『選択の科学』書評・目次・感想・評価

【著者・シーナ・アイエンガーさんの気になる著書リスト】

  

選択日記

選択日記

 

 

【『選択の科学』目次と読書メモ】

私が「選択」を研究テーマにした理由
 シーク教の教えに従って着るものまで決められていた私は、高校に上がる頃に失明する。が、アメリカの学校で私は「選択」こそが力であることを学ぶことになる
 
第一講 選択は本能である
 選択は生物の本能である。なぜ満ち足りた環境にもかかわらず、動物園の動物の平均寿命が短いのか。なぜ、高ストレスのはずの社長の平均寿命は長いのか
 
名言
自由とは何か?自由とは選択する権利、つまり自分のための選択肢を作り出す権利のことだ。選択の中を持たない人間は、人間とは言えず、ただの手足、道具、ものに過ぎない。(アーチボルド・マクリーシュ アメリカのピューリッツァー賞受賞詩人)ページ16
 
紹介書籍「大西洋漂流76日間」

 

大西洋漂流76日間 (ハヤカワ文庫NF)

大西洋漂流76日間 (ハヤカワ文庫NF)

 

 

紹介書籍「死のクレバスーアンデス氷壁の遭難」

 

死のクレバス―アンデス氷壁の遭難 (岩波現代文庫)

死のクレバス―アンデス氷壁の遭難 (岩波現代文庫)

 

 

 ラットを瓶の中で溺死させようとすると、すぐに諦めて溺死してしまうものから、60時間以上耐えるものまでいた。
 ラットを捕獲し逃すこと数回、瓶に入れて泳がして救い出すこと数回を行うとラッドたちはすべて60時間以上試練に耐えるようになった。
 
^_^ すごいなぁ、ネズミにすら希望を植え付けることができるのか。ネズミにすらできるのに人間を教育するのに希望を植え付けることができないなんてことがあるのだろうか?
 
 実際に状況コントロールできるかどうかよりも、コントロールできると言う認識の方が、はるかに大きな意味を持っていた ページ24
 
 人間の健康や幸福度は自分が決定権を持っているかどうかによるところが大きい。
 決定権の大きい組織のトップはストレスが高いにも関わらず長寿命なことが多く、決定権をほぼ持たない仮想の人間は肥満や不健康な生活を考慮に入れても寿命が短いことが多い。
 希望としては、実際に大きな決定権を持っているかどうかではなく、自分が決定権を持っていると認識しているかどうかにかかっている
 
 老人ホームの実験では、鉢植えを自分で選び、自分で鉢植えを世話し、自分で映画を見る日時を決められた決定権を持っているように思い込まされた老人の方が、鉢植えを与えられ、鉢植えの世話は職員が行い、決められた日に映画を見る事とされた老人より健康状態も良く満足度も高かった。
 
紹介書籍「60年代の過ぎた朝」

 

60年代の過ぎた朝 (アメリカ・コラムニスト全集―ジョーン・ディディオン集)

60年代の過ぎた朝 (アメリカ・コラムニスト全集―ジョーン・ディディオン集)

 

 

名言
隷属状態が、人間の存在全体に及ぶと考えるのは誤りである。人間の大切な部分に、隷属が及ばないのだ。確かに肉体は主人に従属し、捕らえられてはいるかもしれないが、精神は独立している。実際、精神は極めて中で奔放なため、肉体を閉じ込めている監獄でさえそれを押さえ込むことができないのだ。(小セネカ 哲学者)
 
^_^ その点に注目すると、死刑制度は適正ではないかと、考えを修正したくなる。死刑に変わり、真の無期懲役を実施したとしても、囚人の肉体が牢獄に一生閉じ込められていても、その精神は自由であり、その囚人が殺した被害者はその精神の自由すら奪われているわけであるから、罪の報いとしてはあまりにも軽過ぎると考えることもできるわけだ
 
第ニ講 集団のためか、個人のためか
 父は結婚式のその日まで、母の顔を知らなかった。親族と宗教によって決められた結婚は不幸か。宗教、国家、体制の違いで人々の選択の仕方はどう変わるか
 
紹介書籍「個人主義集団主義ー2つのレンズを通して読み解く文化」

 

個人主義と集団主義―2つのレンズを通して読み解く文化

個人主義と集団主義―2つのレンズを通して読み解く文化

 

 

名言
世の中に唯一ふさわしい自由とは、他者の自由を奪ったり、自由を得ようとする他者の努力を妨げたりせずに、自分なりの方法で自らの利益を追求する自由のことだ……人間は、他者に前だと思われる生活をすることをお互いに強制するよりも、自分にとって前だと思われる生活を互いに許し合うことで、より大きなものを得るのだ。(ジョン・スチュワート・ミル)ページ57
 
 恋愛結婚では結婚当初の愛情度が1番高いが、親族が結婚相手を決める取り決め婚では当初は幾分スコアが低いが、結婚10年では結婚当初よりも高いスコアをたたき出す。恋愛結婚は少しずつ冷めていくものだが、取り決め婚は徐々に温まって行くイメージだ。
 
^_^ これはある意味わかっていたことではあるが実際にデータとして出てくると衝撃的ではある。よく妻たちが夫の不満をネット上などに晒しているが、いつも思う事はその男お前が選んだんじゃんである。「顔で選んだんだろ、バーカ」と僕のような不細工は妬みに満ちた思いを抱くのである。しかし、恋愛と言う狂気に犯された人生経験の少ない小娘が選ぶ相手より、その娘を子供の頃から知っている親族がよく話し合って決める相手の方が、その娘にとっての良い結婚相手である可能性が高いのは当然と言えば当然である。かといって、最近の日本では結婚相手を紹介してくれる親族など、いない人がほとんどだろうから、私利私欲のないAIに頼った結婚が最も合理的なのではないかと言う考えに至るのである。まぁ結婚が、人生が合理的であればいいと言うようなものでもないが。
 
紹介書籍「自由からの逃走」

 

自由からの逃走 新版

自由からの逃走 新版

 

 

 自由には「する自由」と「からの自由」がある。資本主義には統制からの自由があり、選択の自由もあるが、実際は金がなければ何もできない。社会主義には何でも無料で提供され、する自由はあるが選択肢は統制される。
 多くの社会体制がこの間を揺れ動いている。
 
 棚の奥上のクッキーを食べても構わないと言われているが、我々はそのクッキーに手を届かない。
 
 旧共産間の人々は、コーラも、ジンジャーエールも、サイダーも、炭酸飲料とみなす。つまり選択肢は1つなのだ。
 
^_^ 我々資本主義の世界で生きている人間は、作る側の理屈でささいな差の商品を比べさせられ、新しいものを買わされ、そのために働かされ、新しいものを開発させられている。
 
^_^ どれも一緒だと考えるのはある意味合理的だ。うちの前世紀製プリウスと最新のレクサスの違いはなんだろう。どちらもアクセルを踏めば走り、ブレーキを踏めば止まる。運転手を含めて5人の乗客を載せることができ、燃費はうちのプリウスの方がおそらく良いだろう。様々なオプションが付いているので、いくつか機能的なさはあるがベーシックな部分は変わらない。最大の違いはその外に発するブランド力と、値段である。つまり価値の差の殆ど見栄である。その見栄のためにあなたは何時間余計に働かなければならなかったのだろうか?
 もちろんやりたいことをやってその結果手にしたお金であればそれは余禄と言っていい。もしそうではなく、家族との時間を犠牲にし、自分の趣味ややりたい事を諦め、苦痛に満ちた通勤をし、それを何日も繰り返して手にしたのが見えであったならそんな悲しい事は無いのではないのだろうか?あなたは見栄のためにまた貴重な今日を売り渡すのですか?
もし車に新しいもの買う価値が生じるとしたら完全な自動運転ぐらいだろう。そうしたら新しく購入を検討する。
 
第三講 「強制」された選択
 あなたは自分らしさを発揮して選んだつもりでも、実は他社の選択に大きく影響されている。その他大勢からは離れ、かといって突飛ではない選択を人は追う。
 
 9割型の人が、自分が全体的な知性と能力で見て上位10%に入ると考えていると言う。
 
 私たちが1番心地よく感じるのは、「ちょうど良い」位置につけている時、つまりその他大勢と区別されるほどには特殊でいて、定義可能な集団に属している時だ。
 
 夫婦は、片方がもう片方のことを自分より優れた存在だと評価している時、互いに対する満足度が低く親密度が薄いことを様々な研究が明らかにしている。ページ137
 
^_^ この結果には驚きだ。ある意味相手を尊敬している状態であるのに、親密度が低いとは。自分とはレベルが違うと思うとうまくいかないのかもしれない。
 
 人は自分が他の人の行動をまねていると誤解されるような行動をあえて避ける性質がある。何かを買うと決めた時は、事前にしっかりと評価し決めておき、買う間際になってみんなが買っているからこれは避けようと言う衝動を理解して回避できるよう心がけたい。
 
 自分がどのような人間であるかを静的なものとして見ないで、常に変化し続ける動的なものとして認識する必要がある。選択することで自分自身が変わっていくことを理解すべき。

第4講 選択を左右するもの
 人間は、衝動のために長期的な利益を犠牲にしてしまう。そうしないために、選択を左右する内的要因を知る必要がある。確認バイアス、フレーミング、関連性
 
紹介書籍「専門家の政治判断」
 
確認バイアス
 人は1つの選択をすると、それを裏付ける情報好み、それを集める、ときにはその情報をゆがめて受け入れる。ある研究によると政治専門家の判断は集合するとランダムより劣る数値を叩き出した。信念が固い専門家ほど大きく予測を外した。人は自分の意見を補強する情報を見つけた方が気分が良い、だからあえて都合の悪いことをし進んで引き受けなければならない
 
紹介書籍「第一感ー「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい」

 

第1感 「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい

第1感 「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい

 

 

 ただ闇雲に何かを毎日3時間ずつ、10年間続けたからといって、その分野の世界チャンピオンになれるはずもない。向上するためには、絶えず自分の行動を観察し、批判的に分析し続けなければならない。何がまずかったのか?どうすれば良くなるだろう?ページ162
 
 そもそもこのような難しい問題が起こるのは、選択肢に賛成すべき理由と反対すべき理由が、全て頭の中に入っていないからなのですよ。
……これを克服するために私はこんな方法をとっているのです。
 まず紙の真ん中に1本の線を引いて、上下2つに分け、上半分には「賛成の理由」、下半分には「反対の理由」を書き出します。
 それから2、3日かけてよく考え、それぞれの枠の下に、なぜそう考えるのかを簡単にまとめて書くのです。
 なぜ賛成なのか、反対なのか、その時々に頭に浮かんだことを書いていきます。
 こうやって全てを一覧に出来るように書き出したら、今度はそれぞれの重要度を考えるのです。
 1つの賛成理由と2つの反対理由の重要度が同じなら、3つとも消してしまう。
 この作業を続けながら、どちらにバランスが傾いているのかを調べるのです。
 ……こうすれば慌てて判断を下すことも減って、より良い判断をすることができますよ。
 この“心の慎重な代数“とも呼ぶべき方法に私は随分助けられてきました。ページ165
 
^_^ 著者はこのフランクリンのやり方をあまり評価していないが、心の整理をつける判断保留をせず前に進めると言う点でも結構使えるかもしれない。まずパソコンを買うかどうかでやってみよう。
 
第5講 選択は創られる
 ファッション業界は、色予測の専門家と契約をしている。が、専門家は予測ではなく、流行を創っているのでは?人間の選択を左右する外的要因を考える
 
紹介書籍「コカ・コーラ帝国の興亡 100年の商魂と生き残り戦略」

 

コカ・コーラ帝国の興亡―100年の商魂と生き残り戦略

コカ・コーラ帝国の興亡―100年の商魂と生き残り戦略

 

 

 メイベリンランコムの親会社は同じで値段は4倍以上違うが中身はほぼ一緒。
 会社が違ってもコカコーラとペプシの差はほとんどない。
 われわれは多数の選択肢を与えられているように見せかけて実は同じようなものを選ばされている。
 選択肢はでっち上げられているのだ。
 
^_^ そう考えると、基本的にはコストで考えるのは正しいやり方なのかもしれない。正規品もプライベートブランドも中身は同じなら、安い方を選べば確実にその差額は浮く。高級品と廉価品の差は曖昧だが節約できるお金は確実に目の前に存在する。そう考えれば、価格を選択の第一優先に選ぶのはおそらく正しい戦略だろう。もちろんあくまで第一戦略で、選択の全てにしてはいけない。どこで折り合うのかということだが、、、。
 
第6講 豊富な選択肢は必ずしも利益にならない
 私が行った実験の中で最も多く引用され、応用されている実験にジャムの実験がある。ジャムの種類が多いほど売り上げが増えると人々は考えたのだが
 
^_^ マッキンゼーが取り入れた、顧客に三択を繰り返しさせ、複雑な選択肢を単純にして選びやすくすると言うやり方はウェブサイトなどでもとても役に立つやり方だと思う。
 
紹介書籍「ロングテールー「売れない商品」を宝の山に変える新戦略」  
紹介書籍「ホワイト・ノイズ」

 

ホワイト・ノイズ

ホワイト・ノイズ

 

 

紹介書籍「予想通りに不合理」
^_^ 人が選択肢を維持するためにコストをかけてしまうことがある。それはやらなくなった趣味の道具をいつまでも大事に取っておくことに似ている。
 
 飽和という状態もあり、どんなに好きでも同じものばかり食べ続けると飽きてくる。人は1種類しか食べ物を選べない場合より、いろいろな食べ物や味の中から選んだ方が、食べる量も増え、より美味しく感じることが明らかになっている。
 
紹介書籍「実践行動経済学ー健康、富、幸福への聡明な選択」

 

実践 行動経済学

実践 行動経済学

 

 

 ツリー状の選択肢を選んでいくパターンでは選びやすい選択肢の少ない項目から始めるとスムーズに選択できる。
 
名言
発明とは、無益な組み合わせを排除して、ほんのわずかしかない言うような組み合わせだけを作ることだ。発明とは見抜くことであり、選択することなのだ。(アンリ・ポアンカレ)
 
紹介書籍「閉鎖の拒絶」
 
第7講 選択の代償
 我が子の延命措置を施すか否か。施せば、重い障害が一生残ることになる可能性が高い。その選択を自分でした場合と医師に委ねた場合との比較調査から考える。
 
紹介書籍「医師と患者の沈黙の世界
 
紹介書籍「ギフトーエロスの交易」

 

ギフト―エロスの交易

ギフト―エロスの交易

 

 

紹介書籍「自由市場の狂気」
 
おもしろグッズ
スヌーズンルーズ」
 子供の延命措置を続けるか否かの選択を自身でした親は長い間苦しみ続ける。
 情報を与えられ自身で選択するよりも、
 医師が提案しそれを了承した場合の方が親の心理的負担が少なかった。
 時に選択は人に委任した方が良い場合がある。
 選択を人に委任した方が良いパターンとしては他に給料からの自動引き落としでの貯金などがある。
 
最終講 選択と偶然と運命の三元連立方程式
岩を山頂に運び上げた途端に転げ落ちるシジフォス。神の罰とされるその寓話で、しかしシジフォスの行為に本当に意味は無いのだろうか。人生もまた…
 
 選択は、最良の状態では、主導権を取り上げようとする人々や体制に抵抗する手段となる。
 だが選択の自由が誰にでも平等に開かれていると言う建前が降りかざされる時、選択そのものは抑圧になる。
 選択は、性別や階級、人種差等から生じる不平等を無視する口実になる。
 なぜならとぼけたふりをしてこう言えるからだ。「ああ、でも彼らは自分でその道を選んだんじゃないか。そうじゃない道も選べたのに」選択が、最善の解決策を見つける手段ではなく問題をはぐらかすための口実として用いられる時、私たちは道を踏み外したことを知る。ページ323
 
 死を元いた場所への帰還と考えれば、最後の選択として受け入れやすくなるのかもしれない。ページ327