は法治国家だから、法に触れなけれれば何をやってもいいと思っている人。
Q2】読みやすい?
理路整然としていて、とても読みやすい。
Q3】何度も読みたい?
グレーゾーンを選びたくなった時に戒めとして読み直したいので、手元に持っておきたい。
Q4】立ち読みするならどこがお勧め?
「第三章 システムの変化が早すぎる社会」。ビジネスは法に触れない限り自由で、倫理感や正義に囚われていては他に先を越されるという考え方の誤りを指摘してくれる。
Q5】この本の強みは?
エリートのあなたに将来、塀の向こう側に落ちるような選択を選ばないための指針を示す。
「美意識」というビジネスには程遠いような感覚が実はビジネスを進める上での大切な柱の一つとなることを教えてくれる一冊。
是非、みなさんに読んでもらいたい。新書なので手軽ですし。
Q6】この本の弱みは?
小説を読み、哲学を学ぶことで倫理観を育てることは理解できるのだが、その倫理観を美意識にまとめるのはちょっと無理がある。絵を鑑賞しても倫理観は育たないし、哲学を学び、小説を読んでも、美的センスが磨かれるとは思えないので(全くないとは言わないが)、また2つの別の話になると思う。
倫理観と美的センス共に大切なのはよく理解できたのだが。
『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」』目次】
第1章 論理的、理性的な情報処理スキルの限界
第2章 巨大な「自己実現欲求市場」の登場
第3章 システムの変化が早すぎる社会
第4章 脳科学と美意識
第5章 受験エリートと美意識
第6章 美のモノサシ
第7章 どう「美意識」を鍛えるか
世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」 (光文社新書)
- 作者: 山口周
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2017/07/19
- メディア: 新書
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『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」』極個人的読書メモ】
第1章 論理的、理性的な情報処理スキルの限界
企業経営はアート、サイエンス、 クラフトの3つのバランスによってなされるべきだが、 アートは説明責任を果たし得ないので、議論になれば敗北する。
アートを重視した企業の成功例としてはジョブス擁するアップル、 そして日本企業ではソニーなど、実は多数ある。
著者も論理を無視しろと言っているのではなく、 論理の上で選択する場合には直感、アートがあり、 美しいビジョンがあるべきだということだ。
3つのバランスを取るためにはアカウンタビリティーに劣るアート をオーナーなどが守る必要がある。
ユニクロや良品企画はアートを担当する人材は企業トップ直轄で権 限を与えている。
日本の企業はサイエンスに傾注しすぎ、 過去の成功体験から踏み出さず数字を求めるばかりだったので現場 は疲弊し、悲しいかな企業の不正が頻発している。
アートを許容しない企業に天才は存在しえない。 天才のいる企業といない企業、勝つのはどちらだろうか?
!目からウロコが落ちた。ロジカルこそ、至高という考え方が、 今の日本にはある。むしろ、 欧米はもっとロジカルだから日本人はもっとロジカルシンキングを 学んで欧米に追いつかなくてはいけないという風潮すらある。
しかし、 それはもう古いなんてものはじゃないのだ欧米を追いかけていれば いい時代なんてとっくに終わっているのに!
第二章 巨大な「自己実現欲求市場」の登場
どんなプロダクトもサイエンスの力で徹底的にコピーすることがで きるが、その製品の背景にあるストーリーはコピーできない。
日本人はフランス人と並んで美的センスの高い人々だと考える。
過去、日本を訪れた外国人たちの多くが日本の美を褒め称えた。 日本人は先人たちのおかげでアートにおいてはアドバンテージがあ る。我々はそれにあぐらをかくことなく、 磨いて次代に繋いでいかなければならない。
!日本人がそれ程、美的センスに優れるとは思わないけど、 確かに美しいものがあるのは理解できる。 他国と比較してどうかはわからないが。 それが資源であり資産だというなら、それはとても喜ばしい。 AIやビッグデータの時代にそれをどうやって活用するか、 試されているのかもしれない!
第三章 システムの変化が早すぎる社会
法に触れていないのだから問題ないという考え方は危険。 今はシステムの変化が早すぎて法律が追いついていないという現実 が常態化している。
その結果、 新しい法は過去の罪を罰しないという法の原則が成り立たなくなっ ている。
後から法ができる形で罰せらることが起きているのだ。
エリートは目標を達する意識が強いので法がギリギリのところまで 接近することが多い。結果、塀の向こうに転落する。
犯罪を犯す危険を避けるためにエリートは美意識( 自分なりの確固たるものモノサシ)を持つ必要があるのだ。
グーグルは邪悪にならないと社是で決めている。
ジョンソン&ジョンソンは、医師と患者、社員、地域社会、 株主の順番で重視するとしている。 それの順番は変えてはいけないとしている。
欧米は罪の文化、日本は恥の文化。 自分のコミュニティ日本は対する恥が重視されている。 したがって内輪の常識に囚われて社会の常識を逸脱するものが増え る。
!卓見だ。 エリートの奴らズルばっかりして汚いぐらいの認識しかなかったぼ くにはショックだ。
4章 脳科学と美意識
ダマシオを考案したソマティックマーカー仮説。
人間は判断時、ロジカルではなく、 直感的な身体反応によって選択肢を削り落としている。 その上でロジカルな選択を行っているのだ。
その証拠に情動を失った患者はロジカルな部分に欠損がないにもか かわらず、生活レベルの選択もできなくなってしまう。
現在、 リーダーシップにもっとも大切だと言われているのは自己認識力で 、その自己認識力を、 高める方法としてマインドフルネスがビジネスエリートに大流行り 。
マインドフルネスとは自分の今に焦点を合わせる瞑想に近いこと。
!これはマインドフルネスの本も何冊か読まなきゃダメかな。 直感でありえない選択肢はそぎ落としているのはなんとなく実感が あるなぁ。それが情動とイコールとは思わないけど!
5章 受験エリートと美意識
オウム真理教はとてもサイエンスに偏った組織であった。 階級が決められ、どうすれば上にいけるかが明確であった。
どちらもロジカルに寄り、 それが社会にどのような貢献をするのか? よりも利益を上げるという点のみに焦点を当て続ける業界であった 。
彼らは美意識なきエリートだ。 その結果が先の不祥事の原因になっている。
しかし、彼は一貫して無罪を主張した。 自分は命令に従っただけだと。そして、 彼自身もまた自分を無罪だと信じていた。
システムを破壊しようとするのはシステムから取りこぼされたエリ ートたちであることが多い。
しかし、彼らの試みは結局、 ダメシステムAからダメシステムBになるだけで失敗に終わる。
本当にシステムに従うことによって陥る悪を避けることができるの はシステムの中に居ながらそのシステムを俯瞰できる美意識を持っ たエリートなのだ。
!システムの中のエリートでありながらシステムを俯瞰し、 システムをよりよく変えていくというのはとてもとても難しく思え る。
エリートたちの不祥事を見ていても、 落ちこぼれの自分を省みてもそう思う。 だか革命ではなく改革というのは理解できる。 物事は単純ではない。システムは洗練されて行くべきなのだ。 別のシステムに乗り換えてしまえは多くの血が流され、 また新しいシステムは改革よって磨かなければならない!
6章 美のモノサシ
新しい事を行う場合、 未だ法律が追いついていないことはよくあること。 その中では判断を外の法には求められない。
するとそれはリーダーの善という内部判断に任せられる。
人を感動させる美は顧客マーケティングでは誕生しない。
リーダーが責任を持って人を選び、 デザインを選ばなければならない。
7章 どう「美意識」を鍛えるか
絵を見て対話をする。見えていなかった何かが見えてくる。また、 他人の視点を知ることで視点のバラエティを知ることができる。
哲学を学ぶ。 哲学にはコンテンツ的にはすでに誤りだったとされているものも多 いが、彼らがなぜ、そのような答えに至ったか? 当時の社会的常識とどう向き合ったかを学ぶ価値がある。
詩を学ぶ。詩はレトリック、メタファーを学ぶことができる。 リーダーの仕事とは徹頭徹尾コミュニケーションである。
レトリックは人を鼓舞し、 メタファーを使って人に伝える正にリーダーに必要なことなのだ。
!エリートにはいいイメージがなかったが、詩を愛し、 哲学を学び、絵を鑑賞するエリート。 そんなエリートなら会ってみたいし、そうありたい。いや、 ぼくはエリートたりえないな。やっぱり外野でいいや。でも、 詩を愛し、絵を鑑賞し、哲学を学びたい。
98点 2時間半
!非常に面白かった。 ただ新しい時代を連れてくるのはエリートではなく、 エリートでもなく、はみ出しものでもない、 もっと微妙な人たちかもと思う。 革命を主導したのは王様ではなく、 ブルジョワだったのは偶然ではない。 システム利益の中心である王様= エリートにシステムの改革は無理。 やはりエリートでも完全なはみ出しものでもないものが新しい時代 を作るだろうとぼくは思うんだ!