『個人が企業を強くする: 「エクセレント・パーソン」になるための働き方』書評・目次・感想・評価

[読みやすさ 9/10] ベテラン著述家なのでやはりとても読みやすい。 
[学び 8/10] 学べる事は多いが、政治批判は余計かと、個人としてどうするかだ。 
[娯楽性 8/10] 政治批判は痛快。しかし変える手段は持たない。娯楽か。

 

 若干、頭が固くなっているところがあるが、著者の思考はまだまだ鋭い。しかし、エリートであるが故の悲しさか、自分よりも愚かで貧しい者たちに対する想像力が乏しい部分が多々ある。

 企業なら優秀な人間を選んで入社させれば彼の言うような優秀な組織が作り上げられるが、国には賢い人も、愚かな人も、働き者も、怠け者も存在し、彼らをそれなりに幸福にしなければならないのだから、無駄、意味なしとエリートの意識で切り捨てていいものではない。

 そして幸福は仕事の合間に求めるものでもない。著者の頭の中では安倍総理も、その他大勢、ほぼ99%は間違いっぱなしの愚か者に見えるのだろうが、愚か者も政治に参加することで民主主義なのだ。

 一部のエリートがすべてを握れば独裁だ。国家としては競争に勝てるかもしれないが国民にとっては地獄の窯の蓋が開く音がするだろう。

【著者・大前 研一さんの気になる著書リスト】

  

 

 

 

【『個人が企業を強くする: 「エクセレント・パーソン」になるための働き方』目次と読書メモ】

第一章 君たちはどう働くか
 
 子育てをしながら在宅勤務をしている社員のために、家事が一段落して子供が寝ている間だけスイッチをオンにしておくと仕事が入ってくると言うシステムを開発して導入した。入ってきた仕事は会社にいる時と同じようにこなししかるべきタイミングで返さなければならないのでスイッチをオンにした時間によって給料が決まる。
 
^_^ すごいなぁ、考えることはできるけれど実現しているのがすごい。まぁ、特別なテクノロジーが必要ではないだろうが実際に動いているところを見てみたい。
 
 ICT時代のネットワーク社会は、すなわち“ウィキペディア的社会"である、そこでは「I」よりも「We」の方が、必ず優れているのだ。それが「集団知と言うものであり、集団知が重層化すればするほどその組織は強くなり、実行する際にも馬力が出る。
 反対に、間違っていても口に出して言えない、私には関係ないと言う雰囲気がはびこると組織は澱む。
 
■用語
対立する要素を統合し、さらに高いレベルに飛躍させる。例)カレーを食べよう、パンを食べよう、ならばアウフヘーベンしてカレーパンを、食べよう。
 
 相手の意見に対して「私は反対だ」とか「私は正しいと思う」とか、証拠もなく結論だけを主張することを禁止する。自分の主張については必ず消耗してみなさなければならないと言うルールを作り、それに基づいてピアレビューを行う。なぜならサイバー社会では偏見や先入観だけで一方的に決めつける輩が多いから。
 
^_^ 意見+論拠+証拠リンク を書き込めるようになっている掲示板はどうだろう?
プレミアムフライデーは失敗だと思います。
なぜなら実践できている企業は少なく、さらにその中でも実施できている人は更に少ないからです。
 
どうだろ?
 
第二章「エクセレント・パーソン」の条件−これからの人材戦略と教育のあり方
 
■名言
「機械にできる事は機械に任せ、人間はより創造的な分野で活動を楽しむべきである」立石一真(オムロン創業者)
 
 政府は「働き方改革」を標榜しているが、本当にクラウドコンピューティングクラウドソーシングを駆使して、日本人の業務すなわち「働き方」を改革したら、人はほとんどいらない、と言うことになる。
 
 奨学金を変えてない卒業生が続出している責任の一端は大学にある。「本学を出れば奨学金は簡単に返済できます」と言える状況になっていないことが、そもそもおかしいのである。
 
^_^ 欧米に追いつけ追い越せの時代はとうに終わったといいつつ、昔の若者はアメリカに憧れて、そこでビジネスチャンスを掴み云々。いやいや、あなたの意見では彼らはもはやロールモデルにはならないでしょう。やはり、大前さんはもはや古い人なのだろうか?これだけ本を書きながら未だに自分の若い頃は話をするんですか。そして、彼にとっていまだに金がすべての価値基準である。だから、今の欲の薄い若者に不安を覚え、俺の頃はとか、松下幸之助はとか言っているのだろう。彼らは彼らの時代にマッチし、同時に偉大でもあった。その松下幸之助本田宗一郎を信奉している人たちが今の体たらくを作っているのだ。
 
第三章 「21世紀型ビジネス」とは何か-シェアリング&アイドル(空き)エコノミー最前線
 
 カナダは違いはあって"も"ではなく、違いがある“からこそ“強くあることを学びました。
 
 アメリカに来た人たちは、みんな一刻も早く“アメリカ人になろう“とする。社会がアメリカ人であることを要求するからだ。しかし、カナダは“カナダ人になる“必要がない。それぞれの国の人のままで構わない。だから精神的にものすごく楽で、居心地がよい。
 
 考えてみれば、世界には個人に金があっても中のない国がたくさんある。中国の金持ちは一兆円持っていても自由に使えない。ロシアはプーチン大統領自身が海外資産を凍結されている。中東の富豪も国内に自由はない。
 
 お気に入りのワインを現地で買ったら4000円、関税1000円だった。日本の有名レストランでは5万だった、10倍だ。
 
^_^ 何言ってんだろ?高級レストランで出すのと、自分で輸入するので値段違うのあたりまえでしょーよ。こういうとこは著者のお茶目なところと捉えればいいのだろうか?
 
「一物一値+輸送代」の時代
 
政府の究極の役割とは「グッドライフ・アット・ローコスト」
 
■日本でアマゾンを強くしたのは、取り次ぎと出版社、新聞社等を守ってきた「再販制度」。本をディスカウントできるアメリカではアマゾンは爪に火をともしながら私を獲得してきたが、再販制度によって本を定価でしか売れない日本では送料タダにしても儲かるため、アマゾンは最強の物流網を構築できたのである。アマゾンに“軍資金“を送り込んだのは出版業界を守るための再販制度なのだ。
 
^_^ 何とも皮肉な話ですね。出版業界は漫画村などを批判する際、作者の生活やらを訴えていますが、あれは詭弁ですよね。ならばその作者のために、本屋のために自分たちは身を切ったことがあるのかと問いたい。よい本だが数は出ないだろうから、印税を10%から20%にしたという話もないですよね。何なら価格を10%上げて印税を倍にして売ることもありませんよね。結局は売り上げが少しでも下がれば自分たちに入る金が減るからですよね。出版業界ももう少し身を削って自分たちの業界を守る意思を見せるべきでは?政府に泣きつくだけでなくて。
新しい漫画村を作ってはどうだろう?読むのは全部無料で、次の話の発表までの時間と"募金額"を決める。例えば30万として、その金額が集まったらつぎの話が公開されるのです。メルカリあたりがやったら面白いと思うんですよね。メルカリの売り上げをマンガに寄付するとか。あとは気に入ったマンガのために広告動画を観ると漫画の作者にお金が入るとか。
 
^_^ 民泊に関しては、例えばニセコと沖縄にマンションを買って、夏はニセコで涼しく、冬は沖縄で暖かく過ごしながら、民泊で貸し出せば180日制限にも引っかからずに、過ごしやすい生活ができるのではないだろうか?
 
第4章 公務員こそ「働き方改革」を!-国を貧しくさせているのは誰なのか
 
■小話
電子化が進んだエストニアでは世界中どこにいても1週間前から同行できる上、例えば午後8時に同行締め切ったとすると8時1分には結果が出る。開票作業も出口調査もいらない。
 
 ベーシックインカムと言うコンセプトは、社会を歪める。最初の10年ぐらいは貧困や不平等の是正などのメリットが出てうまくいくように見えるかもしれないが、そのうち必ず人々の労働意欲をそいで生産性が低下し、国のエネルギーは衰える。実際、海外の事例を見ると、失業保険の期間が長ければ長いほど失業期間も長くなる。
 
^_^ この人は何を言っているのだ?失業保険の期間が長ければ長いほど失業期間も長くなるのは当たり前のことでベーシックインカムとは何の関わりもないことだ。失業保険の期間が短ければ慌てて仕事を探すのは当然のことだ。
ベーシックインカムを導入することでこの国が文化的に豊かになる可能性は十分にあると思う。
どうもこの人は上からものを見て個々人の幸福というものは見えていないようだ。世の中のほとんどの人が自分より賢くも豊かでもないということがわかっていないのだろうか?賢い人の弊害だろう。誰もが自分のようになれるわけではないとは思わないのだろうか?
 
87点
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