『データでいのちを描く―テレビディレクターが自分でAIをつくったわけ』書評・目次・感想・評価

【Q1】どんな人にオススメ?

 人口知能やビッグデータについて知りたいけれど、専門書や難しい本は読みたくないと思っているあなた。ふわっと人工知能ビッグデータについて学べる本です。この本を読んでからNHKアーカイブなどでディレクターの著者が制作に携わった番組をみれば一段と良くわかるかもしれない。

www.nhk.or.jp

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【Q2】この本の弱みは?

  残念ながら「わかりやすく多くの人に」を重視して書かれた本なので、人工知能ビッグデータに関する深い知識を学ぶことはできない。それでも入門の入門や、ふわっと理解するのには役に立つ。

【Q3】この本の強みは?

 なんといってもわかりやすいということ。NHKのディレクターの書いた本なので、実際の番組もアーカイブ(受信料払ってるのに有料だけどな(怒))から観られる。ビックデータや人工知能の現代における利用の一例としてとても興味深い一冊。 

データでいのちを描く―テレビディレクターが自分でAIをつくったわけ

データでいのちを描く―テレビディレクターが自分でAIをつくったわけ



【『データでいのちを描く―テレビディレクターが自分でAIをつくったわけ』目次と読書メモ】

著者は震災を契機にビッグデータの利用について考え始める。
 
第1章:ビッグデータが誰も見たことのない景色を描いた 
 
震災ビッグデータの解析により、津波で流された場所には、地震発生時より、津波を受けた時間の方が人が多かった場所があった。地震後、家族や家財を心配して沿岸の家に戻った人がたくさんいたのだ。
 
^_^ これは衝撃だ。津波を知っていたらたくさんの人が助かったという証拠なのだから
 
ページ042 ビッグデータは料理すれば価値が増すのです。みるべき視点から、多くの人の気づきを得られる形になるように再構成して、そこから何かしらの提案を導き出したときに、初めて「データを活用した」と言えるのではないでしょうか?
 
^_^ データを使って人の行動に影響を与えて初めて意味があるということか。
 
データを見る目は全体を俯瞰する「鳥の目」、細かくデータを切り分ける「虫の目」、データの流れを見る「魚の目」がある。
 
■ワード
「情報ミルフィーユ」 情報をレイヤーのように重ねていき、そのレイヤーを外したり、重ねたりして、情報を見つけ出す。
 
 情報の全量を収集し、全量を公開する。
 その上で切り口を独自の視点で見せる。
 それによって恣意的にデータを加工している疑惑から逃れることができる。
 さらに全量データを見た他者から、新たな知見が生み出される可能性もある。
 
 データだけでは袋小路にはまり込む可能性が高い。
 震災のデータも、実際に現地に行った体験がデータ解析の役に立った。
 今や、プログラミングやデータ解析はジャーナリズムにも必須のスキルになってきている。
 
第2章:データが誘う、桁違いの世界 
 
 109万回のナースコールを解析したところ、1番多い方は80代の男性が寂しくて押したものが一番多かった。ビッグデータの活用で病院の効率化がはかれる。
 
^_^ お爺ちゃんというものはさみしがり屋なんだなぁ。
 
 飲酒運転のビッグデータからは飲酒運転の事故は1個目のカーブも曲がれずに事故を起こしていることがわかった。つまり、短い距離でも危険なのだ。
 
^_^ 逆に言えば一個の目のカーブさえ、、、いや、何でもありません。
 
 アンケートの手法として即時に自分の全体における位置がわかるゲーム性、入力にかかった時間、時間帯などもデータとして集めることができる。
 
^_^ アンケートもずいぶん変わってきてるんだなぁ。確かにリアルタイムに自分がどの位置にいるかわかると言うのはゲーム性があって人を集める力になるだろう。どんなアンケートがいいか考えてみるのも面白いかもしれない。
 
■ワード「ヒストリカル・ビックデータ」 
歴史に関するビックデータ。例えば沖縄戦戦没者データ、広島原爆の被害データなど。
 
 2013年の震災ビックデータの時に6カ月かかった作業が「沖縄戦 全記録」では、わずか1日で完了した。技術の進歩と蓄積の力だ。
 
 著者は戦艦武蔵のデータ化を行うときに番組必要な部分だけをピックアップする事はしなかったデータを全量解析した。
 これは彼のポリシーによるもので、全てを解析することによって、切り捨てずにおいたデータから新しい知見が得られる可能性が大いにあるからだ。
 
 ランキングは2位以下に注目すると良い、震災時、2番目に売れていたものは贈答用のハムや高価な缶詰だったこれは保存がきき、今後も食べ物として食べられると言う判断だったのだろう。
 ふりかけ等もよく売れていた。
 
 情報も閾値を超えると一気に広まると言う性質がある。これをいじめ対策に使うと言う考え方もある。
 
^_^ 情報拡散をいじめ対策に使う方法とは例えば学級委員1人にいじめに対する監視を頼むより、閾値を超える人数、例えば生徒5人にいじめの対策を依頼するとクラス全体にいじめを認めない空気が広がると言う事かもしれない。これは良い方法かもしれない。
 
ページ114 ビックデータの解析には、統計学についての知識、プログラミングのスキル、分析のセンス、桁違いのデータに相対するときの視野の広さが必要です。
 
^_^ データサイエンティストというのもなかなか面白そうな職業だ。
 
第3章:社会を変えるためにAIをつくることにした 
 
ページ127 「車の普及で馬車は減ったが、はるかに多くのタクシーやバスの運転手が必要となった。バスの自動運転が実現すれば、車中でバーテンダーがカクテルを作って振る舞うのではないか」
 
^_^ これは一理ある。カクテルをベンダーマシーンから提供する事はおそらく可能だが、バーテンダーが必要なくなるとは考えにくい。自動運転が普及すると、どんな新しいビジネスが出てくるか考えてみるのも面白いかもしれない。
 
AIに関する誤解1
Deepラーニングが最強である。
AIに関する誤解2
AIと呼ばれる単一テクノロジが存在する。
 
^_^ なるほど、deepラーニングも向き不向きもあると考えられるし、ちょっと勉強すればわかるがAIそのもののテクノロジは存在していないが、テレビからの情報だけを見ていると一般人がそんな誤解をしても仕方がないなと思える。
 
ページ142「過学習」という言葉があります。学習しすぎると、そのデータセットにしか対応できない、優秀だけれども不器用なAIになってしまうのです。
 
^_^ 知らなかった。そんな人間ぽいところもあるんだね。
 
第4章:伝えきって、いのちを守る
 
■名言
突き詰めれば、どんな仕事でもそれ自体が表現だと言っても過言では無い。阿部博史 NHKディレクター
 
■名言
簡単なことを面白く、面白いことを深く、深いことを10秒で、10秒一生の記憶に、一生の記憶を1億人に 阿部博史 NHKディレクター(劇作家  井上ひさしの言葉を改編)
 
■名言
むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろく、おもしろいことをまじめに、まじめなことをゆかいに、ゆかいなことをいっそうゆかいに 井上ひさし 劇作家
 
ページ174 プレゼンのコツは、「説明しすぎないこと」
 
ページ176 もてなすと言う行為は、相手に気づかれないことが前提です。しかし、相手がもし気づいたら、その途端に価値観が変わるような力を持っています。かゆいところにまで、あらかじめ手を伸ばしておくのがおもてなしです。
 
^_^ これは名言だね。前半は名言として切り取ってもいいかもしれない。
 
『アテンション「注目」で人を動かす7つの新戦略』ベン・パー
 
アテンション―「注目」で人を動かす7つの新戦略

アテンション―「注目」で人を動かす7つの新戦略

 

■名言

情報過多時代において注目は希少資源である。ベン・パー
 
人を動かすトリガー
1.恐怖トリガー
2.記憶トリガー
3.お得トリガー
4.感動トリガー
5.脱枠組みトリガー
いつも沈着冷静なアナウンサーが絶叫して避難を呼びかける。
6.無自覚トリガー
7.じらしトリガー
ななんと、、、みたいな
8.あなたトリガー
東京都の皆さん、、、
 
つまりデータは人である。
 
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