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『脳が壊れた (新潮新書)』書評・目次・感想・評価

読了まで約2時間55分 

 僥倖……。
 カイジが、藤井聡太さんが口にしたこの言葉を著者は脳梗塞で高次脳障害になってしまったことに対して言ってのけたのです。
 高次脳障害という、この周囲に分かりづらい障害を、プロのライターが、たまたま若くして患い、たまたま仕事に復帰できる程度に軽く、それでいて十分に苦しみ、たまたま言語野を失わなかったことでこの本を我々は読むことができるようになったわけで、これは確かに僥倖……と言えるかもしれません。
 著者がその状況を言語化してくれて、我々が読むことができる。この幸運を是非、多くの人に味わってもらいたいと思います。
 我々はいつも自分の脳で健常者は特に健常な脳で世界を見て、他人も同じものを見て感じていると誤解しがちです。
 しかし、同じものを見ている人は一人もいないということをこの本は思い出させてくれるとともに、さらに言えば明日の自分が今日の自分と同じように世界を見ることができるとは限らないのです。
 誰もが明日、事故や血栓などで脳障害を負わないとも限らないのですから。
 そう考えると世間は違って見えます。怒りっぽい人、レジでまごまごしている人、信号を守れない人、我々が見て思う問題のある人は我々とは違う脳で違う世界を見ているのかもしれないのです。
 そして、視野が少し広がったような気がするとともに少し優しくなれるような気がするのです。
 奇跡の本というものがあるというならばこの本のことをいうのだと思います。
 是非、できるだけ多くの人にこの僥倖……を味わってもらいたいそう思います。

【『脳が壊れた (新潮新書)』目次と読書メモ】


<<用例>>
太字 もくじの写し
要約 内容の要約(ただし恣意的です)
引用 気になった部分をメモとして引用しています(最後に引用ページを記載)
名言 気になった名言をピックアップしてメモ
小話 後で人に話したくなるような内容をメモ
^_^  一読者としての意見・感想(笑顔ですが読者の感情ではありません)

 

脳が壊れた (新潮新書)
 
まえがき
 
わかってもらえない弱者の声を取材する人が、わかってもらえない弱者になったという僥倖。
 
^_^ これを僥倖というのは不謹慎とも言えるが確かに僥倖。こうしてそれを読める我々にとっても。
 
第1章 どうやら脳がまずいことになったようだ
2015年初夏の消防団
奪われてしまう宝物
「過労死するどー」
離脱する魂
 
^_^ 脳梗塞の予兆はたくさんあったわけだが、あえて観ないようにする気持ちもわからないではない。痺れに注意だ。
 
第二章 排便紳士と全裸の義母
トイレの個室に現れた老紳士
変質者になった僕
片輪走行の脳
 
第三章 リハビリは感動の嵐だった
念動力の感覚
リハビリとはくじ引きである
やればやっただけ回復する
脳細胞は助け合う
本が読めない
 
リハビリはくじ引き。動かしたい部分につながっている紐を探り当て覚える作業。
 
第4章 リハビリ医療のポテンシャル
発達の再体験・追体験
発達障害は生まれつきなのだろうか
リハビリと高齢者の群れ
リハビリスタッフのポテンシャル
彼女たちの事情
リハビリのスキルに光を
 
^_^ 読めば読むほど自分が恵まれていると感じる。世の中には障害者としては認められていないが一般人として生きていくにはやや足りない人々がいて自分や社会に苛立ちを募らせながら生きているのだ。著者が述べる、リハビリを老人だけのものではなくそのような人々にも届けるべきではないかと言う考えには大いに賛成ではある。世においてほとんどの犯罪は割に合わない(ハイレベルな知能犯や経済犯は別、それでも本当に優秀ならば塀の内側に落ちたりはしない)まともに算盤勘定ができる人ならば犯罪を起こさないのだ。つまり世の多くの犯罪者は障害者である可能性が高い。その障害を克服するための方法リハビリが持っているならそれを生かさない手は無いだろう。病名が必要ならば医者が病名をつけてやればいい。しかしその一方でリハビリは障害を受けてから半年程度しか大きく回復しないと言う記述もあったので、多くの犯罪者たちはリハビリでは回復しないのかもしれない。悩ましい。どちらにしても、この国はもっと子供にお金を使っても良いと感じる。
 
第5章「小学生脳」の持ち主として暮らす
記者廃業か
道路が渡れない
「妻の罵声」リハビリ
妻の世界が見えてきた
小学生脳
ロボットと人間の差
「不自由なこと探し」は難しい
 
収穫物をブロック塀の上に並べる僕を、出勤してきた病院職員たちは奇異の目で見ていく。ふふふ、「大人め」、この楽しさ、この好奇心に溢れた視野、貴様らの現場の脳みそではわかるまいよ。実は、選ばれし小学生脳! ページ96
 
第六章 感情が暴走して止まらない
構音障害
目の前にデギン登場
笑いが止まらなくなる
中二病女子的症状
巨大な感情のパワー
 
第七章 本当の地獄は退院後にあった
見た目は健常者でも
大きすぎる感情は言語化できない
泣きたいだけ泣くと
恐怖のNHK集金員
 
脳梗塞による後遺症は発症からおよそ6ヶ月で症状が固定(リハビリしても回復が期待できない)と言われ、リハビリ医療に健康保険が適用されるのもこの6ヶ月まで。この間2秒前のパフォーマンスに最大限近づけるべく、リハビリの療法士の先生たちが全力でサポートしてくれる。ページ126
 
^_^ そうなの?6ヶ月以降は健康保険効かないの?驚き。
 
第八章 原因は僕自身だった
なぜ俺が
上がり続ける血圧
僕と妻の16年間
めんどくさい人は愛らしい
妻の発病
生還
「家事をしなくていい」
背負い込むと無理が生まれる
優しさの質

人の力は限定的で、1人の人間が全力をかけても救えるのはたった1人の人間でしかない ページ163 
 
「人と物に頼りなさい」
「家事は分担するものだけど、やらせるじゃなくてお願いする」
「頼んだ火事の仕上がりには絶対文句を言わないのが基本ルール」
「夫婦でお互いにゆずれないモノを出し合って、お互いにそれを許容する契約を結びなさい」
僕の性格が「以上」の域に入っていることを、はっきりと彼女が口にしてくれたことで、僕は自制を含めて今後再発予防のためにすべきことに立ち向かうことができたと思う。ページ181
 
^_^ 自分を甘やかす、愛する人を甘やかす。二人で甘ったれて暮らす。そうありたい。
 
第9章 性格と身体をかえることにした
家事の分担を決める
退院後の1日
身体の改善
元アスリートはタチが悪い
BPMランの導入
我慢しないダイエット
 
音楽のBPM継続はウェブ上に無料の計測サービスがあるので、お気に入りの曲のBPMを測って携帯音楽プレーヤーに突っ込んでおけば、ビーピーエムランニングはすぐにでも始められる。ページ200
 
^_^ ここでも走れと言われてる。走るか。チャリか?
 
第10章 生きていく上での応援団を考える
平和である
人の縁と言うネット
応援団を持つ
見栄とプライド
父への手紙
黙って行動を
 
「貧乏と貧困は違う」と言う言説。同じ低所得でも、身近な人の縁に包まれてワイワイと楽しく生きている人々は貧乏であって、クオリティーオブライフは決して低くない。そうした支えを失って孤独と混乱の中で抜け出せない苦痛を味わい続けている状態が貧困で、生きていることを諦めたくなるほどにクオリティーオブライフは低い。ページ208
 
紹介書籍「その後の不自由ー「嵐」の後を生きる人たち」
 

 

その後の不自由―「嵐」のあとを生きる人たち (シリーズ ケアをひらく)

その後の不自由―「嵐」のあとを生きる人たち (シリーズ ケアをひらく)

 

 

様々な距離感のところに自分の応援団を持とう ページ210
 
「いろいろな距離感に自分の応援団」を持つためには、様々な人との付き合いや様々な場面の中で、少しずつでもきちんとだめな自分をさらけ出していくことが重要と言う事かもしれない。困窮者のセイフティーネットとなる資産=人の縁とは、血縁が切れているかどうかといった単純なものではなく、「この人になら頼りたい」と当事者が思える応援団を作ること。しかも複数作っておくことが最も重要なことなのだろう。ページ214
 
鈴木妻から読者の皆さんへ
 
あとがき
 
僕らはもう1人では生きてはいけません。ひとりでいる事は、私に直結するリスクです。だからめんどくさくても、何を言っているのか分からなくても、そばにいて、壊れてしまった自分を許容してくれる誰かが必要なのです。ページ233