『イスラム流 幸せな生き方 世界でいちばんシンプルな暮らし』書評・目次・感想・評価

【Q1】どんな人にオススメ?

 イスラムと言えば、お祈り、紛争、テロぐらいしか思い浮かばないあなた。あんなに厳格な宗教なのになんでイスラム教徒はあんなにいるんだろうと不思議に思っているあなた。

【Q2】この本の弱みは?

 筆者が現地ではお姫様扱いされる「外国人」で「女性」で「旅人」である点。イスラム社会そのものが、筆者には好ましい面しか見せていない可能性もある。しかし、日本での報道はイスラムの問題点ばかりに焦点を当てているので、少しでもバランスをとるためにこのような本にはとても価値があると思う。

【Q3】この本の強みは?

 欧米でもない、東洋でもない、もう一つの大きな文化圏にも関わらず、我々はイスラム圏に関して何も知らない。これはとても大きな知識の欠落だと今回、思い知らされた。我々は日本人は長く欧米のやり方を学び続けてきた。そして東洋に住み、その知恵を身に宿している。ここで豊かなイスラムの知恵を学ぶことができれば様々な問題に答えを見出す事ができるかも知れない。発明、発見、諸問題の解決の多くは異文化同士の交わるところから生まれるというから。

イスラム流 幸せな生き方 世界でいちばんシンプルな暮らし

イスラム流 幸せな生き方 世界でいちばんシンプルな暮らし



【著者・常見藤代さんの気になる著書リスト】

 

女ひとり、イスラム旅 (朝日文庫)

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女ノマド、一人砂漠に生きる (集英社新書)

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エジプト アフマド 毎日がもりだくさん! (世界のともだち)

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【『イスラム流 幸せな生き方 世界でいちばんシンプルな暮らし』目次と読書メモ】

第1章 イスラムの人の頭の中 
・みんな来世を信じている 
イスラムは「生きるルール」 

 
 ムスリムは来世を強く信じているので、ジョギングしたり、節制したりして長生きしようとする人はいない。
 何せ来世は美処女はいるわ、極旨の酒は無限に飲めるわ、もう最高、しかも永遠に続く。
 今世は束の間の楽しみに過ぎない。
 イスラムに神と一般人しかいない。
 コーラン憲法と違って変更されることはない。
 警察より神が怖い。
 神は全てお見通しだから。
 コーランの下にはムハンマドの言行をまとめたバディーズがあり、それも参照し、それでもわからないことはイスラムの研究者に聞く。
 基本、神の意志。
 子供を授かるのも、試験に落ちるのも。
 努力はするけど結果は神の御意志。
 だからかイスラム圏では自殺は少ない。
 
!知らないことだらけ、でもなかなかいい宗教だと思う。ただ、何百年もアップデートしないと困ることになるのでは?いや、無理に進化せずとどまることで滅びからとおざかるということもあるか!

第2章 イスラムは厳しくない 
・宗教に苦行はない 
・禁欲とは正反対 
ラマダンはお祭り 
・聖者信仰 
 
 善行と悪行はポイント制度的になっており、善行ポイントはとても貯めやすくなっている。
 悪行は1ポイントマイナスだが善行は最大700ポイントだ。
 何せ善行を思うだけでポイントが入るのだ。
 若い頃、お祈りをサボりおねえちゃんと遊びまわったおじさんが引退後、1日7回お祈りをしてポイントを取り戻して天国に行こうとするなんてこともやってる。
 決まりに従えなくてもそれを挽回する手段は用意されており、さらに気づかずやってしまった場合はノーカウントだ。
 夫婦間のセックスはむしろ奨励されており、妻は畑なんて牧歌的表現されている。
 男ばっかり楽しまず嫁も満足させよなんてことまで書かれている。
 ラマダンはお祭りでイスラム圏に行くなら著者はこの時期を勧める
 店がやってないとか、昼間は空腹でみんながイライラしてるとか問題もあるが、あのお祭り騒ぎは体験してほしい。
 アッラーが絶対の神であるが、各地に聖者信仰もあり、多くの参拝者を集めている。
 聖者にはそれぞれ得意なことがある。
 サウジアラビアだけは厳しい連中が支配者なので聖者信仰がない。
 
!なんだこれ、ちょー面白い。イスラムの聖者信仰は日本のやおよろずの神に近いので親近感が湧く。悪行も取り戻すことができるなんて人間的で優しくて素敵。そういや仏教にも悪人正機ってなのがあるな!

第3章 弱い者へのいたわり 
・貧しい人に施しをせよ 
・女性は宝石 
・男女隔離は弱い男を守るため 
・旅人を助けよ 
 
 貧しい人に施しをする事は天国への近道なのでイスラム圏では物乞いは大切な存在。
 ぞんざいにあつかう人はいない。
 イスラムでは老人、女性、子供、旅人などは守るべき存在。
 一夫多妻制も無限にOKだったものが4人に制限された説。
 戦争で未亡人が増えたため彼女らを養うためという説がある。
 どちらも女性を守るためになる。
 またなんらかの理由で妻の義務を果たせない事になっても新たに妻をめとれるので離婚される事が少ないなど、女性にもメリットがある。
 イスラム圏では外国人女性は姫。
 女性で旅人なので色々気を使ってくれる。
 さらに外国人なので女性の場所にも、男性の多いカフェにも入れる。
 イスラム圏では仕事は午後二時ぐらいには終わるが男性は家に居場所がないのでカフェに集まる。
 男女を隔離するのは女性の魅力から男性を守るためでもある。
 美味しそうなアイスクリームがあって食べちゃダメなのと、食べちゃダメなアイスクリームは隠されているなら、隠されているなら方が良くないだろうか。
 男女を分けるため、女性の活躍の場が増えている面もある。女性教師や女性タクシードライバーなど。
 イスラム圏では学究はムスリムの義務とされていて女性の方が大学進学率が高い国も多く、多くの女性が政治家になっているし、国のトップに女性がなっている国もある。
 
目からウロコの話が満載で自分がどれだけイスラムを知らなかったかを思い知らされた。今度は男性目線のイスラム庶民の暮らしを読んでみたい!

第4章 家族のきずな 
・結婚は人生の半分 
・愛が先か? 結婚が先か? 
・結婚や契約 
・親と子のつながり 
 
 イスラムでは結婚は人生の半分程度の価値を占める大切なものだ。
 結婚はイコールセックスでもあり、新婚さんは一週間ぐらいスイートルームを借り切ってベッドの上で過ごす。
 大学などでは婚前交渉もあるが、大抵は結婚までは至らない。
 男性からしたら結婚していない僕とセックスするんだから他の男ともするに違いないと考える。
 売春婦ですらお金をもらうのにだだで夫でもない男とセックスするなんて、、、ということだ。
 結婚は契約で結納金や、離婚するときに払う慰謝料、週に何回肉を買ってくるかまで決める。
 結婚はセックス、そのまま子宝に繋がって、子供をたくさん作る。
 教育費がかかるような場合は子供の数を3人程度に抑えようとする流れもある。
 コーランでは家庭では敬うべきは母親、次が母親、その次が母親、その次がやっと父親で、母親は最も敬愛すべき存在。
 男がすることはカフェで男同士でたべるか、帰って嫁さんとセックスするか。
 
!結婚、出産、子育てという流れに乗る限りイスラム社会では女性は生きやすい部分も多いが、そこから外れた生き方を望めばやはり、難しいようだ。結婚も西洋のように選択肢が多ければ悩みが多いという部分もあるので、初めて見初めた妻と末長くセックスしまくるという価値観は比べるものがない分、余計な誘惑のない生きやすい世界なのかもしれない!
 
第5章 イスラムと日本 
・私とイスラムとの出会い 
イスラム社会から日本を見る 
 
 著者は大学3年生の時、休学してマレーシアに。そこでイスラム社会にはまってしまった。
 人は優しく親切。親切の度合いが日本とは桁違い。
 子供がウザいのでぶん殴ったら、周りの大人に謝られた。
 悪ガキなんですよ、許してあげてって。
 その後、マスコミを目指したが挫折、保険会社で待遇の良い仕事をしていたが、イスラムの暮らしを撮ると決めて退職。
 特にエジプトにはハマった。
 自殺の少ないイスラム日本人に言わせるとイスラムは危険なところかもしれないが、年間3万人も自殺者がいる日本の方がずっと平和ではない。
 戦場になっているところ以外はイスラム圏はいたって安全。
 宗教を信じないのも自由だが、死んだらどうなるのかと恐れるより、死んだら天国が待っていると信じられる方が幸せではないだろうか
 自由恋愛、就職の自由などなど、自由ではあるが選択肢の多さが時に人を不幸にすることもある。
イスラムでは交際は結婚に直結しているので彼が結婚してくれない3年に付き合った彼に捨てられたなど日本にありがちな悩みはない
 宗教の制約が人を生きやすくしている面も大いにある。
 日本には様々な娯楽が氾濫している、グルメ、パチンコ、バー、クラブなどなど、しかし、それらはすべて消費。
 イスラムの楽しみは妻とのセックス、カフェで友人との談笑、子供時に過ごす時間。人間が太古からの営みがそのまま楽しみになっている。
 
イスラム世界と日本、どちらが幸せかと考えると、この本を読んだ後では、イスラム社会に軍配をあげたくなる。僕の考えるベーシックインカム生活にも通じるものがある。消費を善とする社会からの一抜け。働かない人も生きていける互助の精神。学ぶことは多かった。今度は男性目線のイスラムの生活を読んでみようか、それともこの著者の他のイスラム本を読んでみようかと楽しみだ。日本にいながらイスラム社会の危険性を煽るばかりの本は避けてしばらくイスラムの一般の人々について学びたい!
 
100点
読了まで2時間。
 
イスラム流 幸せな生き方 世界でいちばんシンプルな暮らし

イスラム流 幸せな生き方 世界でいちばんシンプルな暮らし